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天才魔法具師は、スパダリに保護される  作者: 輝久実


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娯楽革命と甘い対戦

「よしっ……! 画面の出力、コントローラーの同調、すべてオッケー!」


風邪から完全復活したルチアは、工房の作業台で勢いよく叫んだ。


ベッドの上で大人しくしている間に、前世の「ゲーム」が恋しくてたまらなくなった彼女は、持ち前のチート能力をフル稼働させて、この世界初の娯楽魔法具を作り上げてしまったのだ。


壁に投影された魔導スクリーンの前には、手元で操作するための小さな魔導金属製のコントローラーが二つ。


「ルチア、ずいぶんと楽しそうな機械を作ったんだね。それは一体何だい?」


お決まりのハーブティーを手に部屋に入ってきたアルヴィンが、壁に映し出された光の画面を見て不思議そうに目を細めた。


「待ってました、アルヴィン様! これ、前世の知識で作った『魔導テレビゲーム機』です! この画面の中で、自分の分身のキャラクターを操作して遊ぶ、最高の暇つぶし道具なんですよ!」


「ほう、画面の中の駒を動かす……チェスのようなものかい?」


「もっと直感的でスリリングですよ! 百聞は一見に如かずです。さあ、アルヴィン様もここに座って、これを持ってください!」


ルチアはアルヴィンをソファに引っ張って来て隣に座らせると、コントローラーを一つ手渡した。


今回ルチアが起動したのは、前世で国民的人気を誇った「横スクロールのアクションレースゲーム(某カートゲーム風)」を魔導回路で再現したものだ。


「ルールは簡単です! 魔法の乗り物に乗って、一番早くゴールした人が勝ち。途中で落ちている『魔石の箱』を拾うと、相手を邪魔する魔法が使えます!」


「なるほど、シンプルだが奥が深そうだね。……よし、せっかく勝負をするんだ。何か『賭け』をしないかい?」


アルヴィンがアメジストの瞳を悪戯っぽく光らせ、極上のスパダリ笑顔を浮かべた。


「賭け、ですか? いいですよ! 私、前世ではこれで負け知らずだったんですから。もし私が勝ったら、明日は一日中、工房に引きこもって作業しても文句を言わないでくださいね!」


「いいだろう。だが、もし私が勝ったら――今日の夜は、私が満足するまでベッドで君を抱きしめさせて(添い寝させて)もらうよ」


「うぐっ……!(結局それじゃないですか!)」


ルチアは顔を赤くしながらも、


「絶対に負けません!」


とスタートボタンを押した。


画面に「3、2、1、スタート!」の文字が浮かび上がり、二人のキャラクターが走り出す。


ルチアは慣れた手つきでコントローラーのボタンを叩き、鮮やかにコーナーを曲がっていく。


「ふふん、どうですかアルヴィン様! 先行させていただきますね!」


「おや、それは速いね。……だが、このボタンを押すとどうなるのかな?」


アルヴィンは初めて触るコントローラーのはずなのに、数秒で構造を理解していた。彼が天才的な魔力操作の感覚でボタンをカチリと押すと、画面上のアルヴィンのキャラクターが、ルチアに向けて「追尾型の雷魔法(※ゲーム内のアイテム)」を放った。


どうん! とルチアの乗り物が爆発してスピンする。


「ええええっ!? 初見でそのアイテムの使いこなしかた、おかしいです!?」


「魔力の流れを読めば、どのボタンがどの術式と連動しているか分かるからね。……おっと、追い抜かせてもらうよ、ルチア」


アルヴィンは、実戦さながらの驚異的な反射神経と直感で、ルチアのキャラクターを追い抜いていく。


焦ったルチアは


「あ、待って、そこは罠が――ああっ!」


と叫びながら、必死にコントローラーをガチャガチャと動かした。身体まで一緒に右へ左へと傾いてしまう。


「ああっ、もう! アルヴィン様強すぎますっ!」


「ふふ、真剣な顔をして可愛いね。……でも、そんなに動くと危ないよ?」


「えっ――」


画面に集中しすぎていたルチアは、自分の身体がどんどんアルヴィンの方へ傾いていたことに気づかなかった。


ゴール直前、アルヴィンが片手でコントローラーを操作しながら、空いたもう一方の長い腕で、ルチアの細い腰をぐっと引き寄せたのだ。


「ひゃっ!?」


ルチアの身体がアルヴィンの胸板にすっぽりと収まり、その拍子に手元が狂ってルチアのキャラクターは壁に激突。


その瞬間、画面には華やかにアルヴィンの『1位(WIN)』の文字が躍った。


「私の勝ちだね、ルチア」


アルヴィンはコントローラーを置くと、腕の中のルチアを完全に閉じ込め、耳元でふっと熱い吐息を漏らした。


「ずるいです……! 今のは物理的な妨害ですっ……!」


「いいや、ゲームに集中するあまり、自ら私の胸に飛び込んできたのは君のほうだよ? ――さあ、約束は約束だ」


アルヴィンはルチアの顎をそっと持ち上げ、アメジストの瞳をとろけるような独占欲で満たして微笑んだ。


「この素晴らしい『げーむ』のおかげで、部屋から出なくても君とこんなに楽しくイチャイチャできることが分かった。本当に君の発明は私を幸せにしてくれるね。……さあ、寝室へ行こうか。朝までたっぷり、勝者の権利を行使させてもらうよ」


「うぅ……また自分の首を絞める魔法具を作っちゃった……っ」


快適なエアコンに続き、最高のゲーム機まで手に入れたアルヴィン様により、ルチアの『引きこもり公爵邸ホールドライフ』は、ますます強固で甘いものになっていくのだった。

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