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恋愛台帳、時代ズレにつき修正不能  作者: サザルト
すれ違い編

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第64話 相談した結果、余計に悪化しそう

■校舎裏


 放課後の校舎裏。


「……なあ」


 恒一が口を開いた。


 基樹と彩音が顔を上げる。


「佐々木部長のことなんだけど」


「来たな」


 基樹が即答する。


「避けられてるだろ」


「やっぱりそう見えるか?」


「見えるどころか事実だろ」


「……」


 恒一は、少しだけ考える。


「でもさ」


「でも?」


「完全に気遣いだな」


「は?」


 基樹が固まった。


「距離取ってるのって」


「避けられてるって話だよな?」


「佐々木先輩って、誠実で責任感ある人だろ?」


「まあ、それはそうだけど」


「だから、簡単に近づけないんだと思う」


「……」


「真剣な気持ちを受け取ったから、軽く扱えない。だから距離を取ってる」


 恒一は、真面目な顔でうなずいた。


「真面目な人ほど、そういうのあるだろ」


「ねえよ」


「あるだろ」


「ねえって」


 噛み合わない。


 彩音が、くすっと笑う。


「で?」


 軽く話を戻す。


「何かした覚えは?」


「手紙は渡した」


「それだろ!」


 基樹が即ツッコミを入れた。


「いや、ちゃんと届けただけだぞ」


「そこだよ!」


「え?」


 恒一が止まる。


「ちなみに聞くけど」


 基樹が眉間を押さえながら言う。


「お前、その手紙を渡す時、何て言った?」


「大事な手紙ですって」


「……」


「真剣な気持ちなので、ぜひ読んでくださいって」


「最悪だろ!」


 基樹の声が裏返った。


「なんでだよ」


「なんで分からねえんだよ!」


「大事そうだったから、大事に扱っただけだぞ」


「扱い方の方向が違う!」


 恒一は、また少しだけ考える。


(……)


(なるほど、理解した)


 ゆっくり、うなずく。


「やっぱり、佐々木先輩はちゃんと考えてるんだな」


「お前、何をどう理解したんだよ!」


 基樹、今日二発目のツッコミ。


 頭を抱える。


 恒一は続ける。


「そうなると、俺も距離を取った方がいいのかな?」


「は?」


「佐々木先輩だけに気を遣わせるのも悪いだろ」


「待て待て待て」


 基樹が慌てて止める。


「そこでお前も距離を取ったら、余計に変なことになるだろ」


「そうか?」


「そうだよ!」


「でも、相手が真剣に考えてるなら、こっちもちゃんと態度で返した方が」


「返すな!」


 基樹が声を強めた。


「返すなっていうか、何に返そうとしてんだよ!」


「佐々木先輩の誠意に」


「誠意じゃねえ! 誤解だ!」


 一方の彩音。


(完全に逆方向)


 でも。


(いいね)


 口元が緩む。


「じゃあさ」


 彩音が軽く言う。


「直接聞けばいいじゃん」


「どうやって」


「“昨日の手紙、どういう意味で受け取ってますか?”って」


「なるほど」


 恒一は即納得した。


「やってみる」


「やめろ!」


 基樹が止める。


「それ一番ダメなやつだ!」


「そうか?」


「そうだよ!」


「でも、ちゃんと話せば分かるだろ」


「ちゃんと話せてないからこうなってるんだよ!」


 基樹は、もう一度頭を抱えた。


 彩音はさらっと言う。


「大丈夫だよ」


「何が」


「どうせもう誤差だし」


「誤差じゃねえ!」


 即ツッコミ。


「だいたい、誰からの手紙かも言ってないんだろ?」


「言ってない」


「宛名もなかったんだろ?」


「なかったな」


「中身は?」


「読んでない」


「じゃあ全部ダメじゃねえか!」


「でも、真剣な気持ちなのは伝わった」


「そこだけ伝えてどうすんだよ!」


 基樹の声が校舎裏に響いた。


 恒一は、真面目な顔でうなずく。


(よし)


(ちゃんと話せば分かる)


 前向きに納得している。


 彩音は、そんな恒一を見て、楽しそうに目を細めた。


「まあ、聞くだけ聞いてみれば?」


「お前も止めろよ!」


「だって、たぶん止まらないし」


「そうだけど!」


 基樹は、完全に疲れた顔になった。


 恒一は、もう決めていた。


 佐々木先輩は誠実で、責任感のある人だ。


 だからこそ、真剣な気持ちを軽く扱えず、距離を取っている。


 なら、こちらから聞けばいい。


 昨日の手紙をどう受け取ったのか。


 どれくらい距離を取ればいいのか。


 それとも、いつも通りでいいのか。


 そこを確認すれば、きっと話は進む。


 恒一の中では、すでに解決に向かっていた。


 ただし。


 その解決の方向が、正しいかどうかは別だった。


 風が吹く。


 状況は、さらに悪化する方向で、まとまった。


 そして、恒一は。


 いい方向に進んでいるつもりだった。

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