表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/78

探偵、再び

 放課後、校舎裏。


「……なあ、彩音」

 基樹が腕を組んで言う。

「ん?」

 彩音は壁にもたれている。

「結局さ」


「双子じゃなかっただろ」

「そうだね」

 あっさり。

「ひより、普通に否定してたし」

「うん」

 うなずく。


「じゃあさ」

 少しだけ前に出る。

「駅前で見たのはなんだったんだよ!」

 彩音が、少しだけ笑う。

「別人でしょ」

「……は?」


「似てるだけの人」

「年近いんじゃない?」

 軽く言う。

(ほんとは、年子の妹だけど)

 言わない。

(教えたら終わるし)

 くすっと笑う。


「いやいやいや」

 基樹が首を振る。

「そんな都合よく――」

「あるよ」

 即答する。

「人の顔なんて、結構曖昧だから」

「……」


 基樹、少し黙る。

(……まあ)

(なくはないか)

 でも。

 まだ引っかかる。


「じゃあさ」

「結局どうなんだよ」

「何が」

「ひよりだよ」


「恒一のこと!」


 彩音が視線を上げる。

 グラウンド。

 恒一が走っている。

 その少し後ろ。

 ひより。

 静かに見ている。

 その距離。

 その視線。

「……」

 彩音が小さく息を吐く。

「間違いないね」


「は?」

「好きだよ」

 あっさり。

 迷いなく。


「……マジで言ってる?」

「うん」

「見る位置」

「距離」

「タイミング」

「全部一致してる」

「……」

 基樹、固まる。


「でもさ」

「本人、否定してたぞ?」

「聞き方がズレてるだけ」

「……」

「本質、そこじゃないし」

 あっさり。


 基樹、頭を押さえる。

(わけわからん)

「で」

 彩音が続ける。

「恒一は?」


 グラウンドを見る。

 恒一。

 何も知らない顔で走っている。

「気づいてない」

「だろうな……」

 即納得。


「……なんなんだこれ」

「簡単だよ」

 彩音が笑う。

「恒一が鈍いだけ」

「いや、それは知ってる」


 でも、それだけじゃない気がする。

 もう一度、グラウンドを見る。

 ひより。

 恒一。

 距離は近い。


 でも。

 噛み合っていない。

「……」

「あとさ」

 彩音が、ふと続ける。

「基樹も同じだよ」

「は?」

「鈍いだけ」

「なにが」

 一瞬、彩音がほんの少しだけ笑う。


「自分のこと」

「気づいてないでしょ」

「……何に?」

 問い返す。


 でも。

 彩音は答えない。

 くすっと笑うだけ。

「まあいいや」

 一歩、歩き出す。


「面白いから」

「おい待て!」

 基樹が慌てて追う。

 置いていかれる。


 グラウンドでは。

 恒一は、まだ何も知らない。

 全部、少しずつ。

 ずれたまま、進んでいる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ