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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第九章 ファンタジー世界に馴染んだおっさん――ドラゴン骨で追放勇者とラーメン作る!弟子を取ったら部屋追い出される

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第百十四話 お、おまえ強かったんだな……

後ろに繋ぐ連結荷車がないだけで、これほど走行が楽になるものなのか。

路面抵抗の無い魔導荷車とはいえ、質量は変わらないからな。

荷台のわずかな荷物だけなら、移動も楽でいい。


そんなことを呑気に考えながら、俺は軽トラを街道で爆走させた。

ドラゴンの魔核は出力にも余裕がある。


このままいけば予定通りに魔王城へ帰れるだろう。

そう確信していた、まさにその時のことだ。


いきなり、目の前の茂みが大きく揺れる。

軽トラよりもはるかに大きい赤面の魔獣が、街道へと躍り出てきた。


「うわぁぁぁぁぁっ!?」


とっさのことに心臓が跳ね上がった。完全に衝突のコースだ。

ヤバい、これは終わったかもしれん。


俺は長年の経験で反射的にブレーキペダルを思い切り蹴飛ばす。

推力に使用している魔導板(アイアンウッド)が停止し逆推力で制動をかける。

車体が前のめりに激しく揺れた。

視界が激しくブレて、シートベルトに体が支えられる。


「おすわりっ!!」


「ふぉ??」


衝撃に備えて身を硬くした瞬間だった。

どこかで聞いたことのある大声が、すぐ近くで響き渡る。


すると、こちらへ突進してくる勢いのままの赤い巨体。

そいつが凄まじい地響きを立てて、その場に文字通り『おすわり』した。

あまりの質量に、街道に土埃が大量に舞い上がる。


「ボスゥー! あぶなかった、ゴメンー。

ワンッ! いきなり飛びついたらダメって言っただろ」


その魔獣のあとから、ガウラがバタバタと走ってくる。


「クゥゥゥン……」


(ワンかよ、怖ぇぇよ。顔真っ赤だよ)


あまりの動揺に心臓の鼓動が止まらない。

俺は運転席のドアを開け、手すりにすがりつくように外へ足を下ろした。


膝に手を突き肩を落とす、落ち着かない息を何度も吐き出した。

巨大だがモフモフワンコの顔面が真っ赤に染まった姿は恐ろしい。

心臓に悪すぎる。


「おう、ガウラ。どうしたんだこれ? 一体何があったんだ」


「あはは、驚かせてゴメン。

この先でデッカイ蛇が居てさぁ。街道を塞いでたから退治したんだ」


ガウラは狩りの成果を自慢する子供のように、ケロッと笑っている。


「お、おう。そうだったのか……。大丈夫か、怪我は無いのか?」


「ぜんぜん問題ない! じゃ、先に行くな! ボスも気をつけて来いよ」


「ワンの顔洗ってから行けよ、討伐依頼出るぞ!」


「おうっ、わかった」


そう言うと、ガウラはワンの背中に飛び乗り二人は、

すごい勢いで走り去った。


魔王城のメル宛ての指示書を託してはあるが、それにしても速い。

リミッターがかかっている軽トラでは、

どうひっくり返っても追いつけない速度だ。


ガウラたちが去った後、俺は一息ついてから再びアクセルを踏む。

しばらくして、ガウラの言うとおりに進んだ先。

そこには、言葉を失うような光景が広がっていた。


太さが軽トラの車体ほどもある、文字通りの大蛇の死骸。

それがそのまま街道の真ん中に残されている。


頭部は原型をとどめないほど無残に潰され、

その頭の付け根は、凄まじい力で噛みちぎられていた。


(あの毛玉がやったのかよ、デカイだけじゃなかったんだなぁ……)


いつも魔王城の裏庭で、激しい物理でじゃれついてくる子分たち。

その親玉としての、本物の魔獣の強さをまざまざと垣間見た気がした。

白い毛並みの奥に隠された破壊力に、少しだけ背筋が冷たくなる。


俺はこの巨体を街道に放置しておくのもなと思ったが、

すぐに首を振って見なかったことにする。


(俺じゃどうすることもできないからな、すまん)


このまま手際よく解体して荷台に積むなど、到底無理な話だ。

俺は職人として勿体なさと、少しの罪悪感を覚えながらも、

今は先を急ぐことにしてアクセルペダルを強く踏み込んだ。


軽トラを走らせながら、俺は徐々に薄暗くなっていく景色に目をやる。

まだこちらの世界に来たばかりの頃は、

この大城壁の外の事など、何も知らなかった。


ただ平和でのどかな世界なんだと思い込んでいた。

だが、現実は違っていた。


商人たちが頻繁に行き交うはずの主要な街道ですら、

大蛇のような危険な魔獣が出現するのだ。

これでは、物流の安全なんて一瞬で吹き飛んでしまう。


創設してセシリアにマスターを任せた『護衛ギルド』。

その強化は、今後の開拓において必要不可欠だと痛感させられた。


それに、今回の件でよく分かったことがある。

俺自身の守りをどうにかしないと、今後の移動に重大な支障が出る。


もし、本物の魔獣から不意打ちを食らったら。

軽トラごと木っ端微塵にされかねない。


まずは自分の『安全第一』ができてこそ、いい仕事ができるってものだ。


これからの開拓に向けた安全対策や防衛計画。

それを頭の中で真剣に組み立てているうちに、辺りはすっかり暗くなる。

そして、完全に日が暮れるのだった。

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