検証の終わりと冷めない熱
「……ふぅ。マイルズ様、本当にお給料が残ってよかったですね」
ルチアがベッドの上でパタパタと胸元を扇ぎながら呟くと、アルヴィンは背後からその細い手首をそっと捕らえ、ベッドのシーツへと沈めた。
「もう他の男の心配をするのはおやめ。これからは、私だけを心配してくれないか」
「アルヴィン様……?」
振り返ると、アメジストの瞳が薄暗い部屋の冷気の中で、妖しく、けれどひどく甘く揺らめいていた。
アルヴィンはルチアの手首を掴んだまま、自分のプラチナブロンドの髪をルチアの首筋に擦り寄せる。いつもは鉄壁の公爵様が、今はまるでルチアの温もりなしでは生きていけない寂しがり屋の獣のようだった。
「さっきのゲームの時……君がマイルズを応援するような目を向けただろう? 私の心は、あの氷の結晶よりも冷たく凍りつきそうだったんだ」
「えぇっ!? あれはただ、あまりにもマイルズ様が手も足も出なくて可哀想だったからで……っ」
「言い訳は聞きたくないな。……それに、君が作ったこの『抱擁モード』の検証も、まだ終わっていない」
アルヴィンが指先に少しだけ魔力を込めると、壁のエアコンが「ピッ」と小さな音を立てた。
吹き出す風の温度が、ほんの少しだけ……二人の境界線を溶かすように、優しく変化する。
「あ……風が……」
「君の心拍数が上がると、室温が下がり、私の魔力パスが君をさらに強く求める……。本当に、君は恐ろしいほど私を甘やかす機能を作ってくれたものだ」
アルヴィンはルチアの身体を完全に組み伏せると、その白く震える鎖骨に、そっと不器用なほど深い口づけを刻んだ。
「ひゃんっ……! アルヴィン、様……冷た、くて……あついです……」
「冷たいのは部屋だけでいいさ。君のすべては、今から私だけの熱で満たされるんだから」
カーテンの隙間から差し込む初夏の月光が、ベッドの四隅で静かにきらめく氷の結晶を青く照らし出す。
エアコンの駆動音だけが静かに響く部屋で、ルチアは逃げることも忘れて、公爵様の深く、底のない愛の海へと沈んでいくのだった。




