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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第十章 旅ゆけば農産国に酒の香り

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第百三十話 この世界は理不尽に満ちている

魔王城に戻ると、ゆっくりする間もなく、メルに引きずられて行く。


「早く……行く……」


(この小さい体のどこにこんな体力が……)


俺は心の中で毒づきながら、

早速、元ガラクタ部屋(元俺の部屋)、現在の工房へと連れて来られた。

作業台に置かれたドラゴンの魔核を見つめ、目を輝かせるメル。


俺は以前作った軽トラの図面を、

元俺の机の引き出しから取り出した。

メルはその図面を指さしながら、

魔法陣の術式や構造の連動について事細かく聞いてくる。


「……師匠は……やっぱり……師匠……天才……」


(はっはっはっ、ただ、地球の軽トラの機能を

こっちの魔導技術に置き換えただけだ。

俺じゃなくて地球の開発者に言ってくれ……)


内心で苦笑していると、

メルがじっと俺の作業着の袖を引いた。


「……また……師匠の……欲しい……」


「へ?」


「ここ……手を……置く……」


メルは魔力を吸い上げる水晶球のような装置を俺の前に差し出してきた。


「待て待て、軽トラの製作にあの伸縮布はいらんだろ?」


「いる……師匠の力……必要……お願い……」


(ああぁ……、これはまた断れんやつだ……)


俺は覚悟を決めた。

再びあの全身の全てを持っていかれるおぞましい感覚に襲われながら、

ギュンギュンと魔力を吸い取られるのであった。


どのようにして自分の部屋に戻ったかは、全く記憶にない。

次に目が覚めた時には、

カーテンの隙間から明るい光が差し込んでおり、

シオリが呼びに来ていた。


「おじさまぁ、おはようございますぅ。

もう、お昼ですよぉ。

ルナリア様がお戻りになられましたぁ」


俺は重い体をどうにか起こし、

シオリを見つめた。


「シオリ、俺はルナリアに、君から聞いた事実を話さないといけない。

……いいか?」


ルナリアが地球人の『栞』であり、

人格を切り刻まれたという狂気の沙汰。

それを隠したままにはしておけない。

シオリは静かに微笑み、頭を下げた。


「はい、おじさま、ご随意に」


俺はシオリと共に、ルナリアたちの出迎えに向かった。

エントランスには、旅の疲れを滲ませた三人の姿があった。


「ルナリア、ガルード、セシリア、おかえり。お疲れ様」


「ただいま、おじさん。本当に疲れたわ……」


ルナリアは心底疲弊した様子で息を吐き出す。


「ああ、今日はゆっくり休んでくれ。

セシリアもゆっくり休んでくれ、報告は明日でいいからな」


「は、はい……ありがとうございます」


セシリアはサンの背中に抱きつきながら部屋へ帰っていった。


俺は次にガルードへ視線を向けた。


「ガルードさんは少し残ってもらってもいいか?

ザワールさんに現地で会ってな、旨いエールをもらっておいたんだ」


「おや、ザワールに会いましたか。

あいつなら、きっと八起殿のお役に立つはずですよ」


「ああ、十分助けてもらった。

事前に俺のことを話しておいてくれてすまんな」


「いえいえ、私たちは商人です。当然のことですよ」


「じゃあ、労いの一杯だ。飲んでいってくれ」


「はい、ありがたくいただきます」


ガルードが顔をほころばせたその時、

隣にいたルナリアがピクリと反応した。

先ほどまでの死にそうな表情が嘘のように消え、

自分も混ぜろと言わんばかりにぐいぐいと寄ってくる。


「おじさん、今、エールって言った? 言ったよね!?」


俺はガルード、ルナリアの二人を連れて大食堂に移動し、

ビエール国の特産エールを飲みながら、

今回の外交開拓の成果を話し合うことにした。


「二人共、先に飲んでてくれ。

今回の成果の一つを、今から用意してくる」


俺は一旦席を立ち、調理場に入ると、

そこにはシオリがすでに待機をしていた。

俺がこれから餃子を焼くことを伝えると、

シオリは迷うことなく、棚から酢と醤油、

そして自家製の唐辛子油(ラー油)を用意した。


餃子が焼き上がり、取り皿と共に大食堂に戻ると、

そこには想像していなかった光景が広がっていた。

ルナリアはすでに、すっかり出来上がっていたのだ。


「おじさん、遅いっ!早く来て飲みなはい!!」


顔を真っ赤にし目の座ったルナリアを横目に、

ガルードは苦笑いをしながら静かに後ずさり、

いそいそと大食堂を出て行ってしまった。

完全に逃げられた。


「ねぇ、おじさん、聞いてるぅ?」


ルナリアが至近距離まで顔を近づけて、

呂律の回らない声で迫ってくる。

これは、タチの悪い絡み酒というやつだ。

地球でも、生贄(身代わり)無しでは

決して逃げられない恐ろしい状態異常である。


(セシリア……早く『シャット』使ってくれ……!)


俺は心の中で涙を流しながら、全力で助けを求めるのだった。

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