だいたい彩音のせい
放課後の教室。
人もまばらになった頃。
基樹は、ふと視線を上げた。
少し離れた席。
彩音。
スマホを見ながら、くすっと笑っている。
「……なあ」
「ん?」
「お前、最近楽しそうだな」
一瞬の間。
彩音の口元が、少しだけ上がる。
「うん」
「いやそこは否定しろよ」
基樹、即ツッコミ。
「なんで?」
「なんでじゃねえよ」
「原因、恒一だろ!」
「恒一で楽しんでるだろ!」
言い切る。
「……」
彩音、少しだけ間を置いて。
ふっと笑う。
「まあね」
「認めるな」
即ツッコミ。
「何の話?」
横から声。
純也。
「いや別に」
基樹が適当に返す。
「いつものやつ」
「ああ」
納得したようにうなずく。
そのまま、彩音を見る。
「……相変わらずだな」
小さく思う。
(こういうとこ)
少しだけ、羨ましい。
「で?」
彩音が顔を上げる。
「純也はどうする?」
「何が?」
一歩、身を乗り出す。
「せっかくだしさ」
「二人でかき回す?」
「やめろ」
基樹、即答。
「絶対ろくなことにならない」
「なるよ」
「ならねえよ」
食い気味。
「面白くはなる」
「それがダメなんだよ」
即またツッコミ。
彩音が、くすっと笑う。
純也は。
「……まあ」
「見てるだけでいいかな」
少しだけ笑う。
「正解」
基樹がうなずく。
「それが一番いい」
「つまんないなあ」
彩音が軽く言う。
でも、その目は楽しそうだった。
教室の外。
廊下の向こう。
恒一の声が、少しだけ聞こえる。
何も知らずに。
三人は、なんとなく見ていた。
「……」
基樹が小さくつぶやく。
「ほんとにさ」
「なんでこうなるんだろうな」
そのとき。
彩音が、くすっと笑う。
「ねえ純也」
「さっきさ――」
少しだけ身を乗り出す。
「こんなことあって」
小声で、手紙の件から今までの流れを話す。
「……は?」
純也、固まる。
次の瞬間。
「ははっ……!」
吹き出す。
「なにそれ」
「全部ズレてんじゃん」
「だろ」
基樹、疲れた顔でうなずく。
「でしょ」
彩音、楽しそうに笑う。
「私もさ」
「もうやめよう、やめようって思うんだけど」
少し肩をすくめる。
「つい次が気になって」
「やめろって言ってんだろ!」
基樹、即ツッコミ。
「完全にお前が原因だよ!」
「えー」
彩音は、ただ笑っていた。
教室は、今日も少しだけ騒がしい。




