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【本編完結】50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第十二章 世界は因果なものよのぉ

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第百六十三話 八起は八起

俺は布団の上で上半身を起こしながら、

意識がなかった半年の空白期間に何が起きていたのか、

ゼフェルから詳しく話を聞いた。


厳重に封印していたはずの保管庫から、

『タリスマン』が消えていたらしい。


ゼフェルたちは、城内に忍び込んだ何者かが

俺を襲ったのではないかと当初は考えたそうだ。


しかし、その日から俺はおかしな行動をするようになった。


普段なら絶対に近寄らない玉座に好んで座るようになり、

ルナリアの真摯な問いかけに対しても

「好きにしろ」

と終始投げやりな態度をとった。


さらに、メルに至っては

「出来ないなら出て行け」と、

俺の口を使って冷酷に言い放ったらしい。


それを聞いたコレットが激昂し、

俺の胸ぐらを掴まんばかりの勢いで、

とても言葉にはできないような罵倒を浴びせたそうだ。


俺の中の誰かが勝手にやった事とはいえ、

仲間たちにそんな酷い態度をとっていたのかと思うと、

胸の奥が締め付けられるような沈痛な思いが込み上げてくる。


その後、異変を察知したシオリがすぐさまセシリアを連れてきて、

『柄』を使用したことで、

その異常な状態が収まったということだった。


そして『タリスマン』は俺の懐で割れていたらしい。


それから半年……。


俺の精神が暗闇を彷徨い、今に至るわけだ。


一通りの報告を終えたゼフェルは実務へと戻っていき、

入れ替わるようにして、メルが静かに部屋に入ってきた。


彼女は座敷の端にちょこんと腰をかけると、

もじもじとした様子で話し始めた。


「師匠……私、頑張った……。

ギガント……すごく、かっこよくなった!

……師匠のバケットホイール……すごい!

……回って……どんどん溝できた」


メルはこれまでに見たことがないほどの、

すごい満面の笑みを浮かべて

身振り手振りを交えながら説明してくれている。


残念ながら俺には「溝が出来た」ということしか伝わらない。


しかし、俺は手を伸ばして彼女の頭を撫でてやる。


メルは嬉しそうに、小さくはにかんだ。


「メル、それだと、

おじさんには何がどう凄かったのかさっぱり分からないわよ」


苦笑いしながら部屋に入ってきたルナリアが、

食事を運んできた。体に優しそうな、パン粥だ。


ルナリアはトレイを布団の脇に置くと、

メルの代わりに説明をしてくれた。


「メルの作った新しい機械がね、

溝を掘りながら進むギガントの後ろで、

キラキラと綺麗な輝きを振りまきながら、

溝を固めていくの、本当に綺麗だったわよ。

……まぁ、響く音は工事そのものだったけれどね」


ルナリアがそう言い終えると、

いつの間にかボックンが、

布団の横でこれでもかと胸を張ってポーズを取ってみせる。


「ありがとうな、二人とも。

メルのおかげで、ガイドウェイが完成したわけだ。

あとは、メカドラゴンを走らすだけだな」


俺の言葉に、メルは不思議そうに首を傾げた。


「んん? ……めかどらごん?」


「え? ほら、前に図面で書いた、

ドラゴンの形をした先頭車両を作ったんだろ?」


「……あれは……やめた……。

走るの……考えたら……怖かった」


「そ、そっか。じゃあ、どんな形になったんだ?」


俺が尋ねると、メルは待ってましたとばかりに、

一枚の絵を自信満々に俺の目の前へと突き出してきた。


「「……」」


俺とルナリアは、描かれたあまりにも独創的というか、

下手な絵の造形に、完全に言葉を失う。


それをすかさずボックンが、

素早く書き上げた絵に差し替えた。


「ほう、かっこいいじゃないか!

前に付いているこの盾みたいな板はなんだ?」


「魔獣……そのまま……跳ね飛ばす……」


「跳ね……うん、実用的で実にいい。

かっこいいぞ!」


俺がグッと親指を立てて突き出すと、

メルとボックンも嬉しそうに真似をして、

小さな親指を立ててみせる。


「あと、俺が怒らせちまったコレットさんは、

今でもまだ怒ったままなのか?」


俺が恐る恐る尋ねると、ルナリアは優しく微笑んで首を振った。


「それは大丈夫よ。

アンバーさんがすぐになだめてくれて、

あれは八起さん本人の意志じゃないって、

すぐに誤解は解けたから。

それよりも……。

温泉は凄い事になってるわ……」


ルナリアが急に声を潜め、視線を泳がる。


その様子に、俺は嫌な予感が脳裏を走った。


もし、あの二人の女王が暴走したのだとしたら、

恐ろしいことになってそうだ。


「まさかとは思うが……

巨大な宮殿とか建ってないよな?」


「それはない、それはないんだけど……。

なんというか、『スーパー銭湯』みたくなってる……かな……」


「……ルナリア、なんで俺から目をそらす?」


「いや、違うの! 違うのよ! そんなつもりじゃなかったの!

おじさんの世界の公衆浴場はどんなのかって聞かれて、

つい……私の記憶にあるスーパー銭湯を話しちゃったの!!」


(ああ……ダメなやつだ……)


俺は天を仰ぎ、あきらめの入ったため息を吐き出した。


「そしたらね、ガルードさんやザワールさんも混ざって、

四人で悪い顔をしながら楽しそうに話をしてたわ……」


(終わったかもしれん……。

あの兄弟と、女王たちが組んだら、

宿場町がアミューズメントパークに変貌しやがるぞ……)


「それに、コウタロウだってラーメンを出すんだって、張り切ってたわよ!

だから、私じゃない私じゃないもん!!」


キャラを変え必死に言い訳をするルナリアの姿に、

俺は苦笑いをしながら

まだ見ぬ楽園に恐怖するのであった。

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