お茶会は大成功!
あの後、お茶会は大盛況で終わった。
ゲルダはローラのネイルを気に入り、ローラ自身にも興味を持ってくれたのだ。
特に彼女は庭のレイアウトを考えるのが好きであり、多少趣きは違うがローラと似通った趣味があることも判明したのである。
「勢い余って私の庭にご招待したいと申し上げたら、二つ返事で了承してくださったわ」
「あンらぁ、良かったじゃな〜い♡」
「それから……」
帰りの馬車で、ローラの弾んだ声は止まることはなかった。
対面に座っていた侯爵令嬢をはじめ、他の令嬢たちもネイルに興味を持ち、ローラに色々と話を振っていくれた。
「スノーホリィ侯爵令嬢はお商売として作ってみないかと声も掛けてくださったのだけれど、一度考えさせて貰うことにしたわ」
「そうね、すぐに決めることは無いわよ」
少人数に作る事と、量産して売りに出すのは訳が違う。
まずは父であるブロッサム伯爵に相談すべきであろう、義母にマニキュアを一本贈ればどういったものなのか理解してもらえる筈だ。
「楽しかったけど、今日は疲れたわ……」
ふう、と溜息をついて馬車の背もたれに身を預けるローラに、モモがハーブティーと塩蜂蜜クッキーを差し出す。
「お疲れ様、邸までのんびりしましょ」
礼を言いながらティーソーサーを受け取る。
ラベンダーとレモンバームの香りが、高揚した気分を落ち着けてくれそうだ。
「それじゃあお待ちかねの、モモ先生による異世界文学の語り聞かせコーナーでもしちゃおうかしらン♪」
「じゃあ、お願いしようかしら」
お茶会に行く前に、そんな約束をしたことを思い出しつつローラは塩蜂蜜クッキーを一枚かじる。
いつもの黒いハンドバッグから一冊の本を取り出したモモが、ぺらりとページをめくる。
「昔、とある王様のご治世の時代のお話……」
ふと、モモがページを辿る指を止めた。
黒い瞳が、僅かに見開かれる。
「……先生?」
本当に少しの間の後、取り繕うようにモモは笑みを浮かべた。
「ごめんなさい、ちょっと言葉が詰まっちゃったわ。 さあ、モモ先生のロマンチック語り聞かせの始まり始まり〜♪」
努めて明るく振る舞うモモに違和感を覚えつつも、ローラは深くは追求せず、千年以上愛されているという物語へと身を委ねていった。
「昔、キリツボのコウイ……そうね、伯爵家出身の側妃と思ってもらえたらいいかしら。 まあ、キリツボと呼ばれる女性が王様の寵愛を一身に受けていたのよ……」
二人を乗せた馬車は、静かに夕暮れの王都の街道を進んでゆく。
ローラはモモの穏やかな声を聞きながら、のんびりとハーブティーを一口啜るのであった。
――モモとの別れの時間が、近付いていることに気付くこともなく。




