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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第十章 旅ゆけば農産国に酒の香り

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第百三十一話 重要なのは今の自分

「お、おう、今日はとことん付き合ってやる」


観念した俺は、

ひとまずルナリアの真向かいにある席に座ろうとする。

だが、彼女はジョッキを叩きつけんばかりの勢いで

こちらを睨んできた。


「おじさん、なんでそんなに離れるの!」


ルナリアはすぐ隣の椅子を手のひらでドンドンと叩く。


「はぁ……」


軽くため息をつきつつ、俺は大人しく隣の席へと座り直す。

ジョッキを掴み、中身を飲もうとしたその時、

ルナリアが前のめりに顔を近づけてきた。

少し真剣な顔になり、口を開く。


「おじさん、私って何なんだろう」


「え、急に哲学的なこと言い出してどうした?」


「私も……召喚された人だったみたい……」


(うおっ、いきなり核心にきやがった……)


「突然どうした、何があったんだ?」


「辺境伯領に行く途中で、聖法国の信者に足止めされて……」


「え? 大丈夫だったのか!?」


「うん、そこで司祭って言う人が出てきて、

洗脳魔法を使ったの……」


「おいおい、大ごとじゃねぇか」


「でも、セシリアがすぐに解除してくれて

事なきを得たんだけど……」


「セシリア、大手柄だな……って、……思い出したのか!?」


「……えっ? どういうこと?」


「ああぁ……俺の話ってのも、まさにその事だ……」


「え、わけわからないんだけど」


不安そうに視線を揺らすルナリアを前に、俺は腹をくくった。


「実はな……」


俺はシオリとのやり取りを、できる限り柔らかく

言葉を選びながら話して聞かせた。

前魔王がこの城で行っていた非道な実験、

そして、彼女から切り取られた記憶と人格のすべてを。


「……じゃあ、シオリは私って事?」


「いや、同一人物ではない。

召喚された『(しおり)』さんから一部の人格を切り取って、

精霊に移植されたのが今のシオリだ。

……すまん、複雑すぎて俺も頭が混乱してきた」


「そうなんだ……もう、本当の私はいないんだ……」


ルナリアが手元のジョッキを見つめ、ぽつりと呟く。


「……」


本来いるはずの一人の人間が切り刻まれ、

精神的にいなくなってしまったという残酷な事実。

それをすぐに理解するのは無理な話だ。俺は返す言葉を失った。


「シオリと……話してみるか?」


俺は、思わず逃げてしまった。

他人が間に入って解決しようとするのが間違っていたのだ。

この世界に来てからなんだかんだ全てが上手くいっていた、

どこかでどうにか出来ると完全に思い上がっていたのだ。


「すまん……」


俺は額に手を当てて謝罪する。

ルナリアは静かに、どこか遠くを見つめていた。

だが、やがて小さく息を吐くと、

俺を安心させるように笑ってみせる。


「大丈夫よ、おじさん。記憶がないのは正解だったのかも、

本当の世界よりこっちの世界での方が長く生きてるんだもん。

魔族だからね、年取りにくいし寿命長いし……」


そこでルナリアの言葉がピタリと止まる。


(待って、シオリのアレ……。

全裸に壺で大暴走したり数ある妄想、あれが本当の私の人格……?

私の黒歴史!?嫌ぁぁぁぁぁぁ……っ!!)


脳内で恐ろしい結びつきにたどり着いたのだろう。

ルナリアは急に顔を真っ赤にして身悶えしそうになっていたが、

ブンブンと首を振って俺に向き直る。


「おじさん、気を落とさないでいいよ、

シオリときちんと話するから大丈夫!」


気丈に振舞うルナリアに、

俺はどこか救われたような気持ちになるのだった。

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