ラブレターの行き先、完全に間違えた話
放課後のグラウンド。
「部長!」
恒一が駆け寄る。
「ん?」
振り向く。
佐々木先輩のその手に。
「これ」
封筒を差し出す。
「……なんだ?」
「手紙です」
「……?」
少しだけ、間。
「さっき渡されたんで」
「お前が?」
「はい」
あっさり。
「大事そうだったんで」
真面目な顔。
「間違いなく届けます」
「……」
佐々木先輩、受け取る。
そのまま。
開ける。
視線が、止まる。
数秒。
そして。
ゆっくりと。
顔を上げる。
「……朝比奈!」
「はい」
「こういう形で来るとは思わなかった」
「……?」
意味がわからない。
「だが」
手紙を軽く持ち直す。
「その気持ちは、受け取った」
「……はあ」
さらに意味がわからない。
「ただ俺は――」
一瞬、言葉を切る。
「軽い気持ちで返すつもりはない」
「……?」
完全に話が合っていない。
佐々木先輩は、それ以上何も言わず。
ゆっくりと距離を取る。
「……すまん」
「え?」
「少し、時間をくれ」
「……?」
そのまま。
背を向け走り去っていく。
「……」
恒一、立ち尽くす。
(なんだ?)
首をかしげる。
(ちゃんと渡したよな)
納得はしている。
少し離れた場所。
彩音が、口元を押さえている。
(……終わったね、いろいろ)
肩が震える。
「……なにあれ」
基樹がつぶやく。
「事故じゃない?」
彩音が小さく言う。
「事件」
「いやレベル高すぎだろ」
遠い目。
一方。
巴は、静かに見ていた。
やり取り。
距離。
空気。
(……やっぱり)
小さく、息を吐く。
(気づいてないの、あいつだけ)
視線を横にずらす。
ひよりまだ固まっている。
「……」
何も言えない。
目の前で起きたことが。
理解できない。
(……え?)
ただ立っている。
風が吹く。
手紙は確かに届いた。
ただし、意味は、完全に変わっていた。




