帰宅後寝室にて
「絶対障壁、だなんて……アルヴィン様、いくらなんでもやりすぎですよ」
ルチアが呆れたように小さく笑うと、アルヴィンはその言葉を強引に奪うように、彼女の白い首筋へと深く唇を寄せた。
「やりすぎなものか。君という国宝級の頭脳と、私の心をここまで狂わせる愛しい存在を、どうして外の有象無象に晒しておける? 陛下がまたおかしな口実を作って君を呼び出そうとしたその瞬間に、この部屋ごと次元の隙間へ隠れてしまえばいいのだから」
「きゅ~う」
ベッドの足元では、辺境からの長旅で少しお疲れ気味だったシロちゃんが、エアコンの吹き出し口から流れてくる『抱擁モード』の極上の冷気に当たりながら、すでに無防備に丸くなって眠り始めている。
「ほら、シロちゃんまで完全につがいのクッションみたいに同化しています。……んっ、アルヴィン様、冷たいです……っ」
アルヴィンの氷系魔術を帯びたひんやりとした指先が、ルチアの背中のリボンを器用に、けれど少しもどかしそうに解いていく。国境の結界炉を修理したあの冷徹で完璧な『黒ハラ総帥』の姿はどこへやら、今の彼は、ただルチアの温もりを貪り尽くそうとする一匹の執着深い獣だった。
「冷たいのは表面だけさ。……すぐに君の熱で、私を満たしてくれるのだろう?」
「それは……っ」
薄暗い寝室の中、ルチアが設計した魔導エアコンの駆動音だけが、静かに、そして二人の甘い吐息に寄り添うように響き渡る。
ルチアの心拍数の高まりを鋭敏に察知した『抱擁モード』は、室温をさらに絶妙なひんやり加減へと自動で調整していく。
しかし、どれだけ部屋が心地よい冷気に包まれようとも、アルヴィンの逞しい腕の中に完全に閉じ込められ、深く深く唇を塞がれていくルチアの身体は、初夏の夕暮れよりも熱く、とろけるような甘い熱で満たされていくのだった。




