↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第十章 旅ゆけば農産国に酒の香り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/165

第百五十一話 よく見つけてくるな、感心するわ

コウタロウたちを送り出した日の夕刻。

ガルードとザワールが、魔王城にやってきた。


「八起殿、どのようなご要件でしたかな?

本日は、手土産に面白いものを持参しましたぞ」


「悪いなぁ、こんな時間に来てもらって。

早速だが、大事な話があるから応接室に来てもらっていいか?」


俺がそう促すと、

ガルードは少し意外そうな顔をして周囲を見回した。


「ええ。今日は大食堂ではないのですね」


「また、飯時を狙って来たのかぁ?」


「いえいえ、滅相もない。

今日は至極の手土産を持参しておりますので、

どうか大目に見てくだされ」


「ガルードさんがそこまで言うんだ、楽しみにしておくよ。

だが、その前にまずは本題を話したい」


俺は二人を連れて、静かな応接室へと入った。


卓を挟んで椅子を勧め、本題を切り出す。


「実は今回、四カ国を繋ぐ大規模輸送幹線を計画しているんだ」


「大規模輸送幹線?どのような内容ですかな?」


ガルードが興味深そうに身を乗り出す。


俺は大きな用紙をテーブルの上に広げた。


「これを見てくれ。ガイドウェイ輸送車の設計図面だ」


「ほう」


「これは……」


図面を覗き込んだ二人の動きがピタリと止まる。


「ドラゴンの頭ですか?」


「ああ……、その形状は忘れてくれ。

メルの個人的な趣味が入っているんだ」


俺は苦笑するしかなかった。


「見た目はともかくとして、

こいつは地面に案内用の溝を作って、

その中を走らせる長大な連結車両だ。


この方法なら、横へ逃げるのを壁が防いでくれるから、

余計な魔力を使わずに前への推進力に集中できる。


何十台ものメガ・トランスポーターやキャリーワゴンを連結して、

一気に走らせることが出来るんだ」


「こ、これは……輸送という概念が、根本から変わりますぞ!」


さすがは、ガルード。

一瞬でこの仕組みがもたらす革新性を理解したらしい。


「ああ。要所に物資の集積所となるターミナル駅を作り、

そこから先は従来の支線――つまり、

トランスポーターを切り離して個別輸送に切り替える。

それで各地へ配送する仕組みだ」


「八起殿、本当にそのような夢のような事が可能なのですか?」


驚きを隠せないザワールに、俺は力強く頷いてみせる。


「出来る。今その為の交渉に、コレットさんとアンバーさんが

直接シーバルト王国に出向いているところだ」


「はっはっはっ、さすがあの方々だ。行動が早すぎますな」


ザワールが呆れながら苦笑した。


「技術的な物は、今ある車両構造の改良で十分対応できる。

現に、キャベッツァ農国の職人たちもここへ来ていて、

すでに魔王国の技術を学び始めたところだ」


「そのような事にまで、すでに手が回っていましたか……」


「そこで、我々は何をすればよろしいのですかな?」


ガルードが商人の顔になって真っ直ぐに俺を見てくる。

話が早くて本当に助かる。


「この幹線のルートを考えて欲しいんだ。

頻繁に街道を行き来する商人たちなら、

ビエール、キャベッツァ、魔王国、そしてシーバルトを繋ぐ、

一番いい場所をよく知っているんじゃないかと思ってな」


「「お任せください!」」


兄弟の声が見事に重なった。

この二人、本当に現場の勘が良くて話が早い。


「頼もしいな。可能なら、

走行速度を落とさないために出来るだけ直線がいい。

高低差は少ないほうがいいんだが、

ギガントに新しく設計する作業機で溝を切らせるから、

多少の地形の無理なら融通は利く。

図面が必要ならいつでも言ってくれ」


「直線ですか……。高低差はさほどありませんが、

ルートによっては森の中に沼地があるかもしれません。

少しお時間をいただけますかな。地図職人によく確認させます」


「地図職人なんているのか?」


俺はこの異世界に来てから、

正確な地図というものを一度も見たことがない。


外政のインフラを整える上でも、

是非とも手に入れたい代物だ。


「はい、固有の魔法で方向を正確に見定める事が

出来る者がおりまして、かなり精巧な地図が用意できます。

ただ、一つ問題がありまして……

他国となると詳細な地形情報は軍事的な極秘扱いなのです」


「わかった。そのあたりの交渉は俺たちに任せてくれ、

これは四カ国貿易の共同運用になるからな。

どこか一国が情報を出し渋るような真似はさせねえよ」


俺は大まかな方針の共有を終えると、

二人を連れて賑やかな大食堂へと移動した。


そこでは、すでにキャベッツァの職人たちがビールを片手に、

魔王国の職人たちと熱い技術論議で盛り上がっていた。


俺たち三人は少し離れた席に腰を下ろすと、

先ほどガルードが口にしていた手土産に言及した。


「ところで、その面白い手土産ってのは一体何なんだ?」


「これは、以前八起殿が軽トラの中で話をされていた

『チーズ』というものだと思うのですが、いかがでしょうか?」


ガルードがテーブルの上に、

丁寧に包まれた荷を持ち込んで置いた。


たしかに、包みの隙間から漂ってくるのは、

独特の濃厚なチーズらしい発酵臭だ。


期待に胸を膨らませながら包みを開けると、

少し白っぽいが、

紛れもなくチーズだと思われるかたまりが現れた。


「匂いは完全にチーズだな」


過去によく見ていたものとはだいぶ見た目のイメージが違うが、

間違いなくこれはチーズである。


「ガルードさん、これはこの辺りでは普段は食べないものなのか?」


「はい、これは遠方の遊牧民が独自に作っているもので、

私も今回初めて手に入れた品物です。

カビが出やすいデリケートな食品ですので、

これまでは輸送に問題があったのですが、

八起殿の作られたコンテナが普及しましたのでね。

直々に買い付けに行ってまいりました」


流石はガルードだ、新しい道具の使い道を完璧に心得ている。


「シオリ、悪いが冷えたビールを3つ頼む」


「はぁぁい、ただいまぁ」


その言葉に、ザワールがハッとしたように身を乗り出してきた。


「もしや、ラガーですか!?本当に完成したのですか!」


「ああ、仕込みは大成功さ」


ザワールは、ラガーがどのようなビールなのかを、

ガルードに向かって解説し始めた。


俺は苦笑いしながらそれを手で制する。


「ザワールさん、詳しい話はあとにしましょう。

まずは、この新しいビールで乾杯しようじゃないか。

つまみは、せっかくだからこのチーズでね」


運ばれてきた、

キンキンに冷やされたビールのジョッキを全員で掲げる。


「「「乾杯!」」」


ガツンと音を立ててジョッキを合わせ、一気に口へと運んだ。


「「「んっく、んっく、ぷはぁーっ!」」」


「「おおっ!」」


商人兄弟が同時に感嘆の声を上げた。


「これがラガーですか!すっきりしてて凄まじいキレがあって、

それに何より冷えている!従来の常温のエールもいいですが、

これは全く別物の素晴らしさだ!」


「このチーズも最高に合いますよ!

塩味が少し強いですが、そのぶん濃厚で、

酸味のバランスがいい!本当によく見つけてきましたねぇ」


俺は懐かしいチーズの味わいに、ビールを煽る。


俺が心からの感心を口にすると、

ガルードはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、

胸を張ってみせた。


「八起殿、私を一体誰だと思っているんですか。

あの数々の難題を、すべて現場で見つけてきた大商人ですぞ?」


その自信に満ち溢れたドヤ顔に、

俺たちは思わず声を上げて笑い合いながら、

新しい黄金の甘露と至高のつまみを挟んで、

何度もビールを飲み交わすのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。