↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マリッジ・コントラクト  作者: 星つむぎ
第二章:家族

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/33

第21話「ノイズ」

 例の『Noctis』の件で、契約上の関係とは言え、九条さんの態度に少し不満を感じた二日後の月曜日。

 先輩事務員である真里(まり)さんが法務局へ出かけている間、私は一人で山積みになっている書類と格闘していた。


 ──いや、すべての書類を一人で捌いているわけではないけれど。


「あ、西園寺さん、コレも頼む~」


 今、正直ちょっかいをかけてこないで欲しい。


「土屋先生。それ、先生がやらないとダメなやつですよ~」

「ええ~そんな事言わずにさぁ~。俺も今日は早く家帰って、子どもの話し聞きたいのよ~」


 適当にあしらいながら、目の前の書類を片付ける。

 そう言えば、土屋先生のお子さんたち、中学校はみんな私学を受験していたな?

 今年は……誰だっけ?


「ああ、まりなちゃんでしたっけ。今日、来年の中学受験前の大事な模試の試験結果の日?」


 そうだ、まりなちゃんだ。土屋家の女の子たちは、みんなひらがなで名前をつけられている。

 奥さんのこだわりだそうだ。

 確か、まりなちゃんは今年、小学校六年生。来年二月ごろが中学受験だったはずだ。


「そうそう。だから、報告聞く約束したんだよ~」

「そうなんですね。じゃ、頑張ってください」


 上司であり、うちの事務所の代表でもある土屋先生を適当にあしらいながら、まだ残っている目の前の書類を捌いていく。

 まったく。すぐにサボろうとするんだから。

 やろうと思えば、ササッと済ませられるのに……。

 今日の土屋先生は、事務所内だけで仕事を済ませる予定になっているからか、いつもよりだらしない。

 多分、この様子だと、自宅を出る時からこの有様だったのだろう。


 ──よく奥さんに怒られずに家を出られたものだ、と感心してしまった。


「そういえば、西園寺ちゃん」

「なんですか。書類の処理は受け付けてませんよ」

「そうじゃなくて。次の休みが、九条くんとご家族の挨拶なんだって?」

「決まった時にすぐ連絡したのに、なんで今、確認してくるんですか……」


 ちょっと苛立って、書類を処理する手が一瞬止まる。

 さっきからジャマばっかりされている。

 この人、たまにこういうことしてくるから、尊敬できるのに好きになれない……。


「いやぁ、あれだけ抵抗してたのに、あっさり九条くんと婚約まで進んで、親族顔合わせの段取りが進むんだからびっくりだわ~って。ま、結婚なんて縁とタイミングだからね~」

「……余計なお世話です」


 ──ほんっと、不愉快な人!




 ***


 そして約束の九条さんと両親の挨拶の日。

 朝から両親とともに、予約している料亭へと向かった。

 前日から久しぶりに実家に帰り、夕飯を家族と食べて泊まったからか、リラックスモードに入っていた……はずだった。

 朝から叔母が来て、やれ着物を着ろだの、やれ髪型がどうのと騒いでいったので、すっかり疲労困憊。

 もう少しだけ、ぐうたらしていたかったのに、叔母のせいで早朝から叩き起こされて、未だに眠気が強い……。


「翠、大丈夫?」


 ふらふら歩いていたからか、母から心配そうな声をかけられる。

 大丈夫だといいたいが、眠気がどうにも邪魔をする。


 料亭について、挨拶と食事会のための部屋へと案内される。

 九条さんはまだ来ていなかった。

 時間は約束の十五分前。少し、うちの家族が早く着いたようだ。




 ***




 ……遅い。

 約束していた時間から二十分が経過している。

 いつもは、九条さんが待っている側なのに……珍しい。

 何かあったのかな?

 いつもなら何かしら連絡をくれるのに、今日に限ってはスマホを見ても何の連絡もない。

 昨日の夜までは、普通に連絡をくれていたのに……。

 睡眠不足なのも影響して、不安が加速している気がする。

 どうしよう。

 九条さんがいなくて不安になるなんて……。

 落ち着かなくて、腕時計を気にしてしまう。


 ──時間は進んでいくのに、九条さんが来ない。


 不安が大きくなってきて、気持ちが不安定になってきたタイミングで、料亭の入口の方から慌ただしい足音が聞こえてくる。

 部屋のふすまが勢いよく開かれた。

 いつもは、整っているはずの九条さんが、妙に乱れた感じで部屋に入ってくる。


「遅れてすみません」


 ──顔色は少し悪かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。