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ちゃんと話したら、ちゃんと終わった件

 昼休み、教室。


「聞いた?」

「昨日のやつ?」

「公開告白」

「三年にだよね」

 ざわつく声。

「ひよりがさ」

「“こういちさん、好きです!”って」

「しかも返事待ち」

「やばくない?」


「……」

 ひよりは、動かない。

(なにそれ)

(なに言ってるの)

 言葉が、頭に入ってこない。

 周囲は、勝手に盛り上がっている。

「グラウンドでさ」

「結構人いたらしいよ」

「マジで勇気あるよな」

「……」


 一瞬動きが止まる。

(……こういちさん)

 思い出す。


「いいことあるよ」

「……」

 繋がる。

(……ひなた)

 小さく息を吐く。

「……ごめん」

 それだけ言って、立ち上がる。

 教室を出る。


 廊下。

(やるしかない)

 足を止めない。

 ――三年棟。


 ざわつく廊下。

「……あれ」

「昨日の子じゃない?」

「似てる」

 視線が集まる。

(無理)

(めちゃくちゃ見られてる)

 でも止まらない。

「すみません」

「佐々木先輩、呼んでもらえますか」


 一瞬、空気が止まる。

 呼び出されて、出てくる。

 佐々木。

 一瞬、目が合う。

(……やっぱり)

 小さく納得する。

「……場所、変えていいか?」

「……はい」


 人の少ない階段。

 静かになる。

「……昨日の件なんですけど」

 ひよりが、口を開く。

「妹が、勝手にやりました」

「……」

「すみません」

 頭を下げる、少しの沈黙。


 佐々木は、すぐには答えない。

「……つまり」


「俺のこと、からかったわけじゃないんだな」

「違います」

 思わず、顔を上げる。

「そんなつもりじゃ……」

 少しだけ、言葉が詰まる。

「……」

 佐々木は、ひよりを見る。

 そのあと、小さく息を吐く。

「……そうか」

 短く、うなずく。

「……大体わかった」


「顔も、違和感あったしな」

「……」

 ひよりは、少しだけ力が抜ける。

「……じゃあ」

 佐々木が、言葉を選ぶ。

「この話は、俺が振られたことにしておく」

「……え?」

「その方が、収まりいいだろ」


「……部としてもな」

「……」

 ひより、言葉が出ない。

(それでいいの?)

 一瞬、思う。


 でも、何も言えない。

「ただ」

「次はちゃんと本人が来い」

「……はい」

 小さく、うなずく。

 そのまま終わる――


「……あの」

 ひよりが、止まる。

 一瞬、迷う。

 でも。

「……好きな人は」


「佐々木先輩じゃ、ありません」


「……」

「……陸上部の人です」

 静かに、言う。

 佐々木は、すぐに理解する。

「……ああ」

 小さく、うなずく。

「なるほどな」

 それだけ。


「……じゃあな」

 背を向ける。

 足音が遠ざかる。

 ひよりは、その場に残る。

「……」

(それでよかったのかな)

 小さく、思う。

 でも。答えは出ない。

 ただ、立っていた。


 ――放課後。

 帰り道。

「……ごめんね」

 隣で、ひなたが小さく言う。

「……うん」

 ひよりは、前を見たまま答える。

 それ以上は、言わない。


 風が、少しだけ吹く。

 問題は、一つ終わった。

 でも、本当の問題はこれからだった。



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