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こういち違いで公開告白された話

 数日前。


 ひよりの部屋。

「……できない」

 机の上、書きかけのメモ。

 ため息。

「……やっぱり無理」

 小さくつぶやく、その様子を。

 ドアの外で、ひとり。

 見ていた、妹ひなた。


(お姉ちゃん……)

 少しだけ、眉を寄せる。

(しょうがないな)

 小さく、うなずく。

(私がなんとかする)


 数日後。

 蒼ヶ崎高校、校門前。

 ひなたは立っていた。

(ここが……)

 制服は、ひよりのもの。

(バレないよね)

 少しだけ不安そうにして。


(でも)

(行くしかない)

 一歩、踏み出す。

 校舎内。

「すみません」

 通りすがりの生徒に声をかける。

「陸上部ってどこですか?」

「グラウンドだよ」

「ありがとうございます!」

 元気よく頭を下げて、歩き出す。


(こういちさん、か)

 思い出す、姉の言葉。

(好きな人)

 少しだけ、表情が柔らかくなる。

(どんな人なんだろ)


 グラウンド。

 走る音、掛け声。

 ひなたは、近くにいた三年生に声をかける。

「すみません」

「はい?」

「こういちさん、呼んでもらえますか?」

「こういち?」

「はい!」

 三年生は少し考えて。


「佐々木ー!」

「なんだ!」

 返事、駆けてくる。

 佐々木。

「どうした?」

 ひなたを見る。


(この人が……)

 緊張が一気に上がる。

(お姉ちゃんの)

 でも。

(ここで引いたらダメ)

 一歩、前に出る。

「……あの」


 周囲の音が、少しだけ遠くなる。

「こういちさん」

「はい?」


「好きです!」

 ――静止。

 グラウンドの音が、止まる。

「……え?」

 佐々木、固まる。

 周囲。

「え?」

「今の……」

 ざわつく。

 一方で恒一。

「……」

 少しだけ考える。


(またか)

 うなずく。

(こういう流れ、最近多いな)

 納得している。


 一方の彩音。

(やば)


(当たり引いた)

 口元が上がる。

 ひなたは。

 その場で、まっすぐ立っていた。

「……返事、もらえますか?」

 真剣な顔。


 佐々木は、完全に混乱している。

 それでも、一度周囲を見て。

 小さく息を吐く。

「……少し時間をくれ」

 場が、一瞬止まる。


 ひなたは、うなずく。

「はい!」

 満足そうに頭を下げる。

 グラウンドは、完全にざわついていた。


 ――翌日。

 教室。

「聞いた?」

「昨日のやつ?」

「公開告白」

「しかも三年に」

「やばくない?」

 話題は、それ一色。

 一方の恒一。

「……」

(最近、平和じゃないな)

 少しだけ思う。


 一方の彩音。

(最高!)

 小さく笑う。


 一方のひより。

 ベッドの上。

 何も知らずに、体調を崩して寝ていた。


 一方の放課後。

 グラウンド。

 佐々木は、ふと思い出す。

「……」

 昨日のこと。

 あの顔。

(……)


(昨日、白石休みじゃなかったか?)

 小さく眉をひそめる。

(……似てるが)

 考える、結論は出ない。

 

「……あとで確認するか」

 小さくつぶやく。

 風が吹く。

 問題は、まだ終わっていなかった。


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