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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第二章 予算ゼロから始める食糧改革! 男子のロマン・ゴーレム改が農地をゆく!

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第十五話 真打ち登場

大広間に響き渡る、皿を叩く音と「旨い!」という怒号のような歓声。

十分に場が温まったのを見計らい、八起はマヨネーズの詰まった

カメを小脇に抱え、調理場から姿を現した。


作業着の袖をまくり、耳に鉛筆を挟んだその姿は、

およそ「魔王の代行」には見えない。

だが、そこから放つ威圧感は現場監督そのものだった。


「――皆さん、存分に堪能していただけたでしょうか」


八起はわざと低く、芝居がかった声で語りかけた。

顔には、今にも悪だくみを始めそうな「悪い顔」が張り付いている。


「おじさん、顔! 顔が怖いから、普通にして!」


隣に控えていたルナリアが、顔を引きつらせながら小声で注意してくる。

八起はハッと我に返ると、咳払いを一つした。


「……あ、ああ。悪い」


いつもの気の抜けたおじさんの表情に戻り、一歩前へ出た。

一人の商人が、皿に残った芋の欠片を名残惜しそうに

見つめながら声を上げた。


「……信じられん。これが本当に、あの死の植物だと言うのか?

毒抜きの魔導具でも使ったのか!?」


「魔導具なんて上等なもんは使っちゃいねぇよ。

ただの『適切な処理』だ」


八起が答えると、商人たちの間にざわめきが広がった。

彼らの腹はすでに満たされ、広間には食後の満足感が漂い始めている。


「さて……皆さん、お腹は大丈夫ですか? 苦しくなったりしてませんか?」


八起が尋ねると、商人たちは不思議そうな顔をした。

「何を今さら」という顔だ。


死の恐怖を乗り越え、至福の時を過ごした彼らにとって、

今の問いはただの心配に聞こえたのだ。


「……ここからが本題ですよぉ?」


再び表情を崩し、悪役じみた笑みを浮かべた八起。

その台詞に、ルナリアがたまらず行動を起こす。

「いい加減にしなさい!」とばかりの動きだった。


周囲にバレないよう、テーブルの下で八起の足を思い切り踏みつけた。


「ぐはっ……!? ……コホン。いや失礼。

実は、今まで食べていただいたのは、いわば『基礎工事』に過ぎません。

これからお見せするのが、我が国のインフラを根底から覆す、

真打ちの兵器……いや、調味料です」


八起は重々しくカメの蓋を開け、スプーンですくい上げた。


「ばばぁーん!!」


八起が叫ぶと同時に、どこからか劇的な効果音が聞こえた気がした。

子供たちが一斉にテーブルを回り、一人一人の皿に残った、

あるいは新たに追加された芋の上に、その淡い黄金色のソースを

ポテリと落としていく。


「な、なんだこれは……」


「ドロリとしていて、黄金色……まさか、これこそが本当の毒なのか!?」


疑念に満ちた商人たち。しかし、その香りが鼻腔をくすぐった瞬間、

彼らの本能が再び警報を鳴らした。


熟成されたワインの酸味と、高級オイルの華やかな香り。

それが混ざり合った未知の芳香に、一度は満たされたはずの胃袋が、

嘘のように鳴り始めた。


「……これ、食してもいいのか?」


老商人が震える手で、その黄金色のソースをたっぷりと

絡めた芋を口に運ぶ。

その瞬間、大広間に「静寂」という名の雷が落ちた。


「こ、これだ……! これこそが私が一生をかけて探し求めていた味だ!」


一人の商人が、皿にこびりついた黄金色のソースの一滴まで

指ですくい取りながら、絶句に近い声を上げた。


それを皮切りに、広間は一転して戦場のような熱気に包まれた。


「おい、これを譲ってもらえるのか!? 今すぐだ、言い値で買おう!」


「我が商会がすべて買い取る! 金ならいくらでも用意する、価格を言え!」


商人たちが椅子を蹴立てて立ち上がり、八起に詰め寄ろうとする。

その強欲な熱気に、給仕をしていた子供たちが一瞬怯えて身を引いた。


「――おっと、そこまでだ」


八起はカメを抱え直し、詰め寄る商人たちを制するように

片手を悠然と挙げた。


「皆さん、落ち着いてください。残念ながら、今はまだ

商談の時間じゃありませんよ。今日はあくまで『試食会』ですから」


「そんな殺生な! この味を知ってしまったら、もう他のものは喉を通らん!」


「まぁ、そう焦りなさんな。今日は思う存分、召し上がってください。

向こうの調理場には、まだまだ沢山ありますから」


「……ただし、お持ち帰りは厳禁ですよ?

現場の資材ソース(マヨネーズ)は、ここ以外への持ち出しは

一切許可してませんからね」


八起が釘を刺すと、商人たちは絶望したような、あるいは

「今のうちに食い溜めしてやる」と決意したような、

複雑な表情で再び皿に向き直った。


「ルナリアさん、ゼフェルさん。あとは予定通り、

お腹いっぱいになるまで付き合ってやってくれ。俺は一度、裏の段取りに戻る」


「……おじさん、商人たちがあんなに必死になるなんて。

これ、本当に世界が変わるわね」


ルナリアが呆れ半分、感心半分に囁く。

八起はニヤリと笑い、熱狂の渦に包まれた大広間を後にした。

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