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完全に理解した(気がする)  

 駅前。


「……いた」

 基樹が小さくつぶやく。

「どれ」

 彩音が目を細める。

 視線の先。

 ひよりにそっくりな女。


 でも。

 隣には、男。

 距離が近い。

 自然に。

 笑っている。


「……あれか」

「うん」

「どう見てもデートだな」

「だね」

 あっさり。


 でも。

 彩音の目は細い。

「顔は?」

「ひよりにしか見えない」

「でも?」

「なんか違う気もする」

 曖昧。


 そのとき。

 女が振り向く。

 横顔。

「……あ」

 彩音が小さく言う。

「違う」


「は?」

「雰囲気」

 一歩前に出る。

「別人」


「マジで?」

「確定じゃないけど」

「可能性高い」


「双子?」

「……」

 基樹、固まる。

「いや待て」

「そんな都合よくあるか?」


「あるときはある」

 あっさり。

「顔一致、行動不一致」

「典型」

「……やっぱり探偵っぽいな」

「でしょ」

 満足そうに笑う。


 ――翌日。

 グラウンド。

「なあ、恒一」

 基樹が声をかける。

「ん?」

「ひよりのことなんだけど」

「白石?」

「たぶんだけど」


「双子いる」

「……は?」

 恒一、眉をひそめる。

「駅前で見たの、あいつじゃないかも」

「そっくりだけど別人」

「可能性高い」

「……」

 恒一、少し考える。


 そして。

「……何言ってんの?」

「は?」

「疲れてんのか?」

 素で言う。

 基樹、固まる。


「いやいやいや」

「真面目に言ってる」

「俺も」

「……大丈夫か?」

 本気で心配する目。

「休んだほういいぞ」

「お前がな!」

 基樹、思わずツッコむ。


 少し離れた場所。

 彩音は腕を組んで見ている。

 口は出さない。

(……いいね)

 内心でつぶやく。

(このズレ)

 ほんの少しだけ、口元が緩む。


「まあいい」

 恒一が小さくうなずく。

「つまり」

 二人が見る。

「やっぱ佐々木先輩だな」

「違うって言ってるだろ!」

 即ツッコミ。


「違わない」

 即答で返す。

「情報は整理できてる」

 自信満々。

「むしろ確定した」

 ドヤ顔。


 基樹が頭を抱える。

「だめだこいつ」

 彩音、横で見ながら。

(……やっぱり面白い)


 そのとき。

「朝比奈先輩」

 ひより。

 スポーツドリンクを差し出す。

「ありがとう」

 受け取る。


 少しだけ、ひよりを見る。

 やわらかい笑顔。

 静かな目。

(……やっぱり)

 納得する。

(ひよりはいいやつだな)

 それだけ。


 少し離れた場所。

「……どうすんのこれ」

 基樹がつぶやく。

 彩音は、少しだけ考える。


「どうもしない」

 小さく言う。

「今は観察」

 くすっと笑う。

「だって」

「面白いから」


 風が吹く。

 グラウンド。

 恒一は、少し満足そうに立っていた。


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