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なんか上手くいってない話

 放課後、二年A組。

「千夜ちゃん、面白いね」

「お前が言うと怖いんだよ」

 基樹のツッコミで、教室に小さな笑い声が広がる。


 その空気が、少し落ち着いた頃。

「……なあ」

 恒一が、珍しく自分から口を開いた。

「?」

 三人の視線が向く。

 恒一は少し考えてから言った。

「真田の件なんだけど」

 一瞬、空気が止まる。

「……」

 基樹がゆっくり顔を上げた。


「なんか」

 恒一が続ける。

「最近、上手くいってない気がする」

「今更か!!」

 基樹が机を叩いた。


「気づくのおせえよ!!」

「……そうなのか?」

「そうだよ!」

 即答だった。

 純也が少し苦笑する。

「まあ、距離取りすぎ感はあるよね」

「……」

 恒一は黙り、少し考える。

「避けてるつもりはない」

「いや避けてる」

 基樹が即答する。

「めちゃくちゃ避けてる」

「……」

 恒一はさらに考えた。


「ちゃんと距離を取ってるだけだ」

「それを避けてるって言うんだよ!」

 基樹が頭を抱える。

 彩音が小さく笑った。

「でも恒一、極端なんだよね」

「……?」

「距離の取り方」

 柔らかい声だった。

 責める感じではない。

「前は近すぎたのに、今は遠すぎるし」

「……」

 恒一は少し黙る。

 否定できなかった。


「嫌われたくないだけなんだが」

 今度は、三人が止まった。

「……」

 基樹がゆっくり天井を見る。

「あー……」

 純也も苦笑した。

「前の方が普通だったよな」


「……あー」

 基樹がうなずく。

「昔の恒一、もっと分かりやすかったし」

「今なんか変に考えるからな」

「その結果、極端」

「……?」

 恒一だけが分かっていない顔をする。


 彩音は、そのやり取りを見て少し笑った。

「恒一らしいね」

「そうなのか?」

「うん」

 彩音は笑う。

「ちゃんと考えた結果、ズレるところ」

「褒めてないよな?」

 基樹が真顔で言った。


「褒めてないよ?」

 彩音は楽しそうに返す。

「……」

 恒一は少し考える。

 嫌われたくない。

 だから距離を取った。

 でも、それで上手くいっていない。


「……難しいな」

 ぽつりと漏れる。

 基樹が深くため息を吐いた。


「お前なあ……」

「そのへんだけほんと不器用だよな」

「……そうか?」

「そこも分かってねえのか」

 教室に、小さな笑い声が広がった。

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