表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔法具師は、スパダリに保護される  作者: 輝久実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/8

未知の料理と「あーん」の味

アルヴィンのベッドで極上の添い寝(お仕置き)を堪能させられた翌日。


すっかり元気が回復したルチアは、公爵邸の広大な厨房にいた。


「ルチア様、これがご指定の『スパイス』と『お米』にございます!」


目の前で敬礼するのは、公爵邸の総料理長をはじめとする一流シェフたち。アルヴィンから「ルチアの食べたいものを完璧に再現せよ」と厳命された彼らの目は、まるで決戦に挑む騎士のように爛々と輝いている。


「あ、ありがとうございます……! ええと、まずは『カレーライス』から作りますね」


ルチアは前世の記憶を頼りに、異世界の食材をパズルのように組み合わせていく。


数種類のスパイスを調合し、じっくりと飴色になるまで炒めた玉ねぎと、柔らかい高級魔獣の肉を煮込んでいく。厨房に、これまでこの世界には存在しなかった、食欲を猛烈にそそる芳醇で刺激的な香りが立ち込めると、シェフたちが


「おお……!」


「なんという魅惑的な香りだ……!」


とざわめき立った。


「よし、カレーを煮込んでいる間に、次は『オムライス』です!」


ルチアは手際よくチキンライス(風のご飯)を炒め、卵を贅沢に3個使って、フライパンの上でトントンと綺麗なラグビーボール型のオムレツを作っていく。それをチキンライスの上にそっと乗せ、ナイフでスーッと切れ目を入れると――。


ぱか、と、とろとろの半熟卵がライスを包み込んだ。


「「「な、何という神技……!!」」」


シェフたちが一斉に崩れ落ち、拍手喝采が巻き起こる。ルチアにとっては馴染み深い「オムライスの開花」だが、宮廷料理しか知らない彼らにとっては、もはや魔法に等しい調理技術だった。


「……ふふ、厨房から素晴らしい香りがすると思ったら、やはり君が主役だったか」


そこへ、公務を終えたアルヴィンがやってきた。


上着を脱ぎ、シャツの袖を少し捲り上げた姿が、大人の色気たっぷりでずるい。アルヴィンはルチアの腰に自然な動作で手を回すと、出来上がった二つの料理を覗き込んだ。


「これが『カレー』と『オムライス』かい? 見たこともない料理だが、香りを嗅いだだけで胃袋が掴まれそうだ」


「そうでしょう! ぜひ食堂で食べましょう、アルヴィン様!」


嬉しそうに微笑むルチアを愛おしそうに見つめ、アルヴィンは


「いや、ここで食べよう。待ちきれないからね」


と、極上のスパダリの笑みを浮かべた。


アルヴィンはルチアを近くの椅子に座らせると、自分はすぐ隣に腰掛け、まずはオムライスの皿を引き寄せた。スプーンでとろとろの卵とライスをすくい――それをそのまま、ルチアの唇へと差し出す。


「はい、ルチア。まずは頑張って作った君から『あーん』だ」


「ひゃっ!? い、いえ、これはアルヴィン様のために作ったので、まずはアルヴィン様が……!」


「私が君に食べさせたいんだ。……それとも、私のスプーンからは食べられないかい?」


アメジストの瞳が、ちょっぴり寂しそうな(確信犯の)光を帯びる。これに拒否権などあろうはずがない。


ルチアは真っ赤になりながら、小さな口を開けた。


「……あ、ん」


ぱくり、と口に含む。


お抱えシェフが用意した最高級のバターと卵、そしてルチアの技術が合わさり、前世の記憶を遥かに超える極上のオムライスが口内でとろけた。


「ふぁ……美味しい……!」


「それは良かった。次は私の番だね」


アルヴィンはルチアが使ったスプーンをそのまま使い(※当然のように間接キスである)、オムライスを口に運んだ。


その瞬間、アルヴィンの目が見開かれる。


「……素晴らしいな。卵の柔らかさと、この赤いソースの酸味と甘み、ライスの旨味が完璧に調和している。こんな贅沢な料理、王宮の晩餐会でも出たことがない。君は魔法具だけでなく、料理の天才でもあるのか」


「えへへ、お口に合ってよかったです!」


「次は、この『カレー』というものをいただこうか。……うん? 辛い、が……美味い。奥深いコクがあって、スプーンが止まらなくなるね。これは我が国の『行軍用携帯食』として採用すれば、兵士の士気が跳ね上がるぞ。……いや、他国には絶対に教えないがね。これは私と君だけの秘密だ」


アルヴィンはそう言うと、今度はカレーをすくい、


「はい、あーん」


とルチアの口元へ。


「あ、あの、辛いですよ!?」


と言いつつも、ルチアは再びぱくり。


「んん〜! スパイスが効いてて最高です!」


「ふふ、よく食べる子は可愛いね。ほら、口元にカレーがついているよ」


アルヴィンは親指でルチアの唇の端を優しく拭うと、昨日と同じように、その指先を自分の舌でペロリと舐めた。


「ア、アルヴィン様……! それ、昨日も言いましたけど、恥ずかしいです……っ!」


「恥ずかしがる必要なんてないさ。私の婚約者(になる予定の女の子)を、私がどう甘やかそうと自由だろう?」


「えっ、こんや……ええっ!?」


爆弾発言をケロッと言ってのけたアルヴィンは、驚愕するルチアをひょいと抱き上げ、自分の膝の上に座らせた。完全にホールドされた状態で、さらに「あーん」の餌付けは続く。


一流の料理と、極上のスパダリによる底なしの甘やかし。


ルチアの胃袋も、ハートも、完全にアルヴィンのものとしてロックオンされていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ