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彩音の友情

 教室の隅。


 俺は幼馴染で直樹の彼女の彩音の前に座っていた。


「で、巴のこと知りたいんでしょ?」


 ニヤッと笑う。


 完全に見透かされている。


「……頼む」 


 素直に頭を下げる。


「いいよ」


 あっさりだった。


「え、いいの?」


「うん。面白そうだし」


 軽い、さすが直樹の彼女。でも、その目はちゃんと“協力する気”の目だった。


「あと、私さ」


 少しだけ胸を張る。


「こういうの詳しいから」


 確かに。


 彩音は妙に顔が広い。


 誰とでも自然に話せるし、情報の回りも早い。


「巴ねー」


 指を折りながら語り出す。


「まず、裏表ない」


「うん」


「思ったことそのまま言う」


「知ってる」


「あと、勝負事好きすぎ」


「それも知ってる」


「強い人好き」


「……知ってる」


 わかってることばかり。




 彩音は続ける。


「でもさ」


「?」


「弱い人嫌い、ってわけじゃないよ」


「え」


 初耳だった。


「“逃げる人”が嫌い」


(ああ)



 昼休み。


「ありがとね」


 彩音は巴の情報を集めてくれている。


 恒一の頼みだったが、自分の為でもある。


 何だかんだとこういう作業が彼女は好きなのだ。


「さて、あとはどうしようか」


「彩音」


 背後から声。


 振り向く。


 ――真田巴。


 空気が、少しだけ張る。


「なに?」


 彩音はいつも通り明るく返す。


 でも。


 巴は少しだけ真剣な顔をしていた。


「最近さ」


 一歩近づく。


「私のこと、いろいろ聞いてない?」


 直球。


 逃げ場なし。


「……え、あー」


 彩音が一瞬だけ詰まる。


 巴は続ける。


「別にいいんだけどさ」


 少しだけ言葉を選びながら、


「コソコソされるの、あんまり好きじゃない」 


 強くはない。


 でも、はっきりとした意思。


「知りたいなら、直接聞いてよ」


 それだけ言って。


 巴は去っていった。




 沈黙。


「……やっちゃったね」


 彩音が苦笑する。




 話を聞いて俺は、深く息を吐いた。


「ごめん」


「え?」


「俺が頼んだからだろ」


 彩音は少しだけ驚いた顔をして、


「別にいいって」


 と笑った。


「こういうのも経験だし」


 でも。


 その裏に、少しだけ反省も見えた。


 俺はうなずく。


(なるほどな)


 わかった、巴は。


 どこまでもまっすぐな人間だ。


 だから。


 まっすぐ来ないやつは、嫌う。


 でも逆に言えば。


(正面から行けば、ちゃんと見てくれる)


「ありがとな」


 俺は言った。


「色々、助かった」


 彩音は少しだけ照れたように笑う。


「どういたしまして」




 そして。


「じゃあさ」


「?」


「今度奢ってね」


 にやっと笑う。


「……やっぱそうなるか」


「当然でしょ」


 二人で、少しだけ笑った。


 その瞬間。


(……いいな)


 ふと思う。


(こういうの)


 友達ってやつは、少し面倒で。


 でも、ちゃんと支えてくれる。


 俺は立ち上がる。


(次は――)


(ちゃんと、自分で行く)

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