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天才魔法具師は、スパダリに保護される  作者: 輝久実


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6/7

ひんやりアイスと熱い口づけ

「冷たくて、甘くて、お口の中でとろける魔法のスイーツ……よし、完璧に固まってる!」


ルチアは昨日作った魔導冷蔵庫の「冷凍室」を開け、中に冷やしておいた銀のボウルを取り出した。


お抱えシェフたちに協力してもらい、最高級の絞りたてミルク、新鮮な卵黄、そしてほんのり高貴な香りがするバニラビーンズに似た香草をじっくり混ぜ合わせ、空気を含ませながら冷やし固めた特製のアイスクリームだ。


スプーンでそっとすくい取ると、前世の高級アイスさながらの、なめらかで美しいクリーム色の山ができあがった。


「ルチア、ずいぶんと嬉しそうな顔をしているね。新しい魔法具の実験かい?」


そこへ、すっかりルチアの工房にやってくるのが日課となったアルヴィンが、軽い足取りで入ってきた。


上質な仕立てのベスト姿の彼は、相変わらず立っているだけで絵画のように美しい。


「アルヴィン様! 違います、今日は魔法具じゃなくて、この『冷凍室』を使った新しいお菓子の実験です! はい、どうぞ!」


ルチアは小さな銀の器に丸く盛ったアイスクリームを、自信満々でアルヴィンに差し出した。


アルヴィンは


「冷たいお菓子……?」


と不思議そうにアメジストの瞳を瞬かせながら、スプーンで一口すくい、端正な唇へと運んだ。


舌の上に乗せた瞬間、彼の美しい眉が驚きでピクリと跳ね上がる。


「……っ、これは……!」


「どうですか?」


「驚いたな……。口に入れた瞬間はしっかりと形があるのに、体温で文字通り『とろり』と溶けて、濃厚なミルクのコクとバニラの甘みが一気に広がる。冷たいのに、ちっとも氷のように硬くない。……ルチア、君はまたとんでもないものを生み出してしまったね」


アルヴィンはあまりの美味しさに感嘆のため息をつき、愛おしさが爆発したようにルチアの頭を優しく撫でた。


「これまでの冷菓といえば、果汁を凍らせて砕いた粗い氷菓子しかなかったんだ。こんなに滑らかで、濃厚なクリームの冷菓子なんて、王族でも食べたことがないよ」


「えへへ、大成功です! これ、『アイスクリーム』って言うんですよ」


褒められて嬉しくなったルチアは、自分用の器を持って


「私も食べよっと!」


とスプーンを動かそうとした。


しかし、その手はアルヴィンの大きな手によって優しく止められてしまう。


「あ、あるゔぃん様……?」


「ルチア、忘れてしまったのかい? 昨日の約束を」


アルヴィンは悪戯っぽく、けれど有無を言わせぬスパダリの笑みを浮かべると、ルチアの手からするりとスプーンを奪い取った。そして、自分の器から大きな一口をすくい、ルチアの唇へと近づける。


「昨日言っただろう? 今日は私が君に『あーん』して甘やかす番だとね。さあ、口を開けて?」


「うぅ、本当にやるんですか……」


恥ずかしさで顔が爆発しそうになりながらも、ルチアは観念して


「あ、ん……」


と小さな口を開けた。


冷たくて、濃厚で、最高に甘いアイスクリームが口いっぱいに広がる。至福の味にルチアが


「ふにゃあ……美味しいです……」


と目を細めると、アルヴィンはその隙を見逃さなかった。


「おや、また口元についているよ。本当に君は、食べさせる手が止められなくなるほど愛らしいね」


「あ、すぐ拭きま――むぐっ!?」


指で拭われるのを身構えたルチアだったが、次に訪れたのは、指先よりもずっと柔らかくて、熱い感触だった。


アルヴィンが至近距離まで顔を近づけ、ルチアの唇についたアイスクリームを、自身の唇で直接吸い上げるように――深く、甘く口づけてきたのだ。


「んむ……っ!? ん、んん……っ!?」


突然のファーストキス(正確には唇の端への深いリップキス)に、ルチアの脳内は真っ白に染まる。


アイスクリームは冷たいはずなのに、重なるアルヴィンの唇と、ルチアの腰をがっちりと抱きすくめる彼の腕は、頭がおかしくなりそうなほど熱い。


ほんの数秒、けれど永遠のようにも感じられた時間の後、アルヴィンは名残惜しそうに唇を離した。


彼のアメジストの瞳は、底なしの独占欲と情熱でトロンと潤んでいる。


「ふふ……冷たいアイスの後に、君の唇がすごく熱くて、最高に甘いよ、ルチア」


「な、ななな、何をして……っ!!」


ルチアは真っ赤を通り越して茹でダコのように硬直した。


「何って、可愛い婚約者候補への、ちょっとした味見スキンシップさ。……ねえ、ルチア。こんなに美味しいお菓子を毎日食べられて、私からこんなに愛される生活だ。もう下町の狭いお店のことなんて、忘れてしまっただろう?」


アルヴィンはルチアの耳元に熱い吐息を吹きかけ、包容力の中に潜む「絶対に逃がさない」という黒い執着心を満面の笑みでコーティングして囁いた。


「うう……もう、アルヴィン様の意地悪……っ」


ルチアは彼の胸に顔を埋めて隠すことしかできず、アルヴィンはそんな彼女を宝物のように抱きしめながら、心底幸せそうに声を立てて笑うのだった。

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