第百五十九話 対策は温泉整備?
救助活動を終え、俺たちは全員で商人ギルドに移動した。
集まった現地の関係者や宿場町の代表を前に、
俺は現場で気付いた結果を正確に報告する。
「今回の崩落事故の原因は地下から温泉の水位が
上昇した事で地盤が脆くなったからだと見てほぼ間違いない。
このまま補強だけしたのでは、
またいつか同じことが起こり得るな」
俺の言葉を聞き、宿場町の代表は力なく首を振って口を開いた。
「このまま坑道は閉鎖するしかない……」
「いいえ、坑道だけではありません。
ダンジョン自体が崩落しかねません」
俺の現実的な指摘に、部屋にいる全員が深い絶望で俯いてしまった。
街の貴重な収入源であり、
多くの冒険者や商人が行き交うダンジョンの町、
その根幹が失われるかもしれないのだ。
彼らの心中を思えば、返す言葉もない。
「しかし、手がないわけではありません。
湧き出る水を別の場所に逃がせば、
あとは補強をするだけで問題は解決します」
「水を逃がす……?」
「ええ。しかも、ただの水じゃありません。
湧き出ているのは温泉です。
宿場町までお湯を引けば、街の名物にする事も可能ですよ」
さっきまで絶望を見せていた宿場町の人々は、
一斉にパッと顔を上げ、
「それしかない」
「街の温泉、いいじゃないか」
と互いに熱く語り合い始めた。
空気が一気に前向きに変わるのが肌で伝わってくる。
「ではその方向で始めましょう。
急ぐことに越したことはありません。
宿場町から人員を集めてもらえますか?
我々の大半は城に戻らなくてはいけないので、よろしくお願いします」
魔王城の技術班やキャベッツァの職人たちには、
トラックで城へ戻ってもらい、
大規模輸送幹線計画を進めてもらうことにした。
ここで居残るのは、俺とテオ、それにギガントだ。
必要な資材は、城下から運んできた物でどうにかできるだろう。
あとは、俺の想像が正しければ……。
「テオ、ギガントのアタッチメント少し改造するぞ。
手伝ってくれ」
「はい!でも、何をするんですか?」
「今のギガントは耕すとふかふかの土になるよな?
これを逆にしたらどうなると思う?」
「あ!……で、どうなるんですか?」
「はっはっはっ……。どうなるんだろうな」
「……」
テオが本気で呆れたような顔をする。
「ま、とりあえずやってみよう」
俺は急いでトラックに乗り込もうとしていたメルの元へ走った。
「メル!帰るのちょっと待ってくれ!!」
「ん?」
「実はな――、ここを逆転させて耕したら硬くなる気がするんだ。
どう思う?」
「なる……と思う……でも……耕した所……だけ……」
「んん……いけると思ったんだけど無理かぁ……」
俺が唸っていると、メルが俺を指で突いた。
「師匠……肩……叩く棒……忘れた?」
「……ああっ!あれがあったな、サンキューメル助かった」
すっかり忘れていた『肩叩き』だと……。
俺は感謝を込めて、
彼女の頭をぐりぐりと強めに撫で回した。
メルは嫌がりもせず、されるがままに小さく何度も頷いている。
こうして温泉の引き込みと、地盤強化の完成図は完全に見えた。
「あぁ、ガルードさん!残ってくれますよね?」
「もちろんですよ。私が残らないと、
足りない資材が揃わないでしょう?」
ガルードは満面の笑顔を浮かべており、
その商人としての頼もしさが後光のように輝いて見えた。
「た、頼もしいよ、ガルードさん」
俺は苦笑いしながら、
ガルードに足りない資材を書き出し、手渡すのだった。




