ちゃんと聞きに行った結果、だいたい壊れた件
放課後のグラウンドの端。
(……よし)
恒一は、小さくうなずく。
(ちゃんと話そう)
「部長」
「……朝比奈」
一瞬、空気が張る。
「少しいいですか」
「……ああ」
二人、少し離れる。
「手紙の件なんですけど」
「……気持ちは受け取った」
「いや、それ俺じゃないです」
「……は?」
空気が止まる。
「俺、届けただけなんで」
「……」
部長、固まる。
「……誰からだ」
「それは――」
一瞬だけ考える。
(……)
「言わないほうがいいかなって」
「……?」
「大事そうだったんで」
「勝手に言うのも違うかなと」
「……」
部長、ゆっくり目を閉じる。
「……待て」
「……俺は」
「お前からだと、思っていた」
「そうだったんですね」
恒一、即答。
「……つまり俺は」
「下級生からの告白に」
「距離を取っていたわけか」
「そうなりますね」
迷いなく同意。
「……はあ……」
深いため息。
「完全に早とちりだな」
「そうですね」
「お前もうちょっと否定しろ」
「いやでも違うんで」
「そういう意味じゃない」
噛み合わない。
「……すまん」
「いえ」
誤解は解けた。
はずだった。
「一つ聞く」
「はい」
「……お前は」
「どういうつもりで、あれを渡した」
「どういう?」
少し考える。
(……)
「ちゃんとしたほうがいいと思ったんで」
「……?」
「大事そうだったし」
「……」
「あと」
「ちゃんとしてる人って、すごいと思うんで」
「……」
部長、少しだけ止まる。
「……それは」
「誰に対して言ってる」
「え?」
「いや別に」
「一般論です」
「……本当か?」
一瞬、妙な空気。
「……そうか」
それ以上は踏み込まない。
その場は、収まる。
少し離れた場所。
巴が、立っていた。
(……ちゃんとしてる人)
一瞬だけ。
視線が揺れる。
(……別に)
すぐ逸らす。
一方の彩音。
(その配慮、全部裏目なんだけど)
(まあいいか)
くすっと笑う。
一方の恒一。
(やっぱり話せばわかるな)
満足している。
問題はほとんど解決していなかった。




