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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第十章 旅ゆけば農産国に酒の香り

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第百四十三話 調子に乗っちまったかぁ……

俺は工房の作業台いっぱいに広げた図面用紙に、

メルの想像する設計を落とし込んでいく。


「大規模輸送幹線かぁ、全く考えてもいなかったぜ。

よくこんなの思いついたな?」


「姉さんが……ヒント……くれた……」


「女王様は、ただもんじゃねぇなぁ」


コレット女王は、日頃からこんなものがあったらと、

色々と考えていたんだろう。


まさか自分の何気ない一言を、

本気になって形にしようとする人間が出てくるとまでは

思っていなかったに違いない。


俺の横で、メルは作業服の袖を少し気にしながら、

目を輝かせて図面を熱心に覗き込んでくる。


「今までのは横に移動しないように

浮力板の向きを設計するの大変だったんだぞ。

でも、これはな、横に壁ができるから余計な魔力を使わずに

進行方向へ真っ直ぐ進められるんだ」


俺はガイドウェイ方式の特性を、

職人の目線から詳しく説明して聞かせた。


レールを敷くよりも格段にコストが安く、

それでいて連結した長大な車両を

安全に走らせられる。

まさにこの世界に最適な大規模輸送機関だ。


「溝はギガントに専用の掘削機を新設するとして、

問題はその後の整地をどうするかだな……」


俺はいつの間にか、興味津々のメルを置き去りにして、

職人魂を爆発させていた。


「ギガントの持つ地盤改良能力を逆転させてだな……」


完全に自分の世界に入り込み、

時間を忘れて夢中で図面に書き込みを続けていると、

どうやらそのまま朝になっていたらしい。


朝食の時間になったのを知らせるために

ルナリアが部屋のドアを開けて呼びに来た。


「おじさん、また徹夜してるの!?

もう歳なんだから、いい加減にしなさい!」


怒声が響き、

何故か俺だけが怒られてると思って周囲を見回したら、

隣にいたはずのメルはいつの間にかベッドの上で、

小さくなって寝息をたてていた。


「ああ、どうも仕事に夢中になるといけねぇなぁ、

つい時間を忘れてちまってよ」


俺は苦笑いしながら、

凝り固まった首を左右にポキポキと鳴らすと、

大食堂に向かうことにした。


朝食を食べ終わり、再び作業に戻ろうかとした時だった。


「おじさん! 人の話聞いてた!?

隣国の女王陛下が来られるのよ!

目の下に大きなクマを作って応対するつもり!?

失礼すぎるでしょ!」


ルナリアに背後から作業着の首根っこを

がっしりと掴まれると、

そのまま、引きずられるようにして

自室の布団まで連れて行かれた。


優秀な秘書官は、怒らせると豪腕を発揮するらしい。


「いい、おじさん?

今日はもう何もしないでゆっくり休んで!

昨日だって寝ないで

辺境伯領から帰ってきたんでしょ!?」


その有無を言わせぬ剣幕と、

目の前の仁王立ちの姿を見て、俺は直感した。


(これはダメだ、絶対に逃げれん……)


「わかったよ、すまん、そうさせてもらうよ」


大人しく降伏の意思を示す。


しかし、聖法国の信者との衝突や、

前魔王が残した洗脳の真実など、

色々と重い出来事があった後だけに、

ルナリアの怒声が、心地よさを感じさせていた。


そうして俺は布団に入ると、

溜まっていた疲労が一気に噴き出し、

深い眠りの中に落ちていくのだった。


だが、意識が完全に途絶えた暗闇の底で、

奇妙な感覚が俺を襲う。


『……おいおい、おっさん、いろいろとやってくれたなぁ。

お前のせいで、俺の計画がまるで狂っちまったじゃねぇか。

覚悟しておけよっ……』


不気味な黒いモヤの様な塊が、俺に話しかけてくる。


どこかで聞いた事があるような、

腹の底をじりじりと焼くような声だ。

凄まじい嫌悪感と不快感を覚えた。


『……じさん……おじさん、大丈夫!?』


遠くから自分を必死に呼びかける声が聞こえ、

俺は跳ね起きるようにして目を開けた。


焦点が定まると、そこには眉をひそめて、

心配そうな表情で俺の顔を覗き込む

ルナリアの顔があった。


「おじさん、すごくうなされてたけど大丈夫?」


「ん、ああ……。

なんか、もの凄く不快な夢を見た気がする……」


夢の衝撃のせいか、これだけ眠ったというのに

疲れが全く取れた気がしない。


「夕食の時間になったから起こしに来たら、

ベッドの上で凄く苦しそうにうなされてたから、

本当にびっくりしたわよ」


「すまん、心配させて悪いな。

やっぱりもう年か……。

今後はあまり無理をしないように気をつけるよ」


「あまりじゃないのっ、

無理は絶対にしないのっ!」


ルナリアはメガネの奥の目を鋭くして、

俺の言葉をぴしゃりと訂正した。


夢の中のあの黒いモヤが何だったのか、

具体的な姿や言葉の細部は、霧のように薄れて思い出せない。

だが、言い知れぬ不快な気配だったのは確かだ。


俺は胸騒ぎを一旦胸の奥へと押し込み、

ルナリアに心配されながら、

温かい料理が待つ大食堂の夕食へと向かうのだった。

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