甘いお仕置き
「お仕置き、ですか……?」
ルチアが小さく身を震わせると、アルヴィンは首筋に優しく牙を立てるように、痕を残さない甘噛みを刻んだ。その微かな刺激に、ルチアの背中が小さく跳ねる。
「ああ、お仕置きだ。君があまりにも格好良く大役を果たすものだから、国境の男たちが君を崇めるような熱い視線を送っていた。私はそれが、エアコンの過負荷どころではないほどに気に入らない」
「それ、ただの理不尽なヤキモチです……っ」
「ヤキモチで結構。私は君に関してだけは、世界で一番度量の狭い男だからね」
アルヴィンは、ルチアの作業用眼鏡をそっと外し、サイドテーブルへと置いた。視界が少しだけぼやけたルチアの瞳に、薄暗い部屋の中でアメジストのように妖しく光るアルヴィンの双眸が、何よりも鮮明に映り込む。
アルヴィンが指先に魔力を通すと、砦の寝室の片隅に置かれていた、ルチアが馬車へ持ち込んでいた簡易型の『魔導エアコン(ポータブル版)』がピッ、と静かな音を立てて起動した。
エアコンから吹き出す風は、ルチアの緊張を解きほぐすように優しく、そして二人の境界線を溶かすような極上の心地よさを部屋に満たしていく。
「あ……これ、『抱擁モード』の設定のまま……」
「当然だろう。君の心拍数が上がると、室温が下がり、私の魔力パスがさらに君を求める。国境の結界炉を直した君への、最高のご褒美の環境だ」
「アルヴィン様……ひゃっ、冷たい……っ」
シーツに押し付けられたルチアの細い手首を、アルヴィンのひんやりとした大きな手が優しく、けれど絶対に逃がさない強さで拘束する。
冷気を含んだ指先が、ルチアの制服の合わせ目をゆっくりと割り、熱を持った肌へと直接滑り込んでいく。その温度のギャップに、ルチアは息を呑み、彼を拒むことなど到底できないまま、その広い胸へと顔を埋めた。
「世界を救った我が君。今日の君は本当に完璧で、美しかった。……だけど、ここからはただの、私の可愛いルチアでいておくれ」
「はい……アルヴィン、様……」
耳元で囁かれる低く甘い声と、部屋を満たす清涼な風。
そして、その風とは対照的に、肌を重ね合わせるたびにじわじわと高まっていく、二人だけの息が詰まるほどの甘い熱。
国家の危機を救った夜、誰にも邪魔されない砦の最奥で、ルチアは公爵様の底なしの独占欲に、身も心もとろけゆくまま溺れていくのだった。




