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いい感じだったはずなのに、なんか違う話

 放課後の教室。


 人はまばら。

 窓の外は、少し暗くなり始めている。

「彩音」

 朝比奈恒一が、呼ぶ。


「ん?」

 彩音が振り向く。

「どうしたの」

 いつも通り。

「……ちょっといいか?」

「いいよ」


 机の横。

 軽く向き合う。

「……」

 一瞬の間。

「最近、いい感じだったと思ってたんだが」

「……」

「なんか」

「真田に嫌われたかもしれん」


「……」

 彩音、ほんの一瞬だけ止まる。

(また来た!)

 口には出さない。


「……どうしてそう思ったの?」

 優しいトーン。

「道場で、いきなり来た」

「……来たって」

「何度も打たれた」

「……」


「それは……」

「来るね」

「だろ?」

 真顔。

「……」

(そこは違うけど)

 言わない。

「で?」

「何か言った?」

「……」

 少し考える。


「ひよりの話した」

「……」

「あと、応援した」

「……」

 聞いて一瞬。

 彩音、視線を逸らす。


(最悪の組み合わせ)

 でも、顔は崩さない。

「……うん」

「それ、原因だね」

「そうか」

 あっさり納得する。


「……」

「なんでだ?」

「……えっとね」

 少しだけ考える“ふり”。


「多分、誤解されてる」

「誤解?」

「うん」

「巴って」

「ちゃんとしてるでしょ?」

「してるな!」


「だから」

「ちょっと今は……」

「様子見た方がいいかも」

「……」

 恒一、少し考える。

「なるほど」

 真剣にうなずく。

「わかった、しばらく距離取る」

「うん」

「それがいいと思う」

 優しく言う。


 そのとき。

「……おい」

 三浦基樹が口を挟む。

「絶対違うだろ今の!」

「なにが?」

 彩音、平然。

「距離置いたら余計悪化するだろ」

「……」

「原因そこじゃねえし」

「……」

「お前絶対わかっててやってるだろ」

「やってないよ?」

 にこっと笑う。


「ちゃんと考えてるよ」


「どう転ぶのか」

「……」

「それ見てるだけだよ」

「同じだろ!」

 即ツッコミ。


「……」

 一方、恒一は少しだけ考える。

「いや」

「彩音の言ってることは正しいと思う」

「……は?」

「距離は大事だし」

「ちゃんとしてる」

「……」


 基樹、顔を覆う。

「……お前もう無理だ!」

「なんでだ?」

「全部がだよ!」

 ツッコミが響く。


 ――帰り道。

 恒一は、一人で歩く。

「……距離か」

 小さくつぶやく。

「……難しいな」

 少しだけ考える。

「……」


「……彩音はやっぱり優しいな」

 小さく、つぶやく。

 そのまま、歩き出す。

 ズレは、少しずつ広がっていた。


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