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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第十章 旅ゆけば農産国に酒の香り

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第百四十七話 酒宴の席は無礼講

俺は大食堂の調理場に、手伝うことがないか探しに来た。

そこで驚愕の光景を目の当たりにするのだった。


「おいおい、あんたら客人だろ?

なんでこんなところにいるんだ!?」


そう、先程まで気品のある正装をしていた

コレットとアンバーが普段着に着替え、厨房内を仕切っていた。


「ああ、八起殿。 おっさんは引っ込んでな!

ここはアタシらの戦場さ。 男はビールでも飲んでおとなしく待ってな」


アンバーが木ヘラでボウルの中をかき混ぜながら怒気混じりに言い放つ。


「はいはい、おじさまぁ。

ここは任せてぇ、ゆっくりしててくださぁい」


「そうそう、シオリちゃん。よく言った!

最初は見た目に驚いちゃってごめんねぇ。

八起殿、うちにシオリちゃんくれない?」


アンバーはアラクネであるシオリをすっかり気に入ったようで、

従えながらチャキチャキと手際よく料理を盛り付けていく。


コレットは豪快に枝豆を茹で上げながら、ルナリアに指示を飛ばしていた。


「ルナリアさん、茹で加減はこんな感じでいい?」


「は、はい、コレット陛下。

熱いうちにお塩を振るのでこちらに置いてください」


本当に出る幕なさそうだと思いながら調理場の端に目をやると、

会話は聞こえないが、

黒いオーラを放つノエルにコウタロウが烈火のごとく怒られていた。


(ルナリア絡みか……懲りないやつだな……)


俺は仕方なく大食堂に移動すると、

哀愁の漂う背中をしたゼフェルが一人でジョッキを傾けていた。


「き、気がつかなかったぞ、ゼフェルどうしたんだ?」


「はい……両陛下の勢いに気圧され、仕方なく……」


「……さすがの軍師もやられたか……」


と、その時、調理場から何やら怒鳴り声が聞こえてきた。


「おいっ! あんた。

いきなり入ってきて、つまみ食いとはなにさまのつもりだい!!」


(ああ……ガウラ……やらかしたな……)


仕方なく、調理場に引取りに行くと、そこにいたのは、

怒鳴りつけられ、

縮こまって小さくなっていたのはガルム将軍だった。


(魔王軍全滅じゃねぇか!

そういえば、キャベッツァでガウラは空気を読んで逃げてたな……

ここは見なかったことにしよう……)


俺は回れ右をして苦笑いしながら、

職人たちの熱気あふれる厨房を後にした。


しばらくすると、魔王城の子供たちも食堂に集まり手伝いを始めた。

するとコレットとアンバーは、

先ほどまでの激しさが嘘のように優しいお母さんの様に接して

お手伝いをお願いしている。


(ぜんぜん雰囲気違うじゃねぇかあ!)


あまりのギャップに俺は静かにゼフェルと肩を並べ、

呆れ半分でジョッキを傾けた。


ふと見た奥の別の長テーブルでは、

トランスポーターに

積まれてやってきたキャベッツァの鍛冶職人たちと、

魔王国の職人たち、

そして案内役を終えたテオが同じ席を囲んでいた。


最初は人間の国から魔の国へ連れてこられて

ガチガチに緊張していた鍛冶職人たちだったが、

職人同士、通じ合うのは早かった。


種族も国境も関係ない、完全に現場の食堂だ。


(メルも合流してるかと思ったが、あいつは人見知りだったな。

せっかく仲良くなったコレットが来てるんだ、

顔くらい出せば……この賑やかさはダメか……)


間もなくして、厨房から次々と料理が運び込まれてきた。

大皿に山盛りにされた、揚げたての白身魚のフライ。

カリッと揚がったポテトフライ。

そして、新魔王国の原点とも言える、

甘辛いタレの香りが食欲をそそる照り焼きバーガーのセットだ。


「さあ、お待たせ! 特製ラガービールの開栓だよ!」


アンバーが威勢よく樽の栓を叩き開けると、

澄んだ黄金色の液体がジョッキへと勢いよく注がれた。

立ち上る白い泡と、

爽やかなホップの香りが大食堂の空気を一気に満たしていく。


「それじゃあ、両陛下の来訪と、

新たなるラガービールの完成を祝して――乾杯!」


俺の音頭と同時に、

全員のジョッキがガツンと音を立てて合わさった。

もちろん、職人たちのテーブルでも、

気持ちを通わせた乾杯の音が盛大に響き渡る。


冷え切ったラガービールを喉へと一気に流し込む。

喉を突き抜ける爽快なキレ。

常温発酵のエールとはやはり違う、

すっきりとした清涼感が全身に染み渡っていく。


「……ッ、美味い!

完璧だ、アンバーさん。これはいくらでも飲めるぞ」


「だろう? 低温でじっくり発酵させて寝かせると

こんなにすっきりするとは思わなかったよ」


アンバーが誇らしげに胸を張る。

コレットはすでに照り焼きバーガーを片手に、

ジョッキを半分以上空けていた。


「いやあ、この甘辛い肉のサンドと、

冷たいビールの組み合わせは最高だねぇ!

職人たちをトランスポーターに積んでまで、

ここまで来て本当に良かったよ!」


女王たちの食べっぷりと飲みっぷりに、

食堂の雰囲気は一瞬で最高の無礼講の酒宴へと変貌していく。


職人たちのテーブルでも、

冷え切ったラガービールを一口飲んだキャベッツァの鍛冶屋たちが


「なんだこのキレは!これが新しい『らがー』ってやつか!」


「この揚げ物も旨いっ!最高に合うぞ!」


タルタルソースの小皿を引ったくりあうようにして

フライを口に放り込んでいた。


(んっ?俺、いつの間にかフライ全部食ったか?)


するとテーブルの下から手が伸びてくる。

下を覗き込むと、

気配を消したガウラがテーブルの下でハムスターの様に

頬を膨らませていた。


「師匠、お待たせしました! 明太子塩蛇ーめんです!」


タイミングを見計らい、コウタロウが湯気の立つ丼を運んできた。

透き通った塩味のデカバミスープの真ん中に、

鮮やかな赤色の明太子が鎮座し、

その上からたっぷりの白髪ネギが添えられている。


コレットが興味津々で箸を伸ばし、麺と明太子を絡めて口に運んだ。

直後、彼女の目が驚愕で見開かれる。


「何だいこれは……ッ!

あっさりしたスープにもちもちの麺、

それにこのピリッとした魚の卵の辛味が絶妙に絡んで、

ビールの後に最高じゃない。

信じられないくらい箸が進むよ!

ねえ、シオリちゃん、ビールのお代わり、早く持ってきてぇ!」


「はぁぁい、ただいまですぅ」


シオリが新しいジョッキを運ぶ。

職人たちの席にもラーメンが配られ、

彼らは「大蛇の出汁だと!?」と驚きながらも、

一滴残らずスープを飲み干していた。


いつの間にか宴の輪は広がり、

大食堂はこれまでにない賑わいを見せていた。


(セシリアは警備か……申し訳ない……

後で持って行ってやるからな)


俺は隣で静かにビールを味わうゼフェルと視線を合わせ、

この賑やかな多国間開拓の未来へ向けて、

静かにジョッキを傾けるのだった。


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