第五話 婚約破棄
ここは、幾多ある異世界の中のひとつの世界にある、大国を治める大きなお城⋯⋯。
その大国を治めるお城の、玉座の間では風格を滲み出しながら玉座に座る女王と、その女王の娘に当たる齢8の王女様が向かい合うように立っていました。
女王様は、早速王女様に要件を、きつい言葉を浴びせます。
「娘よ。お主は十も離れた隣国の王子とは相応しくない。あやつは、民を民とも思わん阿呆だからな。よって、婚約を破棄するよう王に話をつけてきた。悪く思うな」
この国を治める女王様の政治力、軍事力は絶大。王女⋯⋯娘が3歳の時、小さな力しか持たない隣国と交わした婚約を破棄させる等容易いことだったのです。
「え⋯⋯?」
あまりの出来事に、言葉を失う王女様⋯⋯。それでも、力を振りしぼって声を、言葉を続けます。
「あの、お母⋯⋯女王様⋯⋯」
「なんじゃ? 娘よ。今更、なに言うても」
「婚約破棄って、何ですか?」
まさかの娘の素っ頓狂な返しに、女王様は「そこからっ!?」と声を上げながら玉座から身を乗り出しそうになります。その声は、玉座の間に良く響き渡りました。
とはいえ、王女様はまだ8歳。『婚約破棄』を知らなくても不思議はありません。
頭をかかえた女王様は、余った左手を困ったように差しながらこう答えます。
「その辺は、検索しなさい」
「検索、検索⋯⋯」
無垢な王女様は、どこから出したのか今をときめく携帯端末を取り出し、早速『婚約破棄』について調べ始めます。
「あと、今話題のAIとかね」
「教えて、AI」
AIが搭載された携帯端末が『婚約破棄』についてなんと答えたかは、女王様と王女様、ふたりだけの秘密です。




