13話 大会前日
————六学院対抗の魔法大会まで………あと二日
「ん、マスター出来た。」
「「「早っ!!」」」
「まぁ、内田の才能だな。」
「———グッ!」
俺は手をグッドの形にして皆に向ける。
「ところで、その力をマスターして何か出来るようになったこととかないのか?」
「ありますよ。例えば………————がぁぁぁぁぁぁ!!」
「「「「!!!!な、何だ⁉︎」」」」
「これは“龍の咆哮”です。ちょっとした攻撃を吹き飛ばす事が出来るみたいです。」
「す、すげぇな。」
「あとは………学院長竜出してください。」
「あぁ。」
「ありがとうございます。では、————ギロッ!」
「「「「「————ゾクッ!」」」」」
竜を含めてこの場にいる俺以外の皆が寒気を感じた。
「“龍の威圧”。それから………一刀流“龍牙”!」
————ザンッ!ドガァァァァァン!
「これで3割っす。」
「「「「は?」」」」
「今ので三割?」
「おう。“龍の威圧”は正直、特性みたいなもんだな。“龍牙”は“黒龍一閃”を越える強さだし。」
「優勝決定だな………これ。」
「確かに内田は強いが他の奴らも内田並みに強いぞ。」
「まぁ、問題ないっすよ。」
「とは言ってもだな、お前が決勝まで行けたとしても確実に当たるのが月光院だろう。あいつの強さは異常らしいぞ。」
「そうよ。私の何倍も強いのよ。あの男は。」
「そうなのか?武器は?」
「彼の武器は不明。」
「不明?どう言うことだ?」
「彼が武器を使ったとこを見たことがないのよ。」
武器を使ったとこを見たことがない?素手ってことか?でも、違う気がする。
「そいつって元々武器を持ってないって事はないよな?」
「それはないわ。彼は私に武器は持っているが使った事はない。使う必要がないって言ったのよ。」
随分、自信があるらしいな。潰しがいがありそうだ。
「あと、魔法が私より凄いの。」
「どんくらい?」
「わからない。けど、これだけは言えるわ。貴方は彼に勝てない!」
「勝てない?何故だ?」
「神の魔法よ。」
「神の………魔法?」
「神の魔法は天照院で言う、“天照”みたいなやつだ。月光院は確か………“月読命”だな?天照院。」
「はい、そうです。ですが、その魔法は誰一人見たことがないのです。」
「誰も見たことが無い………か。」
「???貴方、何か企んでいるの?」
月光院って奴の魔法と武器が気になる。俺は心の中でそう考えていた。天照院に答えるように俺は宣言をする。
「奴の武器と、“月読命”………。俺が見せてやる!」
「む、無茶よ!潔く負けなさい!」
「いや、そうはいかないぜ。」
「?どう言うこと、グレイス君。」
「あいつの目的、忘れたか?」
「あ!そうだね!確かに、勝たなきゃ駄目だよね!」
「な、何よ!教えなさいよ!」
忘れちまったのかよ。俺の目的。
「はぁ、お前、この修行やっている意味、忘れたか?」
「………あ!それなら確かに勝たなきゃ意味ないわね。」
どうやら思い出したらしいな。
「勝たなきゃ、鍛えた意味がないものね!」
—————ガクッ
天照院以外の四人は一斉にこけそうになる格好をとった。
「おいおい、マジかよ。」
「天照院って、天然なのな!」
「晴香ちゃん、あのヒントでわからないって凄いね。」
「天照院、お前ってバカなのか?」
「え?そ、そうじゃないの⁉︎」
本当に忘れてやがる。
「はぁ………、この修行を始めたの、黒騎士に勝つためだろ。」
「あ………。」
腑抜けたような声を出して顔を赤くする天照院。そして、慌てて言い訳をする。
「わ、わざとよ!そんなことぐらいわかっていたわよ!」
「分かった分かった。」
「ほ、ほんとだからね!」
「分かったから、そんな可愛い顔で俺を本気で叩くな。少し痛いから。」
「—————ボンッ!」
ん?今なんかボンッて音聞こえたけど、何だ?
「え、今………何て?」
「え?だから、そんな可愛い顔で俺を本気で叩くなって。」
「か、可愛い………。」
「ん?何て?」
「わ、私は………、可愛く何て………ない!———バシッ!」
「ぶへっ!」
豪快に照れながら俺を殴り飛ばす天照院。んだよ、可愛いとこあんじゃん。
「い、痛い!か、可愛くないからやめて!」
「か、可愛くない?酷い!」
————バシッ!ドシッ!
「た、助けて。俺……バシッ!殴り………ドシッ!殺さ………バシッ!れ………る。」
「は、晴香ちゃん!諒君死ぬよ⁉︎ストップストップ!」
三人が天照院を止める。だが、俺の発した一言で更なる一撃が加わる。
「嘘嘘、可愛いからもうやめて?」
「か、可愛い?———バシッ!」
「ど、どっちが正解なの⁉︎」
「あ、ご、ごめんなさい。大丈夫?」
「だ、大丈夫。」
「やっぱ、お前ら夫婦みたいだな。それか、付き合いたてのカップルの方がいいか?ははっ!」
あ、グレイス、また死んだ。
「ん?天照院?な、何を———バキッ!ボキッ!」
「ドンマイ!てか、元気いいなー。華恋と一緒だな。」
「華恋?諒君、誰それ?」
「ん?あぁ、元の世界にいる幼馴染だよ。昔からずっと一緒にいんだよなー。」
俺の言葉にグレイスを殴っていた天照院の手がピタッと止まる。そして、俺の方を向き、質問をしてくる。
「その幼馴染の子とはどう言う関係?」
何か言い方怖いぞ?
「え、まぁ、彼女ではないな。うん。」
「そう。貴方にもそういう方がいるのですね。」
「まぁな。元気してっかなー、あいつらも。」
「心配ないわ。必ず、貴方を元の世界に戻してあげるから。」
「あぁ、そうだぜ。知り合ってまだ日が浅いけど、俺達友達だろ⁉︎だからいざとなったら頼れよ。」
「私達も全力で援護するからね!」
「私もこの学院の学院長として、学院の生徒を守る義務がある。出来る限り、協力するからな!」
「はい!皆、ありがとう!」
皆は微笑みながら小さく頷く。
(ほんと、俺は人間関係に恵まれてる………。)
「あ、そうだ。明日、大会に出る他のメンバーと顔合わせをすることになっているんだ。」
「顔合わせ、ですか?」
「あぁ、内田は個人戦だからまだしも、三人わ団体戦に出るからな。顔合わせしといた方がいいだろう?」
「それもそうですね。それに、他のメンバーがどんな魔法を使うか見といた方がいいですしね。」
味方がどんな魔法を使うかで戦い方が変わるからな。
「それにしても、何で諒は個人戦だけなんだ?」
「あぁ、男子は女子より強い奴が多いからな。団体戦には出たら駄目なことになっているんだ。それに男子個人戦はメインだから、楽しみに置いときたいってのもあるんだ。」
「あぁ、確かに諒が出たりすると試合にならねぇもんな。」
「まぁ、お前らが負けそうになったら、観客席から殺気放って戦意喪失にしてやるから安心しろ。」
「バレたら反則負けなるぞ。」
「え?そうなのか?」
「あぁ、部外者の外からの援護は駄目になっている。もちろん、故意に放った殺気もな。」
「ちぇっ、殺気で脅かしてやろーと思ったのに。」
にしても、殺気を放ってるやつとかわかんのか?まぁ、別にいいか。
それよりも……、顔合わせか。俺の予想だと………。
☆★☆★☆★☆★
————六学院対抗、魔法大会まであと一日
訓練場は混沌としていた。理由はもちろん、俺達の魔法大会の参加だ。
「何でですか!学院長!」
「ん?何がだ?」
「天照院さんはまだわかります!ですが何故Gクラスの奴が出るんですか⁉︎それに魔法も使えない奴を個人戦に出させるって!」
「ほーう。なら、お前は優勝する自信があるのだな?」
「ありますよ!」
「なら、月光院にも勝てるんだな?」
「う、そ、それは………。」
男子生徒は学院長の言葉で返す言葉が見つからないのか、戸惑っている。
「でも、それは内田も同じじゃないですか!」
「そ、それにその二人もです!団体戦なのですよ?戦力にならないです!」
「そうです!私達は本気で勝ちにいくんですよ!こんな戦力にならない「だったら試してみればいいじゃないか!」」
「確かに、そこまで気にくわないなら試せばいいな。」
「試すってどうやって?」
「模擬戦をやればいいんだよ。」
これで、どんな魔法を使えるか見れるな。
「分かりました。ですが、気に食わなかったら変えていただきます。」
「あ、なんなら俺も一緒にやろうか?」
「お前は駄目だ。」
「えーー、何でですかー?」
「お前がやるとこいつら、辞退するかもしれないだろ?」
「まぁ、そうですね。分かりました。」
俺はしょんぼりとした顔で俯く。
「とりあえず、模擬戦するぞ。」
「はい、分かりました。」
凛子とグレイス、そして俺達を認めてない奴らが模擬戦をする準備をする中、俺は女子に喋りかけられた。
「ねぇ、君ってあの内田君だよね?」
「………本物?」
俺に喋りかけてきたのは、サリー・ワークレスとエリ・カナリアと言うAクラスの二人だ。
「あぁ、そうだけど?てか、行かなくていいの?」
「やっぱり本物だったんだー。マジかで見るとそこそこかっこいじゃん。あ、私達は信じてるから大丈夫だよ。」
「………本物。………優しそう。………気に入った。」
ワークレスは活発な女子でカナリアは大人しい女子らしい。
「お、エリが一目で気に入るとは、やんじゃん!」
「え、あ、ありがとう。ん?」
「えーっと……。何て呼べばいい?」
「何でもいいよ。」
「分かった!じゃあ、諒君って呼ぶね!私のことはサリーって呼んでね♪」
「あ、あぁ、分かった。」
「………私の事、………エリって呼んで。私は諒って呼ぶから。」
「わ、分かった。」
「すごいじゃん、諒君!エリが、こんな感じなの、初めてみたよ!」
「そうなのか⁉︎」
「うん!」
エリは全然人に懐かないらしい。
「————クンクン。この匂い………好き。」
「クンクンすんなー!」
俺はエリを自分から引き離す。てか、ガチ焦るわ。凛子といい、エリといい。これ、華恋に見られたらガチ、半殺しじゃ済まないかもな。てか、何で殺される前提なんだ?
「あんまり好きでもない相手にそんなことすんなよ?エリは可愛いんだから嫉妬とかされて大変な事になりかねないからな。」
「————ボンッ!」
俺が注意をするとエリが涙目で顔を赤くして俺の顔を見てくる。ん?ボンッ!?
「え?そんな言い方きつかった?ごめん。」
「違う。そんなに心配してくれる人、サリーの他にいなかったから。ありがとう。」
「お、おう。それよりも、顔赤いけど大丈夫か?」
「だ、大丈夫。」
「そうか、なら良かった。」
尋常じゃないほど赤いけど、本人が大丈夫って言ってるから大丈夫だろ。
「諒君、フラグ立ててる………。」
「ん?フラグ?何の?」
「何でもない!」
何のフラグか気になる………。
とか、思っていると模擬戦の準備が出来たようだな。
「諒君、大丈夫なの?」
「ん?まぁ、一番強い魔法出さなければあいつらが死ぬことはないよ。」
「ん?誰の話し?」
「ん?俺達の事を認めてない奴らの事だろ?」
「いや、違うよ!あの二人の事だよ!てか、あの二人、そんな強い魔法持ってんの⁉︎」
「あ、そっちか。なら、大丈夫だよ。俺が鍛え方、考えたから。それにあいつらは元々才能あんだよ。ただ、魔力が少ないらしい。」
「じゃあ、本当はもっと強いってこと?」
「まぁ、そうなるな。そろそろ始まるぞ。あと、エリ、何平然に俺の膝の上に座ってんの?」
「あ、うん。」
「エリはここで大丈夫。」
「俺が大丈夫じゃねぇー!」
この事は元の世界に戻っても華恋には言わないでおこう。うん。
「………グスッ」
「え?何で泣くの?」
「あーあ、諒君泣かしたー。」
「わ、悪かった。そのままでいいから、泣かないでくれ。」
「………良かった。」
嘘泣き………。俺って簡単な男なのかな?
「それでは、始めるぞ。因みに二対二な。」
「「「「はい。」」」」
「レディー、ゴー!」
学院長のスタートの合図で先に動いたのはグレイスだ。
「風よ、我に突風を!」
「じ、自分に魔法?」
「あぁ、援護魔法だ。」
「でも、何で援護魔法何て使ったの?」
「まぁ、見てれば分かるって!」
グレイスの周りに突風が吹く。そして………。
「え?消え————」
「こっち!————ドンッ!」
「ぐはっ!」
一人の男子生徒がグレイスのトンファーの餌食となる。もう一人の女子生徒が倒れた男子生徒を心配そうな顔で見ている。
「余所見したら負けだよ。我が火よ、不死身の鳥となれ!“不死鳥”!」
凛子が放った不死鳥が女子生徒に向かって飛んでいく。
「雷撃よ、天から敵に制裁を!“雷落とし(かみなりおとし)”!」
「魔法名は少し変だけど、威力の高い魔法だな。無意味だけど。」
「無駄だよ。」
不死鳥は雷を落とされてもくらっていないかのように、女子生徒へと、向かって飛んでいく。
そして………。
「あ、あぁ………あぁぁぁ!」
女子生徒は戦意を失い、悲鳴をあげる。
「もう、無理だな。」
俺はすぐさま不死鳥と女子生徒の間に入り…………
「————がぁぁぁぁぁ!」
そして、消え去った。
「な、何今の……。」
「学院長、もういいでしょ?」
「あぁ。勝者、グレイス、花川ペア!」
「やったぜ!」
「うん!」
「え?ちょっ、今の見て何も思わないの?魔法が一瞬で消えたのよ?」
「え?あぁ、一回見てるからな。」
「ちょっと、諒君、説明して!」
「………説明求む。」
「あぁ、今のは“龍の力”だ。」
「龍の力?」
「あぁ。さっき魔法を消し飛ばしたのは“龍の咆哮”。」
「す、凄いじゃん!これ優勝間違いなしだよ。」
「つっても、この力は使わないけどな。」
「え?何で?」
「んー、あんまり使い過ぎない方がいいかなって思っただけだよ。」
それに“黒龍”が言ってた事もあるしな。
「んで、てめぇら。これでもう文句ねぇだろ?」
「あ、うん。」
「よし!明日、頑張るぞ!」
「「「「「おー!(………おー。)」」」」」
この時、俺はあんな事になるとは思いもしなかった。




