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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第三章 現代知識はチート級! 決戦の場は策謀で――おっさん策士は旨み産む

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第二十三話 黄金色に輝く豆

数日後。

魔王国の荒野を拓いた大豆畑は、

いよいよ収穫の時期を迎えていた。


青空の下、風が吹くたびにカサカサと

小気味よい音を立てて大豆の株が揺れている。


畑の中央で、泥と油にまみれた作業着の袖をまくり、

耳に鉛筆を挟んだ八起が威勢よく声を張り上げた。


「よーし、みんな! 腰を入れて引っこ抜くぞ!

根っこを傷つけねえように、まっすぐ上に引き上げるんだ!」


「任せて、ボス! このくらい、朝飯前だよ!」


ガウラが、嬉しそうに尾を振りながら、太い大豆の株を両手でガシッと掴んだ。


フンッと力を込めれば、バリバリと土ごと株が引き抜かれる。

その圧倒的なパワーに、周囲の孤児たちから歓声が沸き起こった。


「ガウラ姉ちゃん、すごーい! 僕たちも負けてられないぞ、リナ!」


「うん! 早くたくさん集めて、八起さんに褒めてもらうんだから!」


孤児のリーダー格テオが声を上げ、妹のリナも泥だらけになりながら

引き抜かれた株を手際よく積み上げていく。

子供たちにとっても、この収穫は最高のイベントだった。


総出で大汗をかきながら作業した結果、

夕方前には山のような大豆の株が、城の裏手へ運び込まれた。


だが、ここからが問題だった。

収穫したばかりの大豆は、まだ余分な水分を含んでいる。


「なぁ、ルナリアさん。ちょっと頼みがあるんだけどいいか?」


「な、何ですか、おじさん。急に改まって。

私、これでも結構忙しいのですけれど……」


秘書官のルナリアが手元の書類から顔を上げ、不審そうに見つめる。


「お前さんが髪を乾かすのに使ってた、

あの水分を吹き飛ばす魔法を、この豆の山にぶっ掛けてほしいんだ」


「は、はいぃっ!? 何を言ってるの!

私が美容のために編み出した乾燥魔法を

あんな土臭い豆の山に使うなんて……!」


ルナリアは顔を真っ赤にして猛抗議した。

ビューティーケアを農作業に流用しようとする

おじさんの無神経さに、呆れたジト目を向ける。


「頼むよ。天日で干してたら何日かかるか分からねえ。

今度の『大豆計画』にはお前さんのあの魔法がどうしても必要なんだ」


「もう! おじさんは、いつもそうやって強引なんだから……! 」


真剣に頼み込まれ、まっすぐ見つめられると、

ルナリアはそれ以上拒むことができなかった。

文句を言いながらも、魔導書を掲げる。


「……仕方がないから。今回だけやってあげる!

微風の温乾燥(サーマル・ドライ)』!」


ルナリアの掌から、温かな乾燥の風が大豆の山へ吹き付けられた。

パチパチと音が響き、豆のサヤから一瞬で水分が蒸発していく。


乾燥したサヤが自然と弾け、現れた大豆たちは、

夕暮れの光を浴びて宝石のような黄金色に輝き始めた。


「おおおっ……! これは素晴らしい!

これぞまさに、大地の魔力が凝縮された黄金の結晶ですな!

八起殿、この輝きはただの作物ではありませんぞ!」


後ろで控えていた軍師ゼフェルが、超絶イケメンの顔を輝かせて分析を始める。

だが、八起には魔法の理屈など分からない。


「おお、いい色に乾いたな。ルナリアさん、サンキュー。

やっぱりお前さんの魔法は頼りになるわ」


頭を掻きながらケロリと言ってのけ、深く考えるのをあっさり諦めた。


「ふ、ふん。分かればいいのよ」


素直に褒められて、内心ニヤけそうになる顔を必死で隠すルナリア。

さて、ここからがおじさんの本番である。


八起はこの黄金の豆から「油」を効率よく抽出する方法を思案し始めた。

その時、以前ギガントのキャタピラ製作に使用した、

城の地下に眠っていた頑丈な『床板(アイアンウッド)』の存在が浮かんだ。


あの床板は、流す魔力によって吸着したり浮力を発生させたりする、

この世界の謎の超素材だった。


(そうだ、あの吸着する性質を応用すればいける。

二枚の床板の間に大豆を挟み、特定の魔力を流して強烈に引き合わせれば、

ものすごい圧力で一気に大豆が潰せるはずだ)


ひらめいた『魔改造圧搾機』の設計図が頭の中で瞬時に組み上がっていく。

だが、八起はそこで一歩、思考をとどめた。


(いや、待てよ。この機械を、俺がいない時でも、

テオやリナたち子供たちが安全に、かつ楽に動かせるようにしねえと意味がねえな)


魔力を流し続けるのは、子供たちの小さな魔力量では負担が大きい。


「なぁ、ゼフェル。ちょっと聞きたいんだが」


「はっ! 何なりとお尋ねください、八起殿!」


呼ばれたゼフェルは、嬉そうに長い耳をぴくつかせて一歩前に出た。


「この機械、子供たちでも安全にレバーを引くだけで動かせるようにしたい。

レバーを一度引けば、じわじわと吸着の魔力を流し続けられるような……

要するに、魔力をあらかじめ貯めておける便利な

『バッテリー』みたいな何か、この世界にねえかな?」


「バッ……ばってりー……?」


未知の単語に、ゼフェルは美しい眉をひそめて首を傾げた。


(ばってりー……。前後の文脈からして、魔力を内包し、

一定の規則で放出し続ける触媒(デバイス)のことですな!?

八起殿はあえて古代語を使い、私の知識を試しておられるのだ……!)


ゼフェルは持ち前の勘違い能力をフルに発揮し、ニュアンスを察した。

その瞬間、ゼフェルの美形が劇的に歪み、瞳に熱い涙がたまる。


「八起殿が……この私に、道具の相談を……!?

あああ、ついに私の古代の知略が、八起殿に認められたのですね……!

このゼフェル、感激の極みです!」


「いや、そんな大げさな話じゃねえんだけどな」


「いいえ! 八起殿の御期待、命に代えてもお応えしてみせます!

魔力を安定して蓄積できる極上の魔晶石(コア)を使い、

子供の力でも安全に稼働する最高の制御陣を、私が即座に構築いたします!」


興奮のあまり、ゼフェルは八起の手をガシッと握りしめ、顔を近づけて熱弁をふるう。


「おう、頼りにしてるわ。よろしくな」


八起が苦笑しながら肩を叩くと、

ゼフェルは至高の栄誉を授かった騎士のように身震いした。


――だが、この熱い「職人トーク」を、全く別の視点で見つめる者がいた。


まず一人、ルナリアである。

彼女は面白くなさそうに、唇を尖らせて二人を睨みつけていた。


(な、なぜ、私ではなくゼフェルに相談をするの……!

乾燥魔法だって、さっき完璧に役に立ったでしょ!

おじさんは、あんなポンコツエルフの方が頼りになるの……っ!?)


胸の奥で激しく燃え盛る嫉妬の炎。

ルナリアは無意識に、書類の束を力任せに握り潰していた。

自分ではなく男狐に役割を奪われたことが、実務担当として許せなかったのだ。


そして、もう一人。

二人の背後の影から、怪しいオーラを放ちながら凝視する者がいた。

使用人のシオリである。


シオリは、二人が手を握り合い、至近距離で見つめ合っている光景を目撃し、

その特異な思考回路を完全に暴走させていた。


(……あ、あ、あああッ……! なんという尊い光景でしょう……!

普段は無骨なおじ様、受の八起様が、

年下の超絶美形イケメン軍師のゼフェル様を『頼りにしてる』と……!

これ、完全にゼフェ八起ゼフェヤオの波動ですわ……!!)


シオリの頭の中では、すでに禁断の薄い本(スクロール)のページが

超高速でめくられていた。


(初めての共同作業、二人で紡ぐ禁断の魔導回路……!

囁く八起様の包容力に、ゼフェル様が完全に恋に落ちて頬を染めていらっしゃる……!

夜の執務室では立場が逆転するのですね!?

ゼフェル様の強引な攻めに、おじ様が最強魔力で抵抗しつつも、最後には開発されてしまう……っ!)


鼻血が出そうな興奮を必死で抑え、シオリは顔を真っ赤に染めながら、

ニマニマと怪しい笑みを浮かべて我が身を抱きしめていた。完全に妄想の宇宙へ旅立っている。


側近たちの複雑な視線に、鈍感なおじさんが気づくはずもなかった。

八起はそのまま、子供たちの方を振り返る。


「八起さん、八起さん! 僕たちもその機械でお仕事お手伝いしていいの?」


「うん! 美味しい油、いっぱい搾る!」


テオやリナたちが、自分たちも役に立てる仕事をもらえると知って、

目を輝かせながら大喜びしていた。


「おう、みんなの力必要だ。この国を立て直すための、大事な第一歩だからな。

よし、じゃあ早速、ガラクタ部屋から材料を運ぶぞ! ゼフェル、行くぞ!」


「はっ! お任せください、八起殿!」


ゼフェルがどこか艶っぽい忠誠の笑みを浮かべて従う。


おじさんの作った、みんなに優しい『魔改造圧搾機インフラ』。

それが、魔王城の未来と、一部の使用人の妄想を、さらに熱く動かし始めるのだった。

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