第百六十一話 ギガントは行くトコトコと
「ガルードさん、俺たちは帰りますがどうします?」
片付けを終えてガルードに声をかける。
「私はまだやることがあるので残りますよ」
「では、後の事お願いします」
商業ギルドの代表にも帰る事を伝えて、
俺とテオはギガントに乗り込んだ。
帰り道は急ぐ必要はない。
安全第一で陸路を選んだ。
ギガントの足回りはクローラーだが、
アイアンウッドの浮遊のおかげで荒れた街道をスムーズに進む。
搭乗席で揺られながらしばらく走ると、
ポケットの中の無線機から声が聞こえてきた。
『ザザッ……師匠聞こえますか……ザッ』
「おう、コウタロウか、何かあったか?」
『ザガッ……こちらは無事に終わりました……コレットさんに……代わります』
どうやらシーバルト王国での緊急会談は、
大きな問題もなく無事に終わったらしい。
『ザッ……八起殿……聞こえていますか……?』
「はい、聞こえてます」
『ガッ……話はすぐに……終わりました……いつからでも……始められますよ……
今、どちらですか?……』
「城から四時間ほどの所にいます」
『ザザッ……師匠、合流で待ってます……ザッ』
「わかった、なるべく急ぐ」
『ザッ……はい……ザッ』
話はあっさりと終わったみたいだ。
テオに「少し急ぐか」と声をかけ、
俺たちは合流地点へと急いだ。
しばらく進むと、街道の合流点に軽トラとワゴン・キャリアが停車していた。
ギガントを降りて近づくと、
長旅の疲れも見せずに二人の女王が笑顔で俺を迎えてくれた。
「おまたせしました、それにしても早かったですね。
まさか、まくし立ててきたわけじゃ……ないですよね?」
俺はコレットを見て、冗談ぽく聞いてみた。
「そんなことしませんよ。
八起殿が始めることならと二つ返事で快諾されました。
信頼されているのですね」
コレットはにこやかにそう話した。
「そう思って頂いてたのなら嬉しい限りですよ」
俺はテオに頼んでギガントを
軽トラとワゴン・キャリアの間に連結させると、
客車の中へと移動して話を続けた。
「では、辺境伯領からではなく
王都から伸ばしていいと決まったんですか?」
「ええ、シーバルト国王と直接話してきましたわ」
この行動力、わかってはいたが凄すぎる。
まさか辺境伯領を通り越して、
国の中枢まで直談判に行っていたとは夢にも思わなかった。
「はっはっはっ、王都まで行ってきたんですか? 早かったですね」
「ええ、軽トラのうしろ、爽快で気持ち良かったですよ」
(え? うしろ? 軽トラの荷台? なにやってんのこの人たち……
コウタロウご苦労様でした……)
一国の女王が揃いも揃って王都まで
剥き出しの荷台で爆走した姿を想像すると、
俺はもうただただ苦笑するしかなかった。
運転していたコウタロウには同情しか感じ得ない。
「それより随分汚れていますけど、どちらに行かれてたのですか?」
アンバーが俺の作業着の泥汚れを見て不思議そうに尋ねてきた。
「実は国境の宿場町で崩落事故があって応援に行っていたんですよ」
「それはそれは大事でしたね。被害は大きかったのですか?」
「ええ、怪我人はありましたが幸いにも無事に救出できました」
「大変だったのですね」
「おかげで怪我の功名といいますか温泉の発見もありまして、
そちらの整備も行ってきました」
「温泉!? それはもう使えるのですか?」
「いえいえ、まだ、活用できるだろう、
という段階なので時間はかかります」
「完成のあかつきには、是非、ご招待くださいませ!」
コレットもアンバーも身を乗り出して、すごい食いつき方だ。
どうやらこの世界の王族や貴族にとっても、
温泉は非常に魅力的な物らしい。
「わかりました。必ずご招待しますよ」
きっとこの凄まじい勢いに、
シーバルト国王も反論できずに陥落したに違いない。
そう確信しているうちに、窓の外に魔王城が見えてきた。
早く城に戻って、
この圧から退散したいと心の中で深く思うのだった。




