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たぶん違うけど、違わない気もしてきた

 放課後の校舎裏、自販機の前。


 カコン、と音がする。

 缶を取り出す。

「……」

 真田巴は、少しだけ考えていた。

(……なんなんだ、あれ)

 思い出す。

『好きな相手が、お前で』

『応援してるぞ』


 そして。

 打った感触と乾いた音。

「……」

(……やりすぎたか)

 プシュ、と缶を開ける。


 そのとき。

「巴!」

 声に振り向く。

 親友の前田千夜。


「なにしてるの?」

「……別に」

 短く返す。


 少しの沈黙。

「顔、ちょっと変」

「……は?」

「考え事してる顔」

「……してない」

「してるよ」

 即答する。


「……」

 逃げ場がない。

「……ちょっとだけ」

 折れる。

「なに?」

「……」

 一瞬迷う、でも。

「……朝比奈のことなんだけど」

「……」

 千夜、少しだけ視線を上げる。


「どうしたの?」

「……なんか」

「変なこと言われた」

「どんな?」

「……」

 言いづらい。


「……私のこと」

「好きなやつがいる、みたいな」

「……」

 千夜、少し考える。

「で?」

「……違うし」

「……うん」

「……」


「それで終わりじゃないでしょ」

「……」

 少しだけ、詰まる。

「……なんか」

「気になる」

「……」


「それ、意識してるよ」

「……は?」

 即否定。

「してない」

「……いや、してるでしょ」

「……」

 言い返せない。


「気になってる時点で」

「もう入ってる」

「……」

 言葉が、引っかかる。

「……違う」

「違わない」

 あっさり言う。


「……」

 巴は、視線を逸らす。

「……あと」

 小さく付け足す。

「……道場で」

「ちょっと強くやった」

「……」

 千夜、間を置く。

「どのくらい」

「……普通じゃないくらい打った」

「……」


「それ、もう普通じゃないよ」

「……は?」

 顔を上げる。

「してない」

「普通なら」

「そこまでいかない」

「……」

 言葉が詰まる。


「巴、感情出てるじゃん」

「……」

 否定できない。

「……」

「……まあいいけど」

 千夜が続ける。

「嫌なら、距離取ればいいし」

「……」

「嫌じゃないなら」

「そのままでもいい」

「……」


 巴は答えない。

「自分で決めなよ」

「……」

 それだけ言って、千夜は去る。


 巴は1人残る。

「……」

(……意識してる)

 小さく、繰り返す。

(……してない)

 でも。

(……してる?)

 答えは出ない。


 ――後日。

 廊下の人の流れ。

 その中で。

 朝比奈恒一が、向こうから歩いてくる。

「……」

 巴は、少しだけ構える。

(……どうする?)

 距離を。

 千夜の言葉がよぎる。


 でも恒一は。

 気づき、一瞬、目が合う。


「……」

 そのまま。

 何も言わず、通り過ぎる。

「……」


 一歩、遅れて振り返り。

(……あ)

 一瞬で、繋がる。

 ・距離

 ・様子見

 ・ひより

 ・応援


「……」

(……そういうことか)

 小さく、息を吐く。

(……やっぱり)

 視線を落とす。


「……」

 何も言わない。

 言わなくても、わかる。

 あれはそういう“距離”だった。


 ――そう思った瞬間。

 少しだけ、胸が重くなった。


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