表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/132

主語が足りなかった件

 休日の駅前。


 人通りが多い。

「……」

 白石ひなたは、きょろきょろと周囲を見回していた。

 スマホの画面。

 姉のロック画面。

 そこに映っていた顔をみた。

(たしか、この人が)

 朝比奈恒一。


 姉が最近、妙に反応する相手。

 名前を見ただけで止まる。

 話題が出ると静かになる。


(なんとかしたい)

 妹として。

 本気で思って高校付近で彼を探していた。

 その時。


「あ」

 少し離れた場所。

 見覚えのある顔。

 背は高めで少しぼんやりした顔。

 でも、写真と同じだった。


「朝比奈先輩!」

 恒一が振り向く。

「……?」

 一年生。

 ひよりに似てる。

 けれど、近くでみると確かに少し違う。

「はじめまして、白石ひなたです!」

「ああ」

 そこで繋がる。


「白石の妹だっけ?」

「はい!」

 ひなたは勢いよくうなずく。

 少し緊張していた。


 でも、止まれない。

「お願いがあります!」

「?」

 ひなたは息を吸う。

 そして。

「デートしてください!」

 一瞬、駅前の空気が止まった。


 近くを歩いていたカップルが、ちらっとこちらを見る。

「……」

 恒一も止まる。

 数秒間。

 本気で考える。

「……ひなたと?ひよりと?」

「あっ」

 ひなたの顔が赤くなる。

「そ、そうです!」

「姉とです!」

「なるほど」

 恒一は納得した。


 一方、ひなたは心臓がうるさかった。

(主語忘れた……!)

 やってしまった。

 でも。

 恒一は特に気にした様子もない。


「デート?」

「はい!」

「姉、最近ちょっと元気なくて!」

「……」

 恒一は少し考える。

 ひよりの顔を思い出す。

 静かで、どこか距離を取る感じ。


「公開告白の件か?」

「うっ」

 ひなたが止まる。

 図星だった。

「……ごめんなさい」

 しゅんと肩が落ちる。

「姉のためにやったんです」

「いいことあると思って」

「……」


 恒一は少し考える。

 本気だったのは分かった。

 悪意もない。

 むしろ、姉思いなんだろう。

「白石は優しいな」

「……え?」

 ひなたが顔を上げる。

「妹としては立派だと思う」

「……」


 ひなたが固まる。

「姉ちゃんも、そういうところあるんですよ」

「……そうなのか」

「困ってても、自分から言わないし」

「だから放っとけなくて」

「……」


 恒一は少し黙る。

 それから、小さくうなずいた。

「分かる気がする」

「え?」

「なんとなくだけど」

 ひなたは、その顔を見る。

 真面目だった。

 変に気を遣ってる感じもない。

 本気で言っている。


(……姉ちゃんが気になるの、分かるかも)

 なんとなく。

 少しだけ思った。

「で?」

 恒一が聞く。

「どういうデートがいいんだ?」

「え?」

「いや、やるならちゃんと考えないと」

 真顔だった。


 ひなたは思う。

(……なんか)

(思ってたより変な人だ)

 でも、悪い感じはしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ