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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第九章 ファンタジー世界に馴染んだおっさん――ドラゴン骨で追放勇者とラーメン作る!弟子を取ったら部屋追い出される

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第百六話 勇者ラーメン繁盛記

ようやくゴロツキどもによる不穏な騒ぎも落ち着く。

中央広場に、本来の静けさと活気が戻ってきた。


夜通し魔王城(まおうじょう)から荒野を走り抜けてくれたからか。

ガウラと巨大な魔獣犬のワンは、広場の隅へ移動するなり、

示し合わせたように並んで爆睡を始めている。


地響きのような大いびきをかく巨大な白い毛玉たち。

その姿を横目に、俺は作業着の袖をまくり、

エプロンの紐をグッと締め直した。


「はぁ、やっと開店できるな」


俺は、隣でスタンバイしていたコウタロウに視線を移す。

待ってましたとばかりに、彼が寸胴鍋の蓋を開けた。

一晩かけてじっくり仕込んだ、濃厚で芳醇なスープの匂い。

それが遮るもののない中央広場一帯へと一気に立ち込める。


先ほどの騒動を遠巻きに眺めていた通行人や他の露店商たち。

彼らに向けて、俺は腹の底からよく通る職人の声を張り上げた。


「お騒がせして申し訳ありませんでした! 今から開店いたします。

お腹に余裕のある方は、魔王国発祥『竜麺(リュウメン)』をぜひ、お試し下さい!」


その声と強烈な匂いに、真っ先に反応した奴らがいる。

広場の隅から、ふらふらと二つの大きな白い影が、

まるで吸い寄せられるようにこちらへと近寄ってきた。


「ぼすぅ、腹減ったぁ……」


ほぼ目を閉じたままの状態で、一番乗りの客が屋台の前にやってくる。

ガウラとワンだ。腹の虫を派手に鳴らしながら、

完全に寝ぼけた様子でカウンターの前に並び立った。


「ああ、助かったよ。もうちょっと待ってろ。

――コウタロウ、特盛二丁、大至急で頼む!」


「かしこまり!」


どこかで聞いたような、威勢のいい掛け声が響く。

沸々と沸いた湯の中に、小気味よく細麺が放り込まれた。


広場を行き交う通行人たちも、初めて見る木造りのラーメン屋台に注目する。

今まで嗅いだこともない、暴力的かつ濃厚な匂い。

それらが激しく人々の食欲を刺激しているのが見て取れた。


得体の知れない不思議な食べ物への好奇心も手伝う。

一人、また一人と屋台の前に足を止め、人が集まりだした。


「へい、お待ちっ!」


コウタロウは初めての露店営業に緊張するどころか、

むしろノリノリで対応していく。

注文を受けてから平ざるで麺を上げ、手際よく丼を仕上げる。

その一連の動きには全く無駄がない。


「ガウラ、寝るか食うかどっちかにしろ。火傷するぞ」


「くぅ……」


心配したが、この野生児に人間並みの気遣いは全くいらなかったようだ。

ハフハフッ、ゴクンッと、寝ぼけながらも最高に幸せそうな顔を見せる。

熱々の大盛りラーメンが、次々とお腹の中へかき込まれていった。


そのあまりにも豪快で美味そうな食いっぷり。

周囲で様子をうかがっていた人たちも、完全に理性を揺さぶられたらしい。


気づけば、屋台の前にはあっという間に行列が出来上がっていた。

コウタロウは魔王城の厨房での過酷な練習の甲斐もあり、

実に見事な手際で次々と新しいラーメンを作り出していく。


真っ白な湯気とともに細い麺が躍る。

透き通った極上の脂が浮いた黄金色のスープが、手際よく丼に注がれた。

その上に、ドラゴンの肉を使った特製の焼竜(チャーリュー)が美しく並べられる。


「へい、お待ちっ! 熱いので気をつけてください!」


その堂々たる仕事ぶりは、付き添いである俺が口を挟む必要もない。

安心して見ていられるレベルに達していた。

俺は忙しく手を動かすコウタロウの確かな成長を目の当たりにする。


自然と目元が緩み、温かい笑みがこぼれた。

地球にいた頃は、ごく普通の少年だったあいつ。

それが今や自分の作ったラーメン一つで、異世界の人間に勝負を挑んでいる。


「……っ」


「アツッ!」


「はふぅぅ、はふぅぅ……!」


丼を受け取った客たちも、この世界にはない細長い食べ物に苦戦する。

だが、懸命に口へと運んでいった。

ズルズルと麺をすする小気味よい音が、広場のあちこちから響き始める。


誰もがスープを最後の一滴まで残さず飲み干す。

そして、至福の表情で大きな一息をついた。


「ぷはぁ、このスープたまらんなぁ!」


「また来る、ごっそうさん!」


「こんな旨いもん食ったの初めてだわ!」


口々に絶賛の声が広場に響き渡る。

元いた地球のラーメン文化をベースにした一杯。

この異世界の特別な食材を、俺たちの確かな技術で組み替えて作ったものだ。


本当にこの世界の住民に受け入れられるか不安もあった。

だが、これほどまでに好感触な反応を見せつけられれば、

これからの世界展開への自信が膨らむばかりだ。


キャベッツァ農国での初日の露店営業は、これ以上ない最高の発進となった。

俺は空いた丼を次々と回収していく。


この地でこれから巻き起こるであろう、新しい食のインフラ改革の手応え。

それを確かに、その無骨な両手で感じ取っていた。

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