助手の憂鬱
放課後、校舎裏。
基樹は、一人で立っていた。
(……なんで俺がこんなことしてるんだ)
小さく息を吐く。
視線の先。
グラウンド。
ひより。
……を、見ている自分。
(いや、違う)
(これは観察だ)
言い聞かせる。
あくまで、検証。
彩音の言っていたこと。
(双子かどうか)
確かめるだけだ。
それだけ。
そう、思っていたのに。
(……これ、完全に尾行じゃないか?)
ふと、冷静になる。
物陰。
視線。
タイミング。
(証拠を押さえるつもりが)
(やってることはただの不審者だろ)
頭を抱える。
今まで。
彩音に対して。
「それやりすぎだろ」
何度も言ってきた。
その自分が。
(何やってんだ俺)
帰り道。
「なあ、恒一」
思わず声をかける。
「ん?」
いつも通りの顔。
こいつは何も知らない。
そのくせ。
中心にいる。
「俺さ」
少しだけ迷う。
でも。
「双子の証拠、握ろうとしてた」
「白石の?」
「……うん」
「尾行みたいになっててさ」
「やってること、ちょっとダメな気がしてきて」
正直に言う。
少しだけ軽くなる。
「ははは」
恒一が小さく笑う。
「またそれやってたんだ」
「……またってなんだよ」
「いや、前も言ってたじゃん」
「彩音に」
「……」
何も言い返せない。
「まあでもさ」
恒一が続ける。
「本人に聞けばいいじゃん」
「……は?」
「それが一番早いだろ」
あっさり。
「変に探るより」
「直接聞いたほうが確実」
「……」
シンプルすぎる。
(……それもそうか?)
一瞬だけ、揺れる。
翌日のグラウンド。
基樹は、ひよりの前に立っていた。
「えっと」
ぎこちない。
でも、決めた。
「ちょっと聞いていい?」
「はい」
ひよりが、やわらかくうなずく。
「……ひよりって」
「双子の姉妹いる?」
ひよりは。
一瞬だけ考えて。
そして。
「いませんよ?」
あっさりと迷いなく。
「……」
基樹、固まる。
その横で。
恒一が、ふっと息を吐く。
(やっぱりな)
そして。
少しだけ、勝ち誇った顔で。
基樹を見る。
「よかったな」
「……は?」
意味がわからない。
基樹が、顔をしかめる。
ひよりは、少しだけ首をかしげて。
いつも通り、微笑んでいた。
風が吹く。
グラウンド。
何かが解決したようで。
何も解決していないまま。
時間だけが、進んでいく。




