表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛台帳、時代ズレにつき修正不能  作者: サザルト
すれ違い編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/191

第63話 なんか避けられてる気がする話

 ■グラウンド


 放課後のグラウンド。


 準備運動。


 恒一が顔を上げる。


 部長と、目が合う――


 はずだった。


 その瞬間。


 佐々木が、くるりと一八〇度ターンした。


「……?」


 恒一は止まる。


(今のは)


 少しだけ考える。


(風かな?)


 納得しかける。


 数分後。


「佐々木先輩」


 恒一が声をかける。


 佐々木が振り向く。


 目が合う。


 ――次の瞬間。


 佐々木は、一歩下がった。


「……ああ」


 短く返す。


 そして、さらに半歩下がる。


「……」


 恒一は黙った。


(……距離、遠いな)


 少しだけ考える。


 それから、小さくうなずく。


(ああ)


(気を遣ってるんだな)


 納得する。


 昨日の手紙。


 宛名はなかった。

 差出人も分からなかった。


 ただ、真剣な気持ちだということだけは、恒一にも分かっていた。


 だから、部長は軽く扱わないようにしている。


 きっと、そういうことなのだ。


(ああいうの、真面目な人ほど距離取るよな)


 恒一はさらにうなずく。


(なるほど)


 完全に理解した顔だった。


 少し離れた場所。


「……見たか、今の」


 基樹がつぶやく。


「見た」


 彩音が即答する。


「完全に避けてるだろ」


「うん」


「なんであいつ納得してんの?」


「さあ」


 彩音がくすっと笑う。


「幸せそうだよね」


「どこがだよ」


「自分の中では、全部つながってるんじゃない?」


「つながってる場所が全部おかしいんだよ」


 基樹は遠い目をした。


 一方のひより。


 少し離れた場所で、その様子を見ていた。


(……やっぱり)


 小さく思う。


 佐々木先輩が、朝比奈先輩を避けている。


 昨日の手紙のせいだ。


 宛名を書かなかった手紙。


 朝比奈先輩に渡したはずの手紙。


 それが、佐々木先輩に読まれた。


 そして今、佐々木先輩は朝比奈先輩と距離を取っている。


(そういうこと、なんだ)


 ひよりは目を伏せた。


 自分の気持ちは、まだ誰にも正しく届いていない。


 届いていないのに、何かだけが広がっている。


 練習再開。


 恒一が走り出す。


 佐々木も走る。


 同じコース。


 ――だったのに。


 途中で、佐々木だけがコースを変えた。


「……?」


 恒一は少しだけ横を見る。


 そして、また小さくうなずく。


(やっぱり)


(気を遣ってるな)


 納得が深まる。


 一方の佐々木。


(無理だ)


 小さくつぶやく。


 昨日の手紙。


 宛名はなかった。


 差出人もはっきりしない。


 けれど、朝比奈は真剣な顔で言った。


 大事な手紙です。


 真剣な気持ちなので。

 ぜひ読んでください。


 あれを受け取っておいて。


 何もなかったように距離を詰めるのは。


(無責任すぎる)


 真面目すぎる結論。


 だから、佐々木は距離を取る。


 その空気は、周囲にも伝わり始めていた。


「……なあ」


「ん?」


「部長と朝比奈ってさ」


「……なんか変じゃない?」


「避けてるよな」


「え、マジ?」


 ざわつき。


 小さな声。


 少しずつ広がる。


 一方の彩音。


 空を見上げる。


(……いいね)


(広がってきた)


 口元が、少しだけ緩む。


(もう少し、これ放置しよ)


 くすっと笑う。


 全部、見えている。


 一方、巴は静かにその様子を見ていた。


 走る恒一と、距離を取る佐々木を順番に見た。それから、固まっているひよりを見る。


(……気づいてないの、朝比奈だけか)


 小さく息を吐く。


 助けるべきか。


 放っておくべきか。


 一瞬だけ考えて、巴は何も言わなかった。


 少なくとも今は、誰が何を言っても余計にこじれる気がした。


 グラウンド。


 恒一は、いつも通り走っていた。


(ちゃんと考えてる人だな)


 満足そうにうなずく。


 佐々木の背中を見ながら。


(やっぱり誠実な人だな)


 完全に納得している。


 風が吹く。


 それぞれの理解は。


 全部。


 違う方向で、完成していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ