奇想曲は舞台を選べない
男の姿は、ひと目で異質だった。
外套は継ぎ接ぎだらけで、色も布もばらばらだ。
赤に青、くすんだ紫に、色褪せた黄。
どれも元は違うものだったはずなのに、無理やり縫い合わされている。
それでも、不思議と崩れてはいない。
むしろ——まとまっているようにすら見える。
袖は長さが揃っておらず、片方は指先を隠し、もう片方は肘まで露出している。
足元も同じだ。
片足は軽やかな靴。
もう片方は、擦り切れたままの裸足。
動くたびに、そこから鈴の音が鳴る。
細い紐にいくつも括りつけられた、小さな金属の粒。
規則もなく、ただ揺れに合わせて鳴る。
顔には、薄く塗られた化粧。
笑っているようにも、歪んでいるようにも見える。
口元だけが強調されていて、
その弧は、貼り付いたように崩れない。
目は——
どこを見ているのか、わからない。
焦点が合っているのかすら曖昧で、
それでも、すべてを見通しているような気配だけがあった。
その姿は滑稽で、
どこか壊れていて、
けれど目を離せない。
まるで——
笑われるために在るのではなく、
笑いそのものを纏っているかのようだった。
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男の動きは、どこか定まらない。
次の瞬間に何をするのか、予測がつかない。
跳ねたかと思えば、急に止まり。
止まったかと思えば、ねじれるように体をひるがえす。
足取りは軽く、けれど規則はない。
まるで思いついたままを、そのまま形にしているような——
奇想。
気まぐれ。
それでいて、不思議と崩れない。
一つひとつの動きが、どこかで繋がっている。
鈴の音が、不規則に鳴る。
チリン、チリン、と。
拍子を外しながら、それでも途切れない。
男は笑っている。
声は出さない。
ただ、口元だけで。
くるりと回る。
跳ねる。
沈む。
また、跳ねる。
水しぶきが、足元で弾ける。
その中で、ひときわ大きく踏み鳴らす。
鈴が、強く鳴る。
——それでも、誰も立ち止まらない。
男は止まらない。
見られていようと、いまいと。
ただ、そこにあるものとして。
踊る。
踊って、踊って——
なお、踊る。
その中で——
彼女は、いつの間にか口元を弧にしていた。
小さく、けれど確かに。
音もなく、ただ形だけがやわらかくほどけていく。
布に隠された目は見えない。
それでもわかる。
あの奇妙な踊りを、まっすぐに受け取っている。
笑っているのだと。
誰も足を止めない中で、
ただ一人だけが——
その意味を、見つけているように。




