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50歳の何でも屋、セカンドライフは魔王城~今度の依頼は国再建! 異世界バーガーで追放勇者を弟子にしました~  作者: おっさん5963
第九章 ファンタジー世界に馴染んだおっさん――ドラゴン骨で追放勇者とラーメン作る!弟子を取ったら部屋追い出される

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第百五話 魔王ですが、何か?

宿の裏路地から調理場へと戻ると、俺は小さく息を吐いた。


「はぁぁぁ、めんどくせぇなぁ」


「師匠、大丈夫ですか?」


おたまを握ったままのコウタロウが、心配そうに顔を覗き込んでくる。


「ああ、さっきの奴な。きっと明日の開店にケチをつけてくるはずだ。

大体お決まりなんだよ、こういうのはな」


地球でも異世界でも、縄張りだのショバ代だのを要求してくる

ゴロツキの行動パターンは変わらない。


「騒ぎを大きくするのもなんだから、一応、応援を呼んでおくか……」


俺は作業着のポケットから無線機を取り出し、ボタンを押し込んだ。


「あぁ、こちら八起。ゼフェル、聞こえますかあ」


『――ザザッ……はいっ、ゼフェルです。八起殿……どうしましたか……』


ノイズ混じりのスピーカーから、魔王国の軍師の声が返ってくる。


「悪いなぁ、ちょっと問題があってさぁ。ガウラ、暇してねえかなぁ」


『ザッ……先ほど……食堂……に居たので……呼びます……

少しお待ちくだ……さい……』


しばらく待つと、今度はやけに元気のいい声がスピーカーを震わせた。


『ザザッピガッ……ボスッ! ガウ……ラだぞ』


「飯時に悪いな、ちょっと相談があってな」


『ザッ……食い終わ……ったから平気だ……

すぐ……行く……ザザァァァ……』


「おいっ! まだ何も言ってないぞ。ガウラ、聞いてるか。ガウラっ!!」


『ザァァァ…………』


『――ザザッ……八起殿……申し訳ありません……

止める……間も……なく……いなく……なりました……』


ゼフェルの困り果てた声が響く。


「ゼフェル、気にするな。しょうがねぇなぁあいつは。

また何かあったら連絡するわ」


『ザッ……畏まり……ました……』


通信を切ると、コウタロウが目を丸くしていた。


「師匠?」


「ガウラがこっちに向かった……」


「え? 話が見えないですけど、要件も伝えてないのにどうやって来るんですか?」


「ああ、コウタロウは知らなかったな。ガウラはな、本能で動くんだ……。

あの野生の勘を舐めちゃいけねえ。確実にここを目指して突っ走ってくるぞ」


説明するのも難儀な仕様だ。俺は頭に巻いた手拭いを外した。


「ちょっと今から、門番の詰所に事情を説明してくる」


俺は大事になる前に、キャベッツァの城門へと向かった。

夜間の詰所に入り、当直の門番に声をかける。


「こんばんは、夜分にすみません。実は……」


口頭での説明だけでは信じてもらえず、結局、身分を明かす羽目になった。

俺は緊急用にガルードから持たされていた魔王国の公式な書簡を

門番所に提出する。書類を見た門番の顔色が一瞬で変わった。


「これは、魔王国の……! 急ぎで責任者を連れてまいりますので、

しばらくお待ちください!」


慌てて奥へ走っていった門番を見送り、しばらく待たされる。


「お待たせいたしました、警備部主任のジランと申します」


現れたのは、鎧を着込んだ生真面目そうな男だった。


「わざわざすみません。大事にしたくはなかったのですが、

近いうちに、うちの身内が規格外の移動手段で

ここに突っ込んできそうなものでして。こういう事がありまして……」


かなり時間を取られたが、昼間のゴロツキの件も含めて事情を理解してもらい、

ガウラが到着した際にはスムーズに城下町へ入れてもらえるよう

段取りを取り付けた。詰所を出る頃には、夜がすっかり更けている。


翌朝、所定の中央広場で屋台の準備を始めると、

明らかに不自然な男たちが集まり出し、

遠巻きにこちらを囲み始めた。予想は大当たりだ。


いざ開店時間になると、その男たちは列に並ぶでもなく、

屋台の周囲を取り囲んで近づこうとする一般の客たちをギロリと睨みつけ、

威嚇し始めた。当然、客足は止まってしまう。


「そこの兄ちゃん達。商売にならんから、別の場所に行ってもらえないかなあ」


俺が声をかけるが、男たちは薄汚い笑みを浮かべるだけで、

人の話などまるで聞いてない。

すると、人混みを割って、昨日の男がどこからともなく歩いてきた。


「おやおや。朝食時だっていうのに、誰もいないじゃないか。

かわいそうなので、俺が一つ買ってやるよ」


見せつけるように懐から小銭を取り出す男に対し、

俺は冷静に、物静かに言い返す。


「悪いが、兄ちゃんに出せるラーメンは無い」


それを聞いた男は表情を一変させ、冷酷な目で手を挙げて合図を出した。

周囲にいた男たちが、一斉に屋台を囲むようにして距離を詰めてくる。

俺は屋台の前に腕を組んで立ちはだかった。


「師匠……」


「コウタロウ! そこにいろ」


俺は低い声でコウタロウを制止する。まだ手を出させる局面じゃねえ。

緊迫した睨み合いが続く。


「おい、囲んで威嚇すれば怖がるとでも思ったのか!?

そんなチンケな脅しで縮むほど、こっちの肝は小さくねえぞ」


俺が正面から睨み返すと、あきらかにリーダー格である昨日の男は、

思い通りにいかないことにイラついた顔を見せた。

男が襲撃の号令をかけようとした、その時である。


ドスッ、ドスッ、と、周囲の地面を激しく揺らすような重みのある

足音が響き渡った。次の瞬間、屋台を囲んでいた男たちのうち数人が、

まるでゴミ屑のように派手に跳ね飛ばされた。


「ボスッ、お待たせ!」


そこにいたのは、巨大な毛玉の『ワン』にまたがり、

満面の笑顔を浮かべるガウラだった。


「遅くねぇ、早すぎだ!」


俺が呆れ半分で言うと、ガウラはどうやら褒められたと感じたらしい。

にこやかに愛獣の背から飛び降りると、次の瞬間、

その少女の姿から周囲の空気が凍りつくほどの凄まじい殺気が放たれた。


「オマエラァ……ボスニ……ナニスルツモリダァァァァ!!」


広場全体を圧壊させるかのようなガウラの殺気に、

周囲の男たちは悲鳴を上げてその場に腰を抜かした。

そして、一番近くにいたリーダー格の男にいたっては、

あまりの恐怖に白目を剥き、泡を吹いてその場に卒倒した。


「ガウラっ、もういい! 終わりだ」


俺が声をかけると、ガウラは一瞬で殺気を収め、

何事もなかったかのように懐いてくる。

タイミングよく、事前に話を通していたジラン率いる守衛たちが

広場に駆けつけてくる。


「騒がせてすまない、ジランさん。こいつらを引き渡すよ」


腰を抜かして動けない男たちを指差し、俺はふうと首筋を拭った。

魔王国の名前を出した初日からこれだ。

内政開拓の現場は、今日も退屈させてくれそうにない。

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