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親切そうに見えて、だいたい面白がってる件

 放課後、教室。


 残った数人のざわめき。

 窓の外は、少しだけ赤い。

「……一ノ瀬先輩」

 白石ひよりが、少しだけためらいながら呼ぶ。


「ん?」

 彩音が振り向く。

「どうしたの」

 声が、少しだけ柔らかい。


「……ちょっと、いいですか」

「いいよ」

 椅子を少し引いて、向き合う。

「……あの」

 ひよりは、視線を落とす。

「……私」


「真田先輩のこと、好きなんじゃないかって」

「……思われてて」

「……」

 彩音は、すぐには答えない。

 少しだけ、間を置く。

「……それ、しんどいね」

「……」


 ひよりの肩が、ほんの少しだけ緩む。

「自分の気持ちと違うのに」

「周りだけ進んでく感じ」

「……はい」

 小さく、うなずく。

「で?」

 彩音は、少しだけ身を乗り出す。

「本当は、どうしたいの?」

「……」


 ひよりは、答えられない。

 少しだけ黙る。

「……わからなくて」

「……そっか」

 否定しない。

「無理に決めなくていいよ」

「……え?」


「今って」

「多分、周りの情報が多すぎるだけだから」

「……」

「一回さ」

「そのままにして、様子見てもいいと思う」

「……」

 ひよりは、少し考える。


「どう見られてるかって」

「結構ヒントになるし」

「……」

「焦って動くより」

「今は、見た方がいいかも」


「……はい」

 小さく、うなずく。

「ありがとうございます」

 少しだけ安心した顔。

 そのまま、教室を出ていく。


 ――扉が閉まる。

 静かになる。

「……」

 一瞬の沈黙。

「……お前さ」

 三浦基樹が口を開く。

「今の」

「わざとだろ」

「なにが?」

 彩音、普通に返す。


「“そのままでいい”ってやつ」

「状況悪化させてるだけだろ」

「……」

 彩音は、少しだけ笑う。

「ちゃんと考えてるよ?」

「どう転ぶか」

「……」

「それを見てるだけ」

「同じだろ!」

 基樹、ため息。


 ――場面、少し後。

 廊下。

 朝比奈恒一と三浦基樹。

「おい」

 基樹が言う。

「一つ言っとくけど」

「彩音に相談するの、もうやめろ!」

「なんでだ」

 すかさず即答。

「なんでだじゃねえよ」

「絶対ろくなことになってないだろ」

「……」

 恒一は、少しだけ考える。


「いや」

「ちゃんと考えてくれてるだろ」

「……は?」

「彩音は」

「人の気持ち、よく分かるし」

「……」

 基樹、固まる。

「……お前」

「それ本気で言ってんのか」

 恒一は、少しだけ首をかしげる。

「本気だぞ」


「大切な幼馴染の言葉だし」

「信じるのは当然だろ」

「お前も含めて」

「……」

 基樹、言葉を失う。

「……お前なあ」

「なんでそういうとこだけ真っ直ぐなんだよ!」


「なんだそれ」

「褒めてねえよ!」

 ツッコミが響く。

 ――一方、その少し前。


 廊下。

 ひよりは、一人で歩いていた。

「……」

 少しだけ、息を吐く。

(そのままで、いい……)

 言葉を、思い返す。

「……」

 足は止まらない。

 でも、少しだけ迷っていた。


 その背中を、少し離れた場所から。

 彩音は見ていた。

「……」

 口元が、ゆるむ。

「……いいね」

 小さく、つぶやく。

「ほんとに」


 そのまま、くるりと背を向ける。

 彼女の足取りは、軽い。


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