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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第十章 旅ゆけば農産国に酒の香り

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第百五十二話 夢を見た……

『メル、設計図面が出来たぞ。

このアタッチメントの通りに作ってくれ』


『……やだ……カッコ悪い……こっちがいい……』


『待て待て、

先端にそんなデカイドリルを付けて何をするつもりだ!?』


『カッコイイ……』


ギュゥゥン……ゴゴゴゴゴゴ……


『ま、待て! やめろぉー……っ!』


俺はあまりの衝撃に跳ね起き、ベッドの上で激しく息を荒らげた。


「……うはっ。ゆ、夢か……。

ありえそうで変に現実味があったな……。おお、怖っ」


額ににじんだ冷や汗を拭いながら、

俺はぶるりと身震いした。


あの小生意気な弟子なら本当にやりかねない。


そう思わせるだけの説得力が夢の中のドリルにはあった。


気を取り直していつもの作業着に着替えると、

洗面所で顔を洗い、朝食を食べに行くことにした。


「さて、今日から本腰を入れて図面を書くかぁ」


俺は自室に戻り、設計机に向かって鉛筆を握り締めた。


誰もいない静かな部屋に、紙を擦る規則正しい音が響き始める。


「んん……溝掘りかぁ。バケットで地道に掘って、

排土板で脇に押すんじゃ、流石に効率が悪すぎるよな……」


俺は腕を組むと土木工事の光景を思い出して唸っていた。


四カ国を繋ぐ長大な幹線を掘るとなれば、

生半可な作業では何年かかるか分からない。


「排土板の代わりにベルトコンベアを付けて、

掘る、乗せる、外へ排出する。

この一連の工程を一つのアタッチメントで同時にこなせれば……。

いっそのこと、バケットホイールみたいな仕組みが、

魔導具の技術で再現できねぇかな……」


俺は頭の中にある巨大な重機の機構を、

ギガントの腕に収まるサイズに落とし込み、

簡単な図面を引いていった。


よし、これならいける。


描き上げた紙を手に持つと、

俺はそのまま廊下を歩いてメルの部屋へと向かった。


コンコンコン。


「入るぞぉ」


声をかけて扉を開けて中に入る。


メルはまだ作業机の前の椅子で、

船を漕ぐようにうとうとしていた。


「おはよう、メル。朝早くからすまないが、

ちょっと仕事の相談だ」


メルはトロンとした目で俺を迎えたが、

俺が手に持っている図面の存在に気が付いた瞬間、

何故か一言も発しないまま椅子を蹴って立ち上がり、

猛烈な速度で部屋を飛び出していってしまった。


「あれ、俺何か機嫌を損ねるようなことしたか……?」


残された俺は、

手持ち無沙汰なまま部屋の真ん中で立ち尽くす。


少しすると、

メルは水で顔を洗ってきたのか、

すっきりとした顔つきになって部屋へと戻ってきた。


「師匠、おはよう……。その紙……何?」


「おう、これな。

ギガントの新しい土木用アタッチメントだ。

どうにか作れないかと思ってな相談に来たんだ」


「見せる……。話……それから……」


ツナギの袖を捲り上げ、メルが机を指さす。


俺はその上に持ってきた紙を広げた。


「これだ。これはバケットホイールって言ってな。

先端の巨大な回転ホイールにいくつものバケットが付いていて、

地面を削り取りながら自動で前に進める機械なんだが、

ギガント用に作れないかと思ってな」


図面を見た瞬間、

メルの目が今まで見たことがないほどの輝きを放ち、

机にかじりついた。


「ふおおお……カッコイイ……。これ、回って、削る……。

でも、この横にある変なの……何?」


「これはベルトコンベアだ。この帯状の板が動いて、

ホイールが削り取った土砂をそのまま自動で溝の外へと運び出す。

作れそうか?」


「ん……やる……。仕組み……教える……」


メルは完全に職人の目になって図面の線を指でなぞり始めた。


俺は全体の構造から、土砂を巻き上げる仕組み、

そして可動部分まで、詳細に話し合った。


しばらく夢中で議論を交わしていたが、

メルがふと手を止め、

少し困ったように俺を見上げた。


「一人……無理……」


「ああ、もちろん一人で全部やってくれとは考えてないさ。

この簡単な図面から、きちんとした

設計図面に書き直してほしいんだ。

実際の製作は、

今うちに来ているキャベッツァの職人たちと協力して、

現場を指揮して作ってみてくれ。

……あ、でもな、ドリルは絶対に無しだからな」


俺が釘を刺すように付け足すと、

メルは不思議そうに小首を傾げた。


「……どりる……?」


「あ、いや、忘れてくれ。今朝見た夢の話だ」


メルは怪訝そうな顔をして俺を見つめたが、

それ以上は追及せず、

受け取った簡易図面を大事そうに抱えて自分の作業机へと歩いて行った。


「頼むな」


俺が信頼を込めて一言声をかけると、

メルは図面に目を落としたまま、

嬉しそうに小さく「ん」とだけ返事をした。


俺は頼もしい弟子の背中を見届けながら、

新たな大規模工事の段取りに向けて手応えを感じ、

メルの部屋を後にするのだった。

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