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距離を縮めたかった話

 朝、二年A組。


「……」

 朝比奈恒一は、廊下に立っていた。

 少し考える。

 昨日。

『距離取りすぎ』

『極端』

『不器用』

 色々言われた。


「……」

 否定はできなかった。

 だから。

(ちゃんと話そう)

 そう決めた。


 ちょうどその時。

 廊下の向こうから、真田巴が歩いてくる。

 長い黒髪、いつもの真っすぐな歩き方。

「……」

 巴も恒一に気づく。

 一瞬だけ、空気が止まった。


「……おはよう」

 恒一が先に言った。

「っ」

 巴が少し止まる。

「……お、おう」

 微妙にぎこちない。

「……」

 恒一は少し考える。

 ここで終わると、また距離が戻る気がした。


 だから。

「最近、避けてるみたいになって悪かった」

 一瞬、空気が澱んだ。

「……っ」

 巴の肩が跳ねる。

「いや、その」

 恒一は続ける。

「嫌われたくなかっただけなんだが」


「……」

 巴、動きが停止。

 完全に停止。

 顔だけ少し赤い。

「……」

 恒一は考える。

(あれ?)

(なんか違うか?)


 後ろで、教室のドアから見ていた基樹が頭を抱えた。

「お前なんで朝からそんな重い話するんだよ……!」

「重いのか?」

「重いわ!」

 彩音が横で肩を震わせている。

「ふ、ふふ……」

「彩音笑ってるだろ」

「笑ってないよ?」

 絶対笑っていた。

「……」


 一方、巴はまだ固まっていた。

 嫌われたくない。

 その言葉だけが、頭に残る。

「……」

 顔が熱い。

 でも、なんて返せばいいのか分からない。

「……別に」

 結局、それしか出なかった。


「……そうか」

 恒一は少し安心した顔をする。

 基樹がさらに頭を抱えた。

「なんでそれで安心できるんだよ……」

「怒ってないなら大丈夫だろ」

「そういう問題じゃねえ!」

 彩音がとうとう吹き出した。

「ふふっ……」

「もうちょっと段階踏もうよ恒一……」

「段階?」

 本気で分かっていない顔だった。

「……」

 恒一は少し考える。


 それから。

「…以前買った指輪渡すのはどうなんだ?」

 今度こそ、間違いなく空気が止まった。

「は?」

 基樹が固まる。

 彩音も目を瞬く。

「……なんで指輪?」


 巴の顔が一気に赤くなる。

「距離を縮める方法としていいかと」

 恒一は真顔だった。

 本気だった。


「悪化するわ!!」

 基樹のツッコミが廊下に響く。

「なんで急に最終イベント行こうとしてんだよ!」

「最後なのか?」

「最後だよ!」

 彩音が肩を震わせながら笑う。

「それはもっとこう……色々終わってから使うやつかな……」

「……そうなのか」

 恒一は、少し納得した顔をした。


「……」

 巴はもう限界だった。

 嫌われたくない。

 距離を縮めたい。

 指輪。

 情報量が多い。


「……お、お前」

 巴が何か言いかける。

 でも、言葉にならない。

「……」

 恒一は、巴のその顔を見る。

 (……やっぱり難しいな)

 少しだけ考えた。


 一方、基樹は真顔で思っていた。

(絶対まだ悪化してるだろこれ……)

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