なんか最近、空気よくない?
昼休み教室。
「……なんかさ」
恒一が顔を上げる。
基樹と彩音が見る。
「最近、空気よくない?」
「どこがだよ!」
即にツッコミ。
「いやなんか」
「みんな落ち着いてるっていうか」
「……」
基樹、黙る。
「お前、今の状況でそれ言ってんの?」
「言ってる」
迷いがない。
「部長も普通に戻ったし」
「普通に“戻した”んだよあれは」
「そうか?」
「そうだよ!」
噛み合わない。
彩音が、くすっと笑う。
「でもさ」
「恒一的には“解決した”んでしょ」
「した」
自信を持って答える。。
「ちゃんと話したし」
「……まあな」
基樹、少しだけ納得しかける。
「あと」
「巴も普通だったし」
「……」
彩音の眉が少しだけ動く。
「普通、ねえ」
「普通だろ」
「うん」
軽く流す。
一方教室の後ろ。
巴が友達と話している。
「――でさ」
笑っている。
いつも通り。
「……」
ふと。
恒一の方を見る。
一瞬、目が合いそうになって。
逸らす。
(……別に)
何もなかったように戻る。
一方のひより。
少し離れた席。
ノートを見ている。
でも。
視線は、少しだけ揺れる。
(……どうしよう)
まだ、何も決まっていない。
その横で。
「……で?」
基樹が戻る。
「ほんとに何もないと思ってんのか?」
「思ってる」
「お前さあ」
ため息。
「たまに怖いわ」
「なんでだよ」
「なんでもだよ」
雑な返し。
基樹が小さく言う。
「……とりあえずさ」
「“わかった気する”のやめようか!」
「なんでだよ」
「だいたい外してるからだよ」
「外してないだろ」
「外してるって」
言い切る。
その横で。
彩音が、くすっと笑う。
「いやでも」
「恒一ってさ」
「結構、機微わかるタイプだよ」
「は?」
基樹が固まる。
「どこがだよ」
「いや、なんとなく」
さらっと言う。
「雰囲気とか」
「ちゃんと見てるし」
「見てねえだろ」
即否定。
恒一は。
少しだけ考えて。
「……さすが彩音だな」
納得する。
「わかってるな!」
「お前が一番わかってねえよ」
基樹、即ツッコミ。
彩音は。
ただ、笑っていた。
(ほんとにね)
小さく。
心の中でつぶやく。
教室は、今日も平和だった。
少なくとも表面上は。




