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第六話 タイムマシン

「遂に、タイムマシンがああぁぁ⋯⋯」


 そう言いながら、身体をひねり揚げのように左手に捻じるのは、鬱蒼と生い茂るとある山の中腹に、ここにありますよと言わんばかりに広大に切り開かれた土地に『でん』と鎮座する、外観が白く半球状の建物⋯⋯『研究所(ラボ)』の現最高責任者で外相続人、『ドク・シンキ・ゾーク』女博士、26歳でした。


 彼女は、捻りに捻った身体を解放するかのように、自信満々に両腕を反対側に振り上げると、刮目せよと言わんばかりに残りの台詞「完成したあああぁぁぁ!!!」を力強く口にします。と、同時にドク・シンキ・ゾーク⋯⋯『ドク博士』の腰まで伸びた、白と黒のツートンカラーの髪が見事に着用している白衣と黒のズボンに巻き付きます。ちなみ、ドク博士の身長は189センチとそこそこ高い方なので、腰まで伸びた長い髪が巻き付くと、若干ホラー感が漂いました。


「ああ、うざいのう!」


 そうい言いながら、自身に巻き付いた髪を振り解いていると、どこかからこんな嬉しそう声が聞こえて来ました。


「目出度いっす、博士! 遂に、完成したんすね!!」


 その声の正体は、この研究所で住み込みで働いているドク博士の右腕、女助手の『トシコ・チサ』でした。ちなみに年齢は19歳です。


「おお、お主はドジっ娘の助手くんではないか!」

「ドジっ娘じゃないですね。トシコですね」


 助手のトシコは、真顔でドク博士のボケ発言を即答で否定すると、直ぐに好奇心旺盛な顔に戻り、144センチという自身の背丈には合わない、ぎりぎり自身の指が出るくらいにまくったダボダボな白衣の両袖と、金髪ツインテ⋯⋯二つ結びの髪を生きているかのようにぴょこぴょこと動かしながら、話を続けます。


「そ、それでそれで、博士! 完成したタイムマシンというのはどこにあるんすか!?」

「慌てるでない、助手くん。タイムマシンなら、ほれ。あそこにあるぞい!」


 ドク博士は、自身満々にタイムマシンのある方向に左手をかざします。それをみたトシコは、言葉を選ぶようにこう言いました。


「おお! こ⋯⋯これは、なんというか、某青狸が乗って、未来からやってきた、その、乗り物にコクージしてましね」

「トシコよ⋯⋯それは、言葉を選んでいるようで、はっきりと言っているぞい」


 とはいえ、事実ドク博士が完成させたというタイムマシンの見た目は、某青狸のそれに酷似しておりました。


「す、すみません⋯⋯」

「謝るな、トシコよ。正直、儂もタイムマシンというと、これしか思いつかなくてな。しょうがなかった」


 ドク博士は、胸の前で腕組をし仁王立ちしながらそう答えました。それに対し、助手のトシコはギャグ的な汗を流しながら呟きます。


「それって、発明家としてどうなんですか⋯⋯?」


 そのトシコの呟きが聞こえたのか、ドク博士は腕組みを少し解き、右隣りにいたトシコに向かって指差しながら、若干してやったり感でこう言いました。


「あ、じゃがあれじゃぞ。儂もオリジナリティあるデザインは考えておったのだぞ?」


 助手のトシコは、ドク博士の方を振り向く事なく、素の表情で話を聞いてあげることにしました。


「それって、何ですか?」

「超巨大球体型爆弾じゃ」


 トシコは、右こめかみにギャグ的な青筋を浮き上がらせながらこう返しました。


「絶対にやめてください」

「え〜?」


 ドク博士は、年甲斐もなく胸元で両の人指し指をつんつんさせます。ですが、ドク博士がとんでもない発明をしたのも事実です。その現実を再び受け止めるようにトシコは笑みを浮かべ、ドク博士にこう切り出しました。


「でも、ドク博士。このタイムマシンに乗れば、過去に行く事が出来るんですよね?」

「おお、そうじゃ。どんな過去にでも行く事が出来るぞい!」


 向かい合いながらふたりは、腰の辺りで両手をぐっと握り締めると、寸分違わずタイムマシンの方を振り向き、タイムマシンに搭乗しようと駆け出します。


「では早速、搭乗しましょーーー!」

「あ! 待たんかトシコ! 儂をおいて行くでない!!」


 タイムマシンは近くにあるにも関わらず、全く同時に駆け出したトシコとドク博士の差は離れて行きます。


「トシコ、いっちばーん!!」


 真っ先に搭乗したトシコ。ですが、なぜかドク博士は未だタイムマシンに搭乗する事が出来ません。


「待つんじゃ、トシコ!! 儂を置いて行くでない!!」


 必死に走るドク博士。ですが、一向に距離は縮まりません。


「え〜と♪ これは、どう動かせば良いのかなぁ?」

「駄目じゃ、トシコぉぉ!! 勝手に動かすでないいぃぃ!!」


 まるで、その場で足踏みしている感覚⋯⋯そうこうしているうちに、遂に、タイムマシンが起動し、ふわりと浮き上がりました。


「あ、動いた!」

「待たんか! トシコ、トシコおおぉぉ!!」






 ⋯⋯⋯⋯そして。






「⋯⋯⋯⋯と、いう夢をー、見たんじゃよ〜」


 朝日差し込む寝室、ベッドの上で上半身だけ起こしたドク博士は、起床時間ぴったりに起こしに来た助手、トシコに眠気眼でそのように語るのでした。


「それ、私の扱いが雑すぎじゃないですか⋯⋯?」


 話を聞いたトシコは、若干おかんむりで返答した時でした。ドク博士は、少し哀しそうにうつむき、両手で顔を覆いながらこう呟きました。


「やっと⋯⋯やっと、タイムマシンが完成したと思ったんじゃがのう⋯⋯」


 それを聞いたトシコは、ちょっとだけ哀しそうな表情を浮かべましたが、直ぐに柔和な顔になると、ベッドに片足をのせ、ドク博士の頭部を慰めるように撫でながら優しく語りかけました。


「近いうちに、現実でタイムマシンが出来ますよ⋯⋯」



トシコの台詞、


「おお! こ⋯⋯これは、なんというか、某青狸が乗って、未来からやってきた、その、乗り物にコクージしてましね」


の「ましね」は、わざと誤字っているので、誤字報告はご勘弁ください。

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