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天才魔法具師は、スパダリに保護される  作者: 輝久実


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最高権力者のわがまま

「……だから言ったのだ、アルヴィン。お前が『国家機密級の魔導兵器に匹敵する』などとマイルズたちを脅すから、余の耳にまで届いてしまったではないか」


王城の最奥、きらびやかだが初夏の熱気がこもる謁見の間。


豪華な玉座に座る国王陛下は、額の汗を絹のハンカチで拭いながら、目の前に佇むアルヴィンと、その隣で緊張に震えるルチアを見下ろしていた。


王太子の件もあり、ルチアの異世界知識の凄さは知っていた国王だったが、まさか「夏を春に変える箱」まで作ってしまったと聞き、居ても立ってもいられなくなったらしい。


「ルチア嬢。余からも頼む。この、じっとりとした王城の執務室を救うと思って、その『まどうえあこん』とやらを、余の部屋にも一台作ってはくれまいか?」


「えっ、あ、あの……!」


ルチアが恐縮して頭を下げようとした瞬間、一歩前に出たアルヴィンが、その大きな身体でルチアを完全に背後に隠した。


国王の前にいるというのに、アルヴィンのアメジストの瞳は限界まで不機嫌そうに細められ、周囲には物理的な冷気がピキピキと漂い始めている。


「陛下。お言葉ですが、あれの貸し出し、および複製は不可能です」


「な、何故だ! 余は一国の王だぞ? 予算ならいくらでも出す!」


「金の問題ではありません」


アルヴィンは眉一つ動かさず、冷酷なまでの正論を突きつけた。


「あの魔導具は、ルチアの独自の術式と、私の特殊な魔力パスが完全に同調して初めて稼働する『一対いっついのアーティファクト』なのです。もし無理に複製して王城に設置すれば、魔力の逆流が起き、最悪の場合、王城の半分が消し飛ぶ大爆発を起こします。……陛下は、王城を灰にしたいのですか?」


「お、王城が爆発……っ!?(※ルチアの心の中:そんな物騒な設計してませんっ!)」


アルヴィンのガチすぎるハッタリ(黒ハラモード)に、国王はヒィッと息を呑んで背もたれにのけぞった。


「そ、そこまで危険なものなのか……?」


「ええ。ですから、あれは我が公爵邸の、さらに私とルチアの寝室で厳重に管理・監視しなければならないのです。一歩でも外に出せば、大陸の危機になりかねません」


(※ルチアの心の中:ただ二人でベッドで涼しくイチャイチャしたいだけですよね!?)


アルヴィンはもっともらしい顔で一礼すると、怯える国王をそのままに、ルチアの細い腰をぐっと抱き寄せた。


「納得していただけたようで何よりです。ルチアの安全と国家の平和のため、我々はこれにて失礼いたします。……さあ、帰ろう、ルチア。これ以上ここにいると、君が熱中症になってしまう」


「あ、はい……っ。失礼いたします、陛下!」


最高権力者である国王すらも、圧倒的なハッタリと威圧感で完全に論破(恐喝)したアルヴィンは、ルチアを抱きかかえるようにして、颯爽と謁見の間を後にした。


馬車に乗り込んだ瞬間、アルヴィンはルチアを自分の膝の上に抱き上げ、その首筋に深く顔を埋めてハァ、と長いため息をついた。


「……最悪だ。陛下まで君の技術を横取りしようとするなんて。ルチア、やっぱり君を私の部屋から一歩も出したくない。あの涼しいベッドの中に、一生閉じ込めておきたいよ」


「アルヴィン様、陛下にあんな嘘をついて大丈夫なんですか……?」


「嘘じゃないさ。君が他の男の部屋を涼しくするなんて、私の独占欲が爆発して本当に王城を灰にしかねないからね」


アメジストの瞳をとろけるような愛欲で満たし、アルヴィンはルチアの唇を深く、深く塞いだ。


国王のわがままから逃げ切り、再び二人だけの「最高機密の部屋」へと戻る馬車の中で、ルチアは公爵様の底なしの独占欲に、今日も甘く翻弄されるのだった。

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