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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーはじめました~  作者: おっさん5963
第二章 予算ゼロから始める食糧改革! 男子のロマン・ゴーレム改が農地をゆく!

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第十一話 美の探求者(?)と黄金のソース

巨大な卵を抱えた八起と、尻尾をちぎれんばかりに

激しく振り回すガウラ。

二人は勢いそのままに、魔王城へと駆け戻った。


石造りのエントランスを抜けた所で、

山のような書類を抱えて足早に歩いていたルナリアと鉢合わせる。


「ルナリア! 油だ! 早く隠し持ってる油をよこせ!」


ガウラが土だらけの手でルナリアに詰め寄った。

その華奢な肩を掴んで、ガクガクと揺さぶる。


「な、ななな……何よ急に! 油って何のことよ!

離しなさい、この脳筋女! 書類が散らばるでしょ!」


「とぼけるな! お前の部屋に『びよう』とかいうので

溜め込んでるだろ! 鼻が利くあたしを騙せると思うなよ!

いつもその部屋から、花のいい匂いと、美味そうな油の匂いがしてるんだ!」


ルナリアの顔が、一瞬で青ざめたかと思うと、

次の瞬間に真っ赤に変色した。


彼女は八起をチラリと見てから、絶叫に近い声を上げた。


「ばっ……! あんた、おじさんに何を……!

あれは、その、仕事の疲れを癒やすための、乙女の嗜みなのよ!

誰にも言わないって約束したじゃない!!」


「そんなことよりメシだ! 油を出せ!

出さないなら力ずくで部屋に突っ込んで、全部舐めとってやるぞ!」


「や、やりなさいよ! 一歩でも入ったら、

秘書官の権限で串刺しにしてやるわ!!」


一触即発。牙を剥く狼の咆哮と、怒りに燃える般若のオーラが

城内に渦巻く。


その中心で八起は、ルナリアの目を見て、

これまでにないほど真剣な、そして温かい「仕事師」の表情を作る。


「……ルナリアさん。ちょっといいか」


「な、何よ……おじさんまで、変なこと言うつもり……?」


「いや。綺麗だよ。……いや、お世辞じゃない。

その肌も髪も、あんたが毎日欠かさず努力してる賜物なんだろ」


「現場の人間は、そういう『裏の仕事』……

人の見えない所で積み重ねる努力を、一番尊敬するんだ」


「え……っ、あ……」


あまりにも真っ直ぐな、そして「おじさん」特有の

混じりけのない賞賛。

下心のない、職人が良い仕事を褒めるようなその言葉は、

ルナリアの心を根底から揺さぶった。


彼女は毒気を抜かれたように固まった。

顔から火が出るほど赤くなったまま、視線を泳がせる。


「……そ、そんな、真っ直ぐ言われると、困るじゃない……。

……少しだけよ。本当に、少しだけなんだからね!」


彼女は小走りに自室へ戻ると、大切そうに抱えられた

小瓶を持ってきた。


八起がそれを受け取り、蓋を開けて匂いを嗅ぐ。

爽やかで芳醇な、最高級のオリーブオイルに似た気品ある香りが

鼻をくすぐった。


(……悪いことしちまったな。乙女の秘蔵品を料理に使うなんてよ)


申し訳なさが胸を掠めるが、そこは現場監督。

国を救う「食糧革命」のためだと、心を鬼にして割り切る。

あとは「乳化」を助ける酸味――酢だ。


ちょうどそこへ、新しい寝具を抱えたシオリが

のんびりと通りかかった。


「おやぁ、皆さんお揃いでぇ。おじ様、何かお探しですかぁ?」


「ああ、シオリさん。この城に『酢』はないか?

料理に酸味が欲しいんだ。城の地下とか、どこかに眠ってないか」


「お酢、ですかぁ……。そういえば、ワイン庫の隅に、

前代魔王様が手入れを忘れて酸っぱくなってしまった古いワインが、

山ほど転がっていましたよぉ」


「わたしは怖くて触っていませんが、

あれならツンとした匂いがしていましたねぇ……」


八起はニヤリと笑う。発酵しすぎたワイン――。

それはまさしく、極上のワインビネガーの元だ。


「……よし、現場キッチンへ急ぐぞ。卵、油、そして酢。

これだけ揃えば、奇跡が起こせるぜ」


「ガウラ、その卵、絶対に割るなよ。

これは宝石より価値がある仕事になる」


「わふっ! 任せとけ、ボス!

私の頬っぺたを落とす準備をしておけよ!」


おじさんの知識と、乙女の秘蔵品、そして偶然の産物が交差する。

魔王城の厨房で、歴史を変える「黄金色の魔法」の錬成が

始まろうとしていた。

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