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【本編完結】50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第十二章 世界は因果なものよのぉ

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第百六十二話 おい、お前は誰だ!?

俺はコレットたちの猛烈な要望からどうにか逃げ出し、

ほうほうの体といった様子でようやく自室に着いた。


気の張りから解放された俺は、

抗えない眠気に襲われ、まどろみの中に落ちていく。


『ふっ、はっはっはっ。いよいよ時は来たな。さあ、俺を取りに来い……』


これは夢か、それとも幻か。


俺の体はフラフラと立ち上がり、

自分の意志とは無関係にどこかへ向かっていく。


たどり着いた先には不思議な箱があった。

何か見覚えはあるが、それが何だったのかは思い出せない。


俺の手が箱を開けると、

中には妖しい光を放つ刻印の施された大きなメダルが収まっている。


それを手に取った瞬間、

俺の意識はまた、引きずり込まれるように遠のいていった。


「や……おき……八起殿、大丈夫ですか!?」


遠くから、ゼフェルが何かを叫んでいるのが聞こえる。


だが、体は俺の意識とは完全に別に動いていた。


ゼフェル、お前は一体誰と話しているんだ?


俺はここにいるぞ。


必死に声を上げようとするが、またしても意識が遠のいていく……。


ん……今度はどこだ。


ルナリア、俺と話してるのか?


一体何を話しているんだ。


俺の言葉はそっちに届かないのか?


ああ、また意識が消えかける。


今度は……メル、メルっ!


俺はこっちだ、そいつじゃない!


まて、待ってくれ!……本当にどうなっているんだ。


俺の体のはずなのに俺ではない。


体の自由がどこにもなかった。


意識だけがうっすらと、自分を自分だと自認しているだけだ。


今度はコレットか……。


何をそんなに怒っているんだ。


俺は何もしていない、何もしていないんだ……。


そして、俺の意識はまた深いまどろみへと落ちていく……。


どれくらいの時間が経ったのだろう。


視界に映るこれはなんだ、『開通式典』?


今度は俺に何を見せようとしているんだ。


メカドラゴン??


あ、あれは幹線輸送車か……。


メル、完成させたんだな……。


よくやった……。


だが、そこに立ってみんなの歓声を浴びているのは俺じゃない。


本当にお前は誰なんだ……。


俺はここにいる。


誰でもいい、頼むから気づいてくれぇ!


…………。


「ん、んんっ、こ、この天井は……?」


気がつくと、俺は自分の部屋のベッドで仰向けになっていた。


(夢か……。

今までの不気味な出来事は、すべて夢だったのか?

すごく、孤独で寂しい夢だった……)


「おじ……おじさん……大丈夫!? 私がわかる!?」


俺は一体どうしたんだ。


霞んだ焦点を凝らし、目の前を見ると、

そこには大粒の涙を流すルナリアの顔があった。


「な、何が……あった……?」


「待ってて、みんな呼んでくるから!」


ルナリアはそう叫ぶと、弾かれたように部屋を飛び出していった。


少しして、部屋の扉が勢いよく開け放たれ、

ゼフェルやシオリ、メルを筆頭にした見慣れた顔ぶれが一斉に集まってきた。


それぞれが、今にも泣き出しそうなほど心配そうな表情で俺を見つめている。


「八起殿、まずは、ご回復をお慶び申し上げます」


「ああ、ゼフェル……。一体何があったんだ?

それに、体に力が入らなくて、自由が利かないんだが」


俺の問いかけに、ゼフェルは沈痛な面持ちで静かに頷いた。


「はい、ご説明いたします。

まず、八起殿が国境の宿場町の崩落事故からこの城に帰られて、

すでに半年ほど経過しております」


「半年!? 嘘だろ、俺はついさっき帰ってきたばかりだぞ!?」


あまりの言葉に俺の脳が完全に停止する。


「八起殿は『タリスマン』を保管していた地下の区画で、

意識を失って倒れておりました。

その後、目を覚まされた八起殿は、

まるで別人のような振る舞いを始められたのです。

我々は精神汚染と断定し、

セシリアがすぐさま汚染の解除を行いました。

八起殿はそれから今まで、ずっと昏睡されていたのです」


「……あれは、夢ではなかったのか……。

他者の目で色々なものを見た。

俺の精神だけが、ずっと彷徨っていたのか……」


すべてに合点がいった。


あの不快な声、俺の体を動かしていた何者か、

そして見たこともない景色。


あれはすべて現実に起きていたことだったのだ……。


呆然とする俺の耳元で、今度は鋭い声が響いた。


「おじさん! しっかりしなさい!!

まだ、仕事は終わっていません。

おじさんが眠っている間、みんなが頑張って、

輸送幹線の敷設も、町の温泉の整備も、

ほとんど終わらせています。

でも、おじさんが居なければ開通式ができません。

早く起き上がれるようになってください!」


ルナリアの強い叱咤が部屋に響き渡る。


その瞬間、バラバラに離れていた精神と肉体が、

太い楔でガチリと繋ぎ止められるような不思議な感覚が走った。


(……指が動く!

足にも、少しずつ確かな感覚が戻ってきた!)


「みんな、心配かけてすまなかった。

そして、本当にありがとう」


俺は目頭が熱くなるのを必死にこらえながら、

言葉と、そして心からの感謝を、

最愛の仲間たちへと告げるのであった。

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