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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第十章 旅ゆけば農産国に酒の香り

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第百二十四話 あんた、職人だぜ!

トラウマもようやく落ち着き、

俺は地面についた手を払って立ち上がった。

仕留めた大蛇の処理は、コウタロウに任せることにして、

俺は当初の目的である、醸造装置の輸送を再開することにする。


「まずは、ザワールだな」


メルを連れ、俺はザワールの商会に向かう。

商館の応接室に入ると、

そこにはすでにコレットも来て待っていた。


「待っていましたよ、八起殿。

早くラガーとやらを飲ませてくださいな」


にこやかに、そしてこちらの背中に

冷や汗が流れるほどの重圧を放ちながら、

女王は言った。


「コレットさん、気が早いな。

まだ、醸造装置を運んで来ただけですよ。

実際に飲めるようになるまでには、

エールの倍ほど時間がかかります」


そう説明すると、コレットは「そうなのですか……」と、

少しがっかりしたようだった。


「ザワールさんが来次第、隣国へ出発しましょう」


ちょうどそこへザワールも合流し、

俺は隣に立つメルを二人に紹介する。


「この子がうちの技術者のメルです。

今回運んできた冷却装置付きの設備も、メルが製作しました」


いつもならボックンと一緒にドヤ顔をするメルだったが、

流石に知らない大人、それも一国の女王や

大商人に囲まれて緊張したのか、

俺の作業着の裾を掴んでもじもじしている。


「可愛い子だねぇ。私はコレット。

この国の女王をしているけれど、

コレット姉さんと呼んでくれればいいよ」


「私はザワール。この商会をやっています。

メル殿、今後ともよろしくお願いします」


「……よろしく……です……」


メルは小さな声でどうにか挨拶を済ませた。


段取りも整ったところで、俺たちはビエール国へ向けて出発する。

街道を走ること一時間ほどで、ビエール国の国営醸造所に到着した。


コレットがワゴン・キャリアから降りて

建物の中に入っていくと、

すぐに一人の男とアンバーを連れて戻ってきた。


「八起殿、お待ちしておりました。こちらが……」


コレットが男を紹介しようとした瞬間、

その男は俺を通り過ぎて荷台の装置に飛びついた。


「おおおっ!

これが『ラガー』とやらの醸造設備か!?

早速中に運び込んでくれ、詳しい説明が聞きたい!」


「あの人が、ビエール国王のエドワードです」


アンバーが苦笑いしながら教えてくれた。

俺はてっきり、あのパワフルなアンバーが

一人で現場を仕切っているのかと思っていたが、

まさか国王自らがエールを醸造しているとは思わなかった。


「驚きましたよ。てっきりアンバーさんが

すべて仕切っているのかと思っていました」


「あはは。私は、あの人の作るエールが

本当に美味しくてね、それで惚れ込んで嫁いだんですよ」


惚気を聞かされながらも、俺は職人同士の親近感を覚え、

すぐに醸造所の中へ設備を運び込んで設置を完了させた。


メルと用意した冷却設備に樽を固定し、

一通りの手順と温度管理の方法を書した紙を渡して

説明をする。


エドワード国王は、俺の言葉を一言も聞き漏らすまいと、

真剣な職人の目で書類にかぶりついていた。


「うむ、大体わかった。あとは、私一人で試させてくれ。

この新しい魔法陣と低温発酵の理屈、自分の手で確かめたい」


男はそう言うと、俺たちがまだ部屋にいるのも忘れて、

早速仕込みの準備を始めだした。


その気持ちは痛いほどよく分かる。

職人が新しい道具を手に入れた時の

没頭する現場の空気を察して、俺は静かに醸造所を出た。


「ごめんねぇ、八起さん。うちの人、エールの事になると

周りが見えなくなるからさ。

ラガーが上手く出来上がったら、すぐに連絡するからね!」


アンバーも嬉しそうにそう言うと、

小走りに夫のいる醸造所の中へと戻っていった。


(あの熱量は本物だ。あんた、職人だぜ)


俺は開拓の未来を担う黄金の甘露の誕生を確信しながら、

静まり返った醸造所の外で、満足げに一つ息を吐くのだった。

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