相談相手、選び間違えた気がする話
放課後の校舎裏。
「……なあ」
恒一が声をかける。
彩音が顔を上げる。
「どうしたの」
「ちょっと相談があって」
彩音の目が、少しだけ細くなる。
(来た!来たよ!)
「いいよ」
「で?」
軽くうなずく。
「部長のことなんだけど」
「うん」
「この前の件、ちゃんと話したじゃん」
「うん」
「でもさ」
「なんかまだ微妙に距離ある気がして」
「……あるね」
即答。
「あと」
「巴も、普通なんだけど」
「なんか一寸いつもと違うっていうか」
「うん」
さらにうなずく。
「それでさ」
「ちゃんとしたほうがいいかなって思って」
「何を?」
「部長にはちゃんと説明して」
「巴にもちゃんと話したほうがいいのかなって」
「……」
彩音、少しだけ考えるふり。
(いいね)
(全部まとめて来た、これは面白そう!)
「簡単だよ」
「え?」
「もっと踏み込めばいい」
「踏み込む?」
「うん」
さらっと言う。
「中途半端だから変になるんだよ」
「……なるほど」
すぐ納得する。
恒一は。
(やっぱり彩音はすごいな)
(ちゃんと考えてる)
(俺のことも)
自然にそう思っていた。
(自分の次くらいには、ちゃんと人の機微わかってるしなぁ)
疑いはない。
「部長には?」
「“どういうつもりですか”って直接聞けばいい」
「……うん」
「巴には?」
「“俺のことどう思ってる?”って聞けばいい」
「……」
恒一、少しだけ考える。
(たしかに)
うなずく。
「それが一番早いよ」
「曖昧にするからズレるんだし、もう直球がいいよ。」
「……なるほど」
完全に信じている。
一方、少し離れた場所で聞いていた基樹が突然来て。
「……やめとけ!」
小さく言う。
「それ全部ダメなやつだ」
「大丈夫でしょ」
彩音が軽く返す。
「今回はちゃんとしてるよ?」
「どこがだよ」
「ちゃんと核心ついてるじゃん」
「踏み込みすぎなんだよ!」
即ツッコミ。
さらに。
「ていうかお前」
「信頼されてるの自覚しろよ!」
「余計タチ悪いからなそれ!」
言い切る。
だが、その言葉は。
恒一の頭には、ほとんど入っていなかった。
そのころの恒一。
(直接聞く、か)
(たしかにそのほうが早いな)
うなずく。
(ちゃんとしたほうがいい、さすが彩音!)
決意する。
「ありがとう」
「うん」
彩音、にこっと笑う。
(どうなるかな)
少し(?)だけ楽しそうに。
その横で。
「終わったな……」
基樹が、ぼそっと言う。
恒一は、もう前を向いていた。
(よし)
(ちゃんと聞こう)
風が吹く。
次の問題は、確実にトラブルが大きくなる方向で決まった。




