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残響の記憶  作者: 寝そべり魔丸
第一章「王都編」
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第2話旅立ちの朝

夜が明けきらないうち、零は馬蹄音と御者のどなり声で目を覚ました。


肩に鈍い痛みが走る。体を起こすと、木の板のベッドがきしむ音を立てた。窓の外は薄暗い灰色に染まり、鍛冶屋のふいごの音とパン屋の煙突から立ち昇る白い煙が同時に見える。時計台が五回鐘を鳴らした。


井戸の水で顔を洗った後、残り二枚のクリスタルコインを肌身離さずしまい、一枚で朝食を買って大半を平らげ、残りの半分のパンを布に包んで懐にしまった。


城門前にはすでに十数台の馬車が列を成していた。零は青地にワシの紋章が描かれたレイトン商隊の旗を見つけ、ドワーフの支配人が人員を点呼している。彼が近づくと、厚手の麻のマントを投げ渡された。


「着ろ。城外の風はお前には耐えられまい」


マントを羽織り、最後尾の馬車のそばにもたれかかって周囲を眺め渡す。貨車は十二台、護衛は約二十名。それぞれ腰に統一された曲刀を下げ、柄の摩耗具合はまちまちだ。隊長の御者は片方の耳が半分欠けており、しゃがれた声で隊列を指揮していた。


合図の角笛が鳴る前、石柱の裏から小さな影が駆け寄ってきた。濃い茶色の短髪に、ふわふわとした獣耳、膝には新しい泥がついている。


「生きてたのね」


リアは布袋から布の包みを取り出し、零の手に押しつけた。焼きたてのライ麦パンが三つ、ドライフルーツが混ざっており、まだ温かい。


「……お前が作ったのか」


「リアの家はパン屋だもの。数日はもつから、お腹が空いたらかじりなさい」胸を張って耳をピクピクさせた後、零をじっと見つめ、言葉を飲み込んで最後にこう呟いた。「さようなら」


角笛が三度長く鳴り響いた。


零は最後尾の馬車の荷物の間に座り込む。馬車が動き出し、城門が頭上をゆっくりと過ぎていく。彼は一瞬だけリアの方を振り返った。


城外の土道が西へと延び、両側の荒れ地が朝風で波打つ。遠くには真っ黒な森が地平線を横切っている。虫に食われた古い道標が立っているが、文字は判別できない。


「初めての旅か?」


同乗していた中年の運び屋が酒壺を取り出した。赤ら顔で、奥歯が一本抜けている。


「まあ、そうだ」


「なら覚えておけ」男は酒を一口飲んで続ける。「隊列はグレイウルフ林の南道を進む。オオカミは商隊を襲わないが、森には別のものが潜んでいる。林を抜けた先はヴィルム沼地で、毎年多くの人が泥に飲まれている。何があろうとも、隊列から離れるな」


「沼地の先は?」


「石橋町だ。ここから王都まで、宿泊できる町は三つ——石橋町、ミラ村、ゼル町。それぞれ七日ほどの道のりだ。ゼル町から王都までは一日の距離だ」


零はそれ以上問いたださず、マントに顔を埋めて仮眠をとろうとした。馬車が揺れ続けるが、彼は眠れず、何かを考え込んでいるようだった。


昼過ぎ、反対方向から進んできた商隊とすれ違った。耳の欠けた隊長が相手と言葉を交わし、風に乗って聞こえてきた単語は「南道」「三日前」「巡回隊」だ。隊列が再び進み出すと、中年の男が話しかけてきた。


「巡回隊が一週間前に南道を掃討したらしい。大型魔物はいない、運がいいぞ」


零は黙って頷くだけだった。


夕暮れ時、木々が瞬く間に鬱蒼と生い茂り、光が急速に薄れていく。御者が先頭のランプに火を点け、数人の護衛が腰の曲刀を手元に置いた。動作はいたって冷静だ。


遠くからオオカミの遠吠えが長く響いた。


「グレイウルフだ。一キロ先だ」中年の運び屋はあくびをした。


暗闇になる直前、宿場が見えてきた。二階建ての石造りで、先の尖った丸太の塀に囲まれている。櫓のランプがゆっくりと回転し、中庭には他の商隊の馬車も止まり、窓から暖かい火の光が漏れていた。


馬車から降りると、長時間座っていたせいで足がふらついた。零はすぐに宿の中へ入らず、塀の周囲を一周確認した。高さ三メートルの尖った丸太塀、二重の厚い板の扉に鉄の掛け金がかかり、南東の櫓は中庭全体を見渡せる。石の土台には古く修復された爪痕が残っていた。


「見終わったか?」中年の男が入り口にもたれて話す。「中に入って飯を食え。シチューは美味いぞ」


宿のホールは湯気が立ち込めていた。零は肉と根菜、濃い緑の葉が入ったシチューをよそい、朝の残りのパンを先に食べてから、シチューを一滴も残さず平らげた。温かい食事が体の芯から伝わり、一日中こわばった筋肉がやっと緩んだ。


食事を済ませると談笑に混ざらず、裏口から出て塀にもたれた。


空には二つの月が浮かんでいる。大きな月は鮮やかに輝き、小さな月はくすんだ色で、まるで欠けた破片のようだ。


しばらく眺めた後、ホールに戻る。ドワーフの支配人が隅で一人酒を飲んでおり、口ひげに酒滴がついている。零は向かいに座った。


「支配人、石橋町からミラ村までの区間、人員は募集していますか」


ドワーフは瞼を上げて零を見た。


「続けたいのか?」


「行けるところまで続けたいです」


「よし。石橋町で荷物を降ろした後、鉱石を積んでミラ村へ運ぶ。この区間で問題を起こさなければ、ミラ村まで雇ってやる。だがミラ村からゼル町までは荷物が少なく、募集はしない。ゼル町に着いたら、あとは自分で王都まで行け」


零は言葉を噛み砕いて理解し、頷いた。


「承知いたしました」


雑魚寝の部屋に戻ると、運び屋たちが横になっていびきをかいていた。壁際の場所に横になり、残り一枚のコインとパンの包みを腰帯の下にしまい、目を閉じた。


窓の外では櫓のランプが回り続け、光の筋が天井をゆっくりとなぞっていた。

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